大島秀夫監督が披露した大胆な采配。 流れを手繰り寄せ、次につながる勝ち点1をもぎ取る [J22節 湘南戦レビュー]
後半の選手交代が奏功する
1点ビハインドの54分、大島秀夫監督が動く。
後半が始まって時間はそれほど経っていない。にもかかわらずピッチ上でもっとも違いを生み出せるヤン・マテウスをベンチへ下げ、井上健太を投入した。中2日での連戦を戦う体力面を考慮したのだろう。井上のアグレッシブなプレーに期待したい気持ちもわかるが、これは一種の賭けだったように思う。
結果としてこの采配が功を奏し、マリノスは勢い付いた。7分後の61分、同点ゴールが生まれる。井上からパスを受けた天野純が自陣から左足をひと振り。相手最終ラインの背後を突く「魔法がかかったパス」(エウベル)で相手を無力化すると、抜け出したエウベルがGKをかわして無人のゴールへ流し込む。
背番号7にとって待望の今季初ゴールだ。「出場時間が長いとゴールを決める確率は上がる」とニヤリ。そして再び指揮官へ感謝の言葉を述べた。
「選手としては監督が信頼してくれると自然といいパフォーマンスが出る。このチームに加入してから大島監督がコーチ時代から僕のことを知ってくれている。僕の特徴をすごくわかっていると思う。出場できなかった時間は、チームがなかなか勝てなかった時にチームの力になれなくて、もどかしい気持ちで悔しかった。ただ大島監督になってから僕を信用して使ってくれてうれしかった。信用してくれた分、ピッチで結果を出して返さないといけないと思っていた」
指揮官の大胆な采配は終わらない。70分、センターバックの渡邊泰基がプレー続行不可能になると、交代でピッチへ送り出したのは山村和也でもサンディ・ウォルシュでもなく、ボランチの喜田拓也だった。起用の意図は「誰もが知るマリノスの中心選手だと思うし、彼がグラウンドに入ることによる影響力を考えた。賢い選手なのでラインコントロールや対応、ビルドアップも落ち着いてやってくれると期待して起用した」と涼しげな表情。
正式に監督に就任して、わずか2試合目。最下位に苦しむ厳しい状況にもかかわらず、トータルバランスを見極めて度胸満点の好采配を披露した。
勝ち点1をどのように考えるか
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