『ニューヨークタイムズ』『CNN』『ザ・タイムズ』『BBC』…ロシア情報で信憑性が低いのはどこ?ウクライナ侵攻で露呈したメディアの信頼度(ダイヤモンド・オンライン)

 ロシアのウクライナ侵攻以降、世界の主要メディアは一斉に報道合戦を繰り広げてきたが、誤報や偏向報道が少なくない。その中には、名門メディアと言われる報道機関の名も…。ロシア情勢に詳しい軍事評論家2人が、報道の裏側を明かす。※本稿は、小泉 悠、黒井文太郎『国際情勢を読み解く技術』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 気になるロシアの動向は 意外にも官製メディアに掲載  ――ロシアの弾薬の生産や備蓄の量などは、外部から読めるのか?  小泉悠(以下、小泉):それは難しいです。弾薬の生産工場はわかっているのですが、工場は衛星で上空から見ただけではなんともわかりません。  弾薬生産能力というのは、各国の軍の研究機関が出している見積もりの数字がいちばん参考になって、たとえば450万発という最大推定値は、2023年にエストニア国防省が出した数字です。他にもイギリスのRUSIや米国のRAND(ランド研究所)など、さまざまな組織がそういった見積もりを出していて、だいたい300万〜450万発になります。  黒井文太郎(以下、黒井):ロシア軍の内部の情報については、私も欧米の研究機関のレポートを参考にします。ただ、それも分量が多いので、つい欧米主要メディアがニュースとして引用する、注目されるレポートばかりを参考にしてしまうのですが、より厳密に分析するには、さらに多くの情報源に当たる必要があって、その作業はかなり膨大になります。  小泉:私は自分の専門分野ですので、ロシアの情報源を細かく見るようにしています。ロシアの情報源といっても、フェイク情報ばかりではありません。ロシア軍の動向を分析するために有効な情報などは、ほとんどロシア側の情報源にあります。

 まずはロシア軍の新聞『赤い星』です。これを毎日見ておくのが私は基本だと思います。さらに、ロシア国防省のサイトも実によくできています。ロシア国防省サイトのニュース欄が、非常に細かい部隊の訓練などまで毎日何十件も掲載していて、これを見るだけでロシア軍の行動はかなりわかります。  軍のテレビ放送・ズヴェズダも気合いが入っています。こうした官製メディアによる情報アピールというのは、ソ連時代、あるいはエリツィン時代にはほぼなかったのですが、プーチン政権になってからだいぶ変わりました。  それと、ロシアは地方紙が多いんです。もともとはスターリンの方針ですね。そうした地方紙に興味深い情報がよく掲載されています。かつては紙の新聞しかなかったのでチェックするのが困難でしたが、今はメッセージアプリ・テレグラムで見られますね。 ● 真偽不明のSNSアカウントを ニュースとして引用する欧米メディア  黒井:公式の情報源も重要ですが、そうでない情報源、つまり商業メディアやネットのサイトも重要です。  しかし、そうした情報源の場合、とにかく膨大に誤情報があります。シンプルに誤認識の場合もあれば、最初からテキトーに煽っているだけのもの、さらには計算して誘導しようしているケースもかなり見られます。  なかでも評価に手を焼くのが、ロシア語圏でいちばん出回っているテレグラムですね。あそこで情報発信しているアカウントもいろいろで、後で検証すると、それなりに当たっている場合と全然当たっていない場合があります。当たっていない場合のほうがずっと多いですが、なかには使える情報もあるので、頭から無視もできないわけです。他にもさまざまなSNS、特にYouTubeにも実に多種類のアカウントがあります。  こうした怪しい情報源がいくつもありますが、たとえば、米国の『ニューズウィーク』をはじめ多くのメディアが「これはすごい情報源だ」と評価していたアカウントに、SVR将軍と名乗るアカウントがあります。  ロシア情報機関の関係者と自称して、まるで見てきたようにプーチン政権中枢部の内幕を語る。「ゲラシモフ(編集部注/ワレリー・ワシリエヴィチ・ゲラシモフ。ロシア連邦軍参謀総長兼第一国防次官)が癇癪を起こして幹部会議で暴れた」みたいな話です。

ダイヤモンド・オンライン
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