インド、アジア最高の米関税率50%に直面-トランプ政権きょう発動
トランプ米政権は27日、インドからの一部輸入品に対してアジアで最も高い50%の関税を発動した。ロシア産原油購入への制裁措置で、7日に発効していた25%の税率から倍に引き上げられた。
米国とインドは経済および安全保障の両面で長年連携を深めてきたが、トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争を巡り対立が表面化。今回発動された高関税は両国関係にとって新たな打撃となっている。
ホワイトハウスは25日から26日にかけ、米東部時間27日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に新たな関税が適用されると通告。ロシアとウクライナの和平交渉が停滞する中、インドが猶予を得るのは難しい状況だった。
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急速な経済成長を続けるインドは、新たな高関税で最大の輸出先である米市場での貿易縮小に直面する恐れがある。中国やベトナムといった輸出国との競争に影響が及ぶ懸念もあり、インドを世界的な製造拠点に転換したいモディ首相の構想にも影を落とす。
ニューデリーに拠点を置くシンクタンク、グローバル・トレード・リサーチ・イニシアチブの創設者アジャイ・スリバスタバ氏は今回の関税措置について、「米国の労働集約型市場でインドが長年築いてきた地位を脅かし、輸出拠点には大量失業リスクをもたらすとともに、グローバルなバリューチェーンへのインドの関与を弱める可能性がある」と指摘。
インドのライバル国が恩恵を受ける可能性があり、「関税が撤回された後もインドが主要市場から締め出される事態になりかねない」と述べた。
今回の措置に先んじて、米国とインドは数カ月にわたり通商協議を実施。インドはトランプ政権と最も早くに協議を始めた国の一つだったが、インド側の高関税や農業・乳製品分野などでの保護主義的な姿勢が米国側の不満を招いた。
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さらにインドのロシア産原油購入について、トランプ氏はロシアのプーチン大統領によるウクライナでの戦争の資金源になっていると非難。両国の関係はいっそう悪化した。
インドはロシア産原油購入について、エネルギー市場を安定化させ、「経済的な利益に応じて」購入を継続する考えを示している。
一方、関税措置の影響は、インド経済が輸出よりも内需に支えられていることで緩和される可能性がある。インドの国内総生産(GDP)に占める民間消費の比率は約60%に上る。一方、米国はインド最大の輸出先ではあるものの、その輸出額はGDPの2%にとどまっている。
信頼回復に向け、モディ政権は消費税に相当する物品サービス税(GST)の見直しを含む改革を表明している。
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ナティクシスのシニアエコノミスト、トリン・グエン氏は26日のリポートで、「外部からの圧力が、遅れていた改革をインドが加速させる契機となる可能性がある」との見方を示した。
原題:US Slaps India With 50% Tariffs as Trump Upends Ties With Modi(抜粋)