インドカレー店はあと3年で激減、新大久保は「廃墟」になる? 経営・管理ビザ「厳格化」でレストランが直面する理不尽
スパイシーなカレーに大きなナン…。インドカレーはすっかり日本人の舌にもなじんだ。だが、そんなインドカレー店やアジア系の小さな料理店に、いま消滅の危機が迫っているという。なぜなのか。
【写真】15歳で来日し県立高校卒業後、22年にインド料理店を開業したカンデル・ラグさん
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1月の週末、インド料理店「ラジャン」(千葉県船橋市)は若者や家族連れで賑わっていた。ランチメニューのカレーセットは、サラダ、カレー、ナン、ドリンク付きで900円。
「ナンは食べ放題だし、カレーはどれもおいしい。お気に入りはキーマカレー。1、2カ月に1回は来ます」と、客の女性は言う。
ラジャンは、日本各地にある親しみやすいインド・ネパール料理店のひとつだ。だが、ここへきて、そんなインド・ネパール料理店に「存続の危機」が訪れているという。客入りもよく、経営は順調そうに見えるのになぜなのか。
経営管理ビザが厳格化
店主のカンデル・ラグさんは言う。
「経営・管理ビザの要件が、厳しくなったんです。もし、ビザ更新時に資本金3000万円を求められたら、用意できない。会社をたたむしかないかもしれません」
昨年10月、外国人経営者向けの在留資格「経営・管理」の要件が厳格化され、資本金は「500万円以上」から「3000万円以上」に引き上げられた。
さらに、「1人以上の常勤職員」も必須になった。経験や学歴の要件も追加され、「経営・管理経験3年以上」、もしくは「経営・管理に関する修士相当の学位」を求められる。中小企業診断士などによる事業計画書の確認も義務づけられた。
ビザ悪用が防げなかった理由
経営・管理ビザは日本経済を活性化する目的で、2015年から運用が開始された。
コロナ禍明けの22年ごろから中国人が同ビザを取得するケースが急増した。24年に経営・管理ビザを取得した10万3611人のうち、半数以上の5万4647人が中国人だった(ネパール人は1378人)。東京入管が23年9~12月、ビザ悪用の疑いのある300件を調べたところ、うち9割は、事業の実態がない「ペーパーカンパニー」だった。日本への「移住」が目的と見られ、こうした中国人は「潤日(ルン・リー)」と呼ばれる。経営・管理ビザの悪用問題は国会でも取り上げられ、要件の厳格化にいたった。
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カンデルさんは、こう訴える。
「もっと早い時期に、書類審査だけでなく、直接、会社に電話して事業実態を確認してほしかった。そうしていれば、ビザ悪用は防げたはずなのに……」
同業者に動揺広がる
厳格化以前から経営・管理ビザで会社を経営する外国人に対しては、施行日から3年間の猶予期間が設けられたが、カンデルさんと同郷の経営者の間では「このまま店を継続できるのか」と動揺が広がっているという。
多くのネパール人がインド料理店の経営者として日本に渡ったが、昨年10月以降は「激減しているはず」と、カンデルさんは言う。
カンデルさんは、経営・管理ビザの取得要件改正について、税理士やビザの更新を代行する行政書士に相談してきた。そして、こう語る。
「いきなり資本金を6倍の3000万円にせよ、とは常識的にはありえない話です。これまで在留資格の要件を順守して、真面目に店を経営してきました。社会保険料、労災保険料、雇用保険料、税金もきちんと納めてきた。今後のビザ更新についても、何の問題もないはずです」
「ガチ中華」への影響は?
中国人経営による中華料理店、いわゆる「ガチ中華」はどうだろうか。「東京ディープチャイナ研究会」の主宰者でジャーナリストの中村正人さんは、経営・管理ビザの取得要件厳格化の影響は「ごく一部に限られる」と言う。
「ガチ中華の店は30年ほど前から徐々に増えました。店主は『永住者』ビザなどの取得者が大半で、ここ数年で経営・管理ビザで来日した潤日はそれほど多くありません」(中村さん)
潤日の資本力は他の外国人店主と比べて圧倒的に大きい。中村さんによると、潤日には富裕層だけでなく、中間層の人もいるという。
「中間層といっても、上海のような大都市に数億円のマンションを複数所有しているような人たちです。資本金が500万円から3000万円に引き上げられても、彼らにとっては大した金額ではないでしょう」(同)
永住権を持ち、東京・池袋で中華料理店「ムーさんの蒸気館&食彩雲南」など、7店舗を営む、中国・大連出身の牟明輝さんは「潤日の人は飲食店に投資はしても、自分で経営する人は少ないと思います。生き残るのが大変な業界ですから」と語る=米倉昭仁撮影