米関税の影響をいつまで見極めるか「不確実性高い」=植田日銀総裁
[東京 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の記者会見で、利上げ判断のカギとなる米国の高関税政策の影響をいつまで見極めるのか「不確実性が高い」と述べた。同日の会合で決めた上場投資信託(ETF)の売却については、史上最高値圏にある日本株の株価水準を見て決めたのではないと強調。100年以上の歳月をかけて順次売却していくと説明した。
植田総裁は会見の冒頭、経済・物価見通しが実現していけば、経済・物価情勢の改善に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくと改めて表明。利上げ継続方針を示した。
ただ、利上げ判断に当たって焦点となる米国の高関税政策がもたらす米国の経済・物価や日本の経済・物価への影響については、見極めに「どれくらい時間がかかるかは依然として不確実性が高い」と話した。
今回の決定会合では、高田創委員と田村直樹委員が0.75%に利上げする議案をそれぞれ提出したが、反対多数で否決された。
高田委員の「物価安定の目標」の実現がおおむね達成されたとする見方について、植田総裁自身は基調的な物価上昇率は「まだ2%を下回っている」と評価。物価上振れリスクが膨らんでいるとする田村委員の指摘については、米国の関税政策の影響がこれから出てくる可能性がある中で景気下振れリスクがあり、それに伴う物価下振れリスクも意識しなければならないと述べた。
<ETF売却完了まで「100年以上」>
植田総裁は、保有ETFの売却を今回の会合で決定した理由について、金融機関から買い入れた株式を処分する過程で有益な知見が蓄積され、実務的にもめどがついたからだと説明した。特定の株価水準を念頭に置いた判断ではないとした。
ETFとREITを今回決定したペースで売却した場合、「単純に計算すれば100年以上かかる」と説明。100年後まで見届けることはできないが、意思決定に至った経緯や基本方針を残しておくことで、次代のボードメンバーに引き継いでいくと述べた。
石破茂首相の退陣表明を受け、後任の自民党総裁を選ぶ選挙が22日に告示される。政治状況の不安定化について、植田総裁はコメントを差し控えた上で、新首相の下で政策が決まれば「私どもの経済・物価見通しに織り込んだ上で政策対応させていただく」と話した。
ベセント米財務長官が一部メディアのインタビューで、日銀の金融政策が「後手に回っている」と発言したことについても、コメントを控えた。
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