ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が初めて系外惑星を発見
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の快挙はまだまだ続く模様です。
2022年7月に科学観測を開始して以来、JWSTは異星の大気を調査することで、その居住可能性を探ってきました。そして今回、塵や宇宙ゴミに紛れた若い惑星系のなかで、初めて太陽系外惑星を発見することに成功しました。
今度は太陽系外惑星を発見
今回発見された系外惑星は、これまでで最も質量の軽い惑星を画像化したもので、JWSTがその高度な能力を発揮したことにより達成した偉業ともいえます。
2025年6月25日にNature誌にて発表された論文で、この発見に関する詳細が報告されています。今回の発見により、土星のように見つけにくい惑星を新たに観測できる道が開かれたことになります。
この論文の第一著者であるAnne-Marie Lagrange氏は、米Gizmodoの取材に対してこう語ります。
「この惑星はその親星(註:惑星が周回している中心の星のこと)に比べ、明るさの等級において何桁分も暗く、また地球やJWSTから見ても角度的に非常に近く見えます。
そのため通常は惑星を見ようとしても、親星の光しか見えません」
この問題を乗り越えるため、調査チームはJWSTの中赤外線装置用の付属機器であるコロナグラフを使用。コロナグラフは皆既日食の効果を再現し、星の光を遮って周囲をより鮮明に見られるようにするもので、これにより今回系外惑星が確認できるようになりました。
今回発見された惑星系は、誕生からわずか数百万年しか経っていないというかなり若い惑星系。「TWA 7」と名付けられたこの惑星系にははっきりとした3つの環があり、そのうち1つはとりわけ狭く、その狭い環の周囲にはほとんど物質が存在しない領域が2つあることが確認されています。JWSTの画像ではその中心部に何かが映っており、それが系外惑星であると研究チームは結論づけています。
新しく発見された系外惑星は「TWA 7b」と呼ばれ、海王星よりも重く、太陽系最大の惑星である木星よりも30%ほど質量が軽い惑星であることが明らかになっています。
また、土星に近い質量を持ち、約640万年前に誕生した親星の周りを公転しており、「TWA 7b」はその星から52天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離)という大きな距離を保っているそう。
銀河円盤に生じる隙間を説明できる“初めて”の惑星
Lagrange氏によれば、この系外惑星は渦巻銀河とレンズ上銀がに見られる円盤上の構造である「銀河円盤」に生じる隙間について、初めて説明できる惑星でもあるといいます。
「惑星系の初期段階における銀河円盤と惑星の相互作用を説明できるという点で非常にユニークです」
惑星は親星の誕生の際に残された物質から形成され、その物質が渦巻く円盤を作り出します。これまでの原子惑星系円盤の観測において、さまざまな環状構造や隙間が見つかっており、未発見の惑星の存在を示すサインとされてきました。
これまでのところ、そうした惑星を直接観測できたことはなかったのですが、TWA 7bの質量や軌道の特徴が円盤の第一環と第二環の間に形成されたと予測される惑星の特徴と一致していることが明らかになっています。JWSTでの観測により、新しい異星の世界を発見する新たな扉が開かれたということになります。
これを受け、Lagrange氏は「画像観測の面では、土星のような惑星を直接撮影できる可能性が広がったといえます。もっと観測が進めば、土星のように親星からの強い光の照射を受けていない惑星の大気の特徴も解明できるかもしれません」と 述べています。