イスラエル、トゥーンベリ氏ら活動家170人を国外追放 拘束中に不当な扱い受けたと主張
画像提供, IsraelMFA/Reuters
イスラエルは6日、パレスチナ・ガザ地区に海路で向かっていたところを拘束した、スウェーデンの気候変動活動家グレタ・トゥーンベリ氏(22)を含む親パレスチナ活動家ら170人を国外追放した。親パレスチナ活動家たちは1日、ガザ地区に援助物資を届けるための船団で、イスラエルの海上封鎖の突破を試みたところを拿捕(だほ)され、同国内の刑務所に拘束されていた。
トゥーンベリ氏は6日、ギリシャ・アテネの空港に到着すると、花束を渡されて歓迎された。数十人の支持者から歓声を受ける中、拳を突き上げて応じた。
イスラエルの外相は、活動家らがギリシャとスロヴァキアに空路で移送されたと説明。ギリシャ、スロバキア、フランス、イタリア、イギリス、アメリカの市民が含まれていたと述べた。
また、活動家らが拘束中に虐待され、基本的な権利を否定されたとの非難について、あらためて「フェイクニュース」だと否定した。
イスラエル外務省はこれまでに、活動家の集団「グローバル・スムード船団(GSF)」の42隻の船に乗っていた479人のうち、341人の国外退去を発表している。
残る138人の活動家は、イスラエル国内で拘束されたままとなっている。GSFによると、5日時点で40人以上がハンガーストライキを行っていることが確認されている。
GSFは船団の目的について、「ガザに対する違法な包囲を海路で打破し、人道的回廊を開き、パレスチナ人に対する継続的なジェノサイドを終わらせることだ」と述べた。
また、イスラエル軍による阻止行為は、国際海事法および人道法に違反していると主張した。
一方、イスラエル当局は、合法的な封鎖を実施したと説明。船団が運んでいた支援物資は計2トンに過ぎなかったとして、「宣伝目的のパフォーマンスだ」と非難した。
ギリシャ外務省は、イスラエルに国外退去させられ、6日に空路でアテネへ移送された、欧州16カ国の市民161人に、トゥーンベリ氏が含まれると発表した。スロヴァキアは、別の便で他の10人を受け入れたと明らかにした。
アテネ到着時、トゥーンベリ氏は記者団に対し、GSFは「イスラエルによる違法かつ非人道的な封鎖を海路で打破しようとする、過去最大の取り組みだった」と話した。
トゥーンベリ氏は、「これは世界的かつ国際的な連帯の物語だった。自分たちの政府が行動しない中で、大勢が立ち上がった物語だった。『私を代表するはずだった指導者たちは、ジェノサイドと死と破壊を助長し続けている。この指導者たちは、私を代表していない。これは最後の手段だ。このような使命が存在しなくてはならない、そのこと自体が恥だ』と、人々が声を上げた物語だった」と述べた。
さらにトゥーンベリ氏は、「拘束中に受けた虐待や不当な扱いについては、本当のところ、とてもとても長い時間をかけて話すことができる。でも、それは本題ではない」と付け加えた。
スペイン人活動家の一団として国外退去させられたラファエル・ボレゴ弁護士は、マドリード空港で記者団に対し、「身体的・精神的虐待を繰り返し受けた」と訴えた。
「彼らは私たちを殴り、引きずり、目隠しをし、手足をしばり、おりに入れ、侮辱した」と、ボレゴ弁護士は主張した。
ロイター通信によると、5日にジュネーブへ帰国したスイス人活動家9人も、「非人道的な拘束環境と、屈辱的かつ品位を傷つける扱い」を受けたとする声明を発表した。
イスラエル外務省は6日の声明で、船団の活動家の法的権利は「これまでも、そして今後も完全に尊重される」と強調。「彼らが事前に計画されたフェイクニュース活動の一部として、うそを広めている」と述べた。
また、活動家たちに関して起きた暴力的な事態は、1件だけだとイスラエル主張。ケツィオット刑務所で6日、国外退去を前にした定期的な健康診断の際に、スペイン人女性活動家が女性医療従事者をかんだのだという。この医療従事者は軽傷を負ったとイスラエル外務省は述べた。
イスラム組織ハマスが運営するガザ地区の保健省は、戦争開始以降、少なくとも460人のパレスチナ人が栄養不良の影響で死亡したと発表。そのうち182人は、国連の飢饉宣言以降に死亡したという。
国連はイスラエルに対し、ガザ封鎖を緊急に解除し、あらゆる手段を通じて命を救う物資の搬入を認めるよう求めている。また、占領勢力としてイスラエルには、国際法に基づき、ガザの住民に十分な食料と医療物資を届ける義務があると指摘している。
対するイスラエルは、自国の行動は国際法に則ったものであり、支援物資の搬入を促進していると主張している。
イスラエル軍は、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部への奇襲攻撃を主導し、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったのを受けて、ガザで軍事作戦を開始した。
ガザの保健省によると、それ以降、イスラエルによる攻撃で少なくとも6万7160人が殺されている。