10部隊が解隊、2030年までに全機退役

米空軍は2030年までにA-10を退役させる予定で、デイビス・モンサン空軍基地は9月18日「第355作戦群、第357戦闘飛行隊、第357戦闘機整備飛行隊、第355訓練飛行隊を解隊して同基地におけるA-10運用の歴史に幕を下ろした」と発表し、A-10を運用する現役部隊は残り3個飛行隊(計54機)になった。

参考:Final A-10 units inactivate at Davis-Monthan

10年以上に及ぶ米空軍と議会のA-10退役を巡る戦いは予算審議の風物詩だが、米陸軍や米海兵隊はA-10の運用継続を特に求めておらず、議会も近接航空支援において「30mmガトリング砲の威力やA-10の頑丈さが失われる」と本気で危惧しているのではなく、A-10運用・維持に関わるサプライヤーや配備されている基地周辺の雇用に影響が出ることを恐れる当該選挙区の議員が「A-10伝説」を過度に吹聴しているだけで、A-10退役を巡る戦いの本質は雇用問題だ。

出典:U.S. Air Force photo by Mark Herlihy

議会はA-10退役を拒否しても運用・維持のための資金を別途割り当てたりしないため、米空軍はA-10維持のため主翼の交換やアビオニクスの更新など大掛かりなアップグレードに資金を奪われ続けており、2023会計年度で初めて21機の退役(281機→260機)が認められ、当時のブラウン参謀総長は「A-10は本当に素晴らしい機体だ。競合が存在しない環境では本当に素晴らしい機体だ。A-10はシングルミッション=近接航空支援にしか対応していないため我々が求める航空機ではない」と述べ、ウクライナ戦争を引き合いに出して「近代的な防空システムが従来型の航空機を無価値に変えた」と指摘。

2024会計年度でも42機、2025会計年度でも56機の退役が承認され、2026会計年度予算でも残り全て=162機の退役が提案されたが、議会は国防権限法に「2026会計年度(2025年10月~2026年9月)中にA-10の在庫を103機未満にしてはならない」という付帯事項を盛り込んだため、2026会計年度に退役が承認されたのは59機のみだった。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jessica Smith

米空軍は残りのA-10について「2029会計年度まで3個飛行隊(計54機)を維持する」「2030会計年度まで2個飛行隊(計36機)を維持する」と説明し、この措置はA-10の完全退役を少しだけ先延ばしにするものだが、その真意は戦闘捜索救助任務をA-10からF-15/F-35に移行させるための猶予措置であり、ケネス・ウィルスバッハ大将も下院軍事委員会の公聴会で「A-10が退役するに伴って戦闘捜索救助任務の近接航空支援は他のプラットフォームに引き継がれる」「その任務のための能力がF-15やF-35にある」と説明。

韓国に配備されていたA-10は2025年に撤収済みで、ヒル空軍基地にあった整備拠点も2026年2月に閉鎖され、A-10パイロットの養成も2026年4月に終了し、デイビス・モンサン空軍基地は9月18日「第355作戦群、第357戦闘飛行隊、第357戦闘機整備飛行隊、第355訓練飛行隊を解隊して同基地におけるA-10運用の歴史に幕を下ろした」「1992年に発足した第355作戦群は第355航空団に配属された飛行部隊の統制を任務とし、近接航空支援、前方航空管制、戦闘捜索救助といった任務の能力を提供した」「さらに海外に展開した部隊を支援するため人員を派遣し、正式な初期資格・再資格取得訓練の全てを監督した」と発表した。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Jasmyne Bridgers-Matos

これでA-10を維持している現役部隊はムーディ空軍基地の第74戦闘飛行隊と第75戦闘飛行隊、ホワイトマン空軍基地の第303戦闘飛行隊(空軍予備役軍団所属)、州兵部隊はゴーウェン・フィールド州空軍基地の第190戦闘飛行隊、セルフリッジ州空軍基地の第107戦闘飛行隊だけになり、ムーディ空軍基地のどちらかの飛行隊は2029会計年度までに解隊し、最後の飛行隊は2030会計年度まで、ホワイトマン空軍基地の飛行隊も2030会計年度まで維持される予定だ。

州兵部隊の第190戦闘飛行隊もF-16C/D、第107戦闘飛行隊もF-15EXへの機種転換待ちで、A-10を維持している現役部隊も機種転換が予定されているが、デイビス・モンサン空軍基地の第357戦闘飛行隊は機種転換ではなく文字通りの解隊であり、所属していたパイロットや整備士は他の部隊に配置転換され、この基地には第492特殊作戦航空団がフロリダのハルバート・フィールド空軍基地から移転してくることになっている。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Samantha Melecio

A-10の機体維持にかかる費用のみであれば少額かもしれないが、どんな機体を装備している飛行隊でも人件費は同じで、現在の米空軍にシングルミッションにしか対応しない飛行隊を維持できるほど資金や人員に余裕はなく、どれだけA-10がF-15/F-35では実現できない能力や価値を提供したとしても、航空機は導入から15年目以降にスペアパーツの入手性が悪化し始め「毎年3%~7%ずつメンテナンスコストが上昇していく」と米空軍は主張しており、A-10と比べて「F-15ではあれができない」「F-35ではこれができない」という問題は現実的なトレードオフに過ぎない。

ちなみにA-10全機(281機)を2030年代まで維持するには主翼の追加交換に6.151億ドル(既に約21億ドルを投資済み)、アビオニクスの更新や能力の強化=A-10AからA-10Cへのアップグレードまで含めると37億ドル以上かかる計算で、米空軍は2021会計年度の議会答弁で「これだけの資金があればF-35Aを約2個飛行隊分購入できる」「もしA-10を残せばF-35A部隊の人員配置も見直さなければならない」と回答したことがあり、さらに米空軍も「航空機は導入から15年目以降にスペアパーツの入手性が悪化し始めて毎年3%~7%ずつメンテナンスコストが上昇していく」と報告している。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Courtney Sebast

政府説明責任局(GAO)は2020会計年度の報告で「A-10の1飛行時間あたりのコストは約22,531ドル、F-16は約26,927ドル、F-15Eは約33,177ドル、F-35(全派生型の平均)は約41,986ドル」と言及しているものの、A-10は近接航空支援にしか対応していないため「シングルミッションにしか対応していない機体の飛行コストが約22,531ドル」と考えると、さらにA-10、F-16、F-15E、F-35を運用するパイロットや整備士にかかる人件費は基本的に同じなので「A-10を廃止して資金と人員を解放したい」と考えるのは軍事合理性の帰結なのかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Samantha Melecio

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