トランプ氏、「シャリア法移行」と国連でロンドン市長を批判 ロンドンは「偏見には回答しない」と

画像提供, Reuters

アメリカのドナルド・トランプ大統領は23日、国連での演説の中で、英ロンドンがシャリア(イスラム法)に移行したがっていると主張した。

トランプ氏は米ニューヨークで開かれた国連総会で演説した際、ロンドン市長のサー・サディク・カーンを改めて非難。また、国連の難民支援も批判した。

トランプ氏は、「ロンドンにはひどい市長がいる。本当にひどい市長だ。あの街はあまりに変わってしまった。すごく変わってしまった」と発言し、「今はシャリア法をやろうとしている。でも国が違う。そんなことできない」と主張した。

これに対しカーン市長の報道官は、「(トランプ氏の)とんでもない、偏見に満ちた発言をまともに相手にして、回答するつもりはない」と述べた。

報道官はさらに、「ロンドンは世界で最も偉大な都市で、アメリカの主要都市よりも安全だ。私たちは、記録的な数でここに移住しているアメリカ国民を歓迎する」と述べた。

一方のカーン氏は、自分は「トランプ大統領に対して無関心」で、「自分には、もっと大事な懸案事項がほかにある」としている。

カーン氏は公式晩さん会に出席しなかった。BBCの取材によると、同氏は招待を求めたり期待したりしていなかった。市長に近い関係者は、トランプ氏の政治姿勢が「恐怖と分断を生んでいる」と述べた。

2019年、トランプ氏はカーン氏を「どうしようもない負け犬」と呼んだ。これに対しカーン氏は、トランプ氏が極右政治をあおっていると非難した。

ロンドン各地区で選出された労働党議員の一部は、トランプ大統領による最新の発言を受けて、カーン氏を擁護した。

イーリング・セントラルおよびアクトン選出のルパ・ハク下院議員は、トランプ氏の発言を「露骨で厚顔無恥なうそだ」と述べた。

カーン市長の後任議員としてトゥーティングで当選したロセナ・アリン=カーン下院議員は、今回の発言を受けて駐英アメリカ使を呼び出すべきだと主張した。

国連総会での演説の中でトランプ大統領は、ロンドンのカーン市長を名指しで批判し、「ロンドンにはひどい市長がいる。本当にひどい市長だ。(中略)今はシャリア法をやろうとしている。」と主張した。

仮にトランプ氏が、ロンドンがカーン氏の下で法制度をシャリア法に移行させようとしていると言いたいのなら、それは事実ではない。

ロンドンでのシャリア法導入という虚偽の主張は、長年にわたってソーシャルメディア上で拡散されてきた。

2020年にはフェイスブックで、「現在、ロンドンの3つの自治区でシャキラ(原文ママ)法を試行している。来年には残りの30自治区にも導入する予定だ」という引用文が、カーン氏の画像と共に複数投稿された。

当時、カーン氏の事務所はロイター通信に対し、この引用文は「シャリア」という語のつづりが誤っているうえに、捏造(ねつぞう)されたものだと述べた。

シャリア法はイスラム教の法体系で、イギリスには多くのシャリア評議会が存在する。一つのシンクタンクの調査によると、2009年時点でイギリス国内には約85のシャリア評議会があった。

こうした評議会の業務の大半は、宗教的な婚姻仲裁に関するものだ。資産問題について判断を下す場合もあるが、イギリス政府はその判断が「法的拘束力を持たない」と明言している。

2016年にクリス・グレイリング法務相(当時)はシャリア評議会について発言した際、「最終的に、我が国で法的拘束力を持つ判断を下す場所は裁判所だけだ」と述べている。

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