「高齢でもヨボヨボにならない人」はよく食べている…がん・糖尿病・感染症を同時に予防する「最強の成分」の名前(プレジデントオンライン)

6/19 11:15 配信

食事で病気を予防することはできるのか。岐阜大学名誉教授で循環器専門医の湊口信也さんは「果物や野菜に含まれているファイトケミカルは、大腸がんや乳がん、さらには肺炎などの感染症に対しても驚くべき防御力を発揮する」という――。(第2回) ※本稿は、湊口信也『果物野菜で100歳を生きる』(さくら舎)の一部を再編集したものです。■野菜の苦味や香りが体を守るバリアになる ファイトケミカルとはあまり馴染みのない言葉ですが、植物にとって有害な紫外線や昆虫から身を守るための色素、香り、辛味、ネバネバなどの成分のことをいいます。ファイトケミカルの種類はポリフェノール(フラボノイド系)、カロテノイド、含硫化合物があり、さまざまな果物野菜に含まれています※図表1。 ポリフェノール(フラボノイド系)は、ブルーベリー、ブドウ、大豆、セロリ、パセリ、ピーマン、緑茶、カカオ、果実類、ブロッコリー、タマネギ、柑橘類の果皮などに多く含まれます。カロテノイドは、ニンジン、カボチャ、トマト、ミカン、ホウレン草、スイカ、ブロッコリー、とうもろこし、桃などに含まれます。 含硫化合物は、ダイコン、ワサビ、タマネギ、キャベツなどに含まれています。 ファイトケミカルの作用として、ポリフェノールは、抗酸化作用、抗動脈硬化作用、糖尿病予防、肥満予防、骨粗鬆症<ルビ:こつそそうしょう>予防、認知症予防であり、カロテノイドは、抗酸化作用、老化防止、免疫機能維持、血管系疾患予防、目の健康、骨密度維持、癌の予防、皮膚や粘膜の健康保持作用であり、含硫化合物は、抗酸化作用、殺菌作用、血栓溶解作用、血液循環促進作用、食中毒予防、動脈硬化予防などが報告されています※1。 さらに、果物野菜摂取には、これら以外に未だ明らかになっていない臓器保護作用を有している可能性も否定はできません。 ※1 Yang Y et al. Health Benefits and Future Research of Phytochemicals: A Literature Review. J Nutr 155: 87-101, 2025■リンゴとタマネギが血圧ケアに効く理由 ファイトケミカルは心血管病の予防や治療に効果があることは多くの臨床試験、メタ解析や疫学的研究によって明らかにされています。 ファイトケミカルの中でも心血管病の予防や治療に特に効果のあるものは、ポリフェノール(フラボノイド系:ケルセチン、カテキン、アントシアニン、非フラボノイド系:レスベラトロール、クルクミン)、カロテノイド(リコペン、ベータカロテン、ルテイン)、グルコシノレート(スルフォラファン、インドール3カルビノール)、サポニン、タンニンなどが挙げられますが、これらは、抗酸化作用、抗炎症作用、内膜細胞機能改善作用、脂質改善作用、血小板凝集抑制作用、血圧低下作用などを有しており、心血管系の健康保持作用が強いと報告されています※2。 ※2 Alum EU. Role of phytochemicals in cardiovascular disease management: Insights into mechanisms, efficacy, and clinical application. Phytomedicine Plus 5, 100695, 2025 以下にこれらのファイトケミカルの特徴と作用を紹介いたします。

 ポリフェノールは抗酸化作用、抗炎症作用、心臓保護作用を有します。ポリフェノールにはフラボノイド系と非フラボノイド系がありますが、その中のフラボノイド系にはケルセチン、カテキン、アントシアニンがあり、ケルセチンはリンゴ、タマネギ、ベリーに含まれ血圧低下作用、内皮機能改善作用、悪玉コレステロール酸化抑制作用があります。

■血管を若々しく保つ「赤い食べ物」 カテキンは緑茶に含まれ、特にエピガロカテキンガレーテは脂質改善作用、血圧低下作用、内皮機能改善作用、抗動脈硬化作用を有しています。 アントシアニンはベリーや赤キャベツなどに含まれていて、脂質改善作用、抗酸化作用、内皮機能改善作用があり、心血管病を低下させる作用があります。 非フラボノイド系ポリフェノールのレスベラトロールは赤ワイン、ブドウ、ベリーなどに含まれており、内皮機能改善作用、血圧低下作用、抗炎症作用、サーチュイン刺激作用、NO(一酸化窒素)合成調節作用があります。同じく非フラボノイド系ポリフェノールのクルクミンはウコン(ターメリック)に含まれ、抗炎症作用、抗酸化作用、内皮機能改善作用などの心血管病予防に良い作用があります。 カロテノイドは多くの果物や野菜の色を形成している生理活性化合物であり心臓保護に働く抗酸化作用を有しています。主なカロテノイドにはリコペン、ベータカロテン、ルテインがあります。リコペンはトマトと赤い果物に含まれていますが、悪玉コレステロール酸化抑制作用、血圧低下作用、内皮機能改善作用などがあるため心血管系の健康維持の作用が認められています。 ベータカロテンは抗酸化作用があり体内でビタミンAに転換されますが、酸化ストレス低減作用、免疫作用亢進作用、脂質異常改善作用、動脈硬化改善作用によって心血管病予防に効果があります。■病気に負けない体を作る「緑の野菜」 ルテインは葉物緑色野菜に存在し、抗酸化作用、動脈機能改善作用で心血管病を予防します。 グルコシノレートは硫黄を含む苦味化合物であり、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどに含まれ、抗炎症作用と抗酸化作用で心血管病予防に役立ちます。 グルコシノレートの中でもスルフォラファンはブロッコリーや他の十字花科の野菜(ブロッコリー、キャベツ)に含まれており、抗酸化作用、血管内皮依存性血管拡張作用、抗動脈硬化作用、解毒酵素亢進作用、抗炎症作用などを認め、心血管病予防に役立っております。 インドール3カルビノールは十字花科の野菜(ブロッコリー、キャベツ)に含まれており、エストロゲンの代謝調節作用、抗炎症作用、抗酸化作用のために心血管病予防に働くと報告されています。 サポニンは様々な植物由来のグリコシドであり、豆類とハーブに存在します。サポニンは抗酸化作用と脂質低下作用により心血管系の健康維持に有益です。特に大豆に含まれるサポニンには、脂質低下作用、コレステロール低下作用、抗酸化作用があります。また、ニンジンサポニンはニンジンに含まれ、内膜機能亢進作用、血圧低下作用、抗酸化作用があり、これらの作用は心血管病予防につながります。

 タンニンはお茶、赤ワイン、柿やブドウ、バナナなどの果物に含まれ、抗酸化作用、抗炎症作用、血圧低下作用、脂質低下作用、内皮機能改善作用などがあり心血管病の予防作用があります。

■がんや肺炎のリスクを下げる食事のコツ 我々が行ったNOBUNAGA研究の結果、5年間経過観察した3210例の患者の中で、全死亡は110名であり、そのうち脳心腎疾患による死亡は33名で、それ以外の死亡は77名でした。 その中でも癌による死亡が36名、肺炎による死亡が17名と特に多かったのですが、果物野菜の持つファイトケミカルの作用を考えますと、ポリフェノール、カロテノイド、含硫化合物の作用が、脳心腎疾患の動脈硬化性病変に対する抗動脈硬化作用はもちろんのこと、癌と肺炎に対しても抗炎症作用、免疫機能維持、殺菌作用、抗酸化作用、癌予防作用などの効果が発揮されます。 NOBUNAGA研究の結果で、1日尿中カリウム排泄量が少ない場合、すなわち、果物野菜の摂取が少ない場合には、脳心腎疾患のみならず癌と肺炎による死亡が多かったことをファイトケミカルの作用の恩恵を受けることができなかったためである可能性は否定できないのではないかと考えられます。 ファイトケミカルが大腸癌に対する抗癌作用を有するという報告※3や乳癌に対する抗癌作用を有するとの報告※4が認められています。 ※3 Yang Y. et al. A comprehensive review of phytochemicals targeting macrophages for the regulation of colorectal cancer progression. Phytomedicine128: 155451, 2024※4  Almilaibary A. Phyto-therapeutics as anti-cancer agents in breast cancer: pathway targeting and mechanistic elucidation. Saudi J Biol Sci 31: 103935, 2024 また、ファイトケミカルは、抗炎症作用や殺菌作用、免疫機能維持作用があることが報告されていますので、感染症に対する効果も期待できます※5。 ファイトケミカルの中でも、ポリフェノール、イソチオシアネート、アルカロイド、カンナビノイド族などが、抗酸化作用、抗炎症作用、抗アミロイド作用などを認めているため、認知症に対してもファイトケミカルの予防効果や治療効果を期待できるのではないかとの報告も認められておりますが、実際の臨床試験での有効性については今後の臨床試験に期待されるところです※6。 ※5 Vieira A. A comparison of traditional anti-inflammation and anti-infection medicine plants with current evidence from biomedical research: Results from a regional study. Pharmacognosy Res 2: 293-295, 2010※6 Libro R et al. Natural Phytochemicals in the Treatment and Prevention of Dementia: An Overview. Molecules 21, 518, 2016----------湊口 信也(みなとぐち・しんや)岐阜大学名誉教授、岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問)1952年、和歌山県に生まれる。医学博士。1978年に岐阜大学医学部医学科を卒業し、1983年に岐阜大学大学院医学研究科博士課程を修了する。1988年に岐阜大学医学部助手(第二内科)を務め、1989年にオ−ストラリア、メルボルン大学医学部(Pharmacology)に留学。2007年に岐阜大学大学院医学研究科循環病態学/呼吸病態学(第二内科)教授、2012年に岐阜大学大学院医学系研究科副研究科長、2016年に岐阜大学大学院医学系研究科研究科長・医学部長を務める。2018年以降は岐阜大学名誉教授および岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問)として勤務している。主な資格は循環器専門医、内科認定医、内科専門医(総合内科専門医)、高血圧専門医、産業医、心臓リハビリテーション指導士、循環器上級指導医(FJCS),心臓病上級臨床医(FJCC)などがある。受賞歴は2003年にBest of Scientific Session AHA(アメリカ心臓協会)賞、2017年度岐阜医学賞などがある。

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岐阜大学名誉教授、岐阜市民病院心不全センター長(特別診療顧問) 湊口 信也

最終更新:6/19(金) 15:30

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