ウクライナ戦争が地下に拡大。パイプラインの中を這って歩いて進軍するロシアに、ウクライナはどう対抗しているのか(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)
ウクライナは、ロシア軍が地下パイプラインを使って同国に進軍していることが確認された3回目の事態に対処している。新たな報告によると、ロシアはクピャンスクでガスパイプラインを使用して市街地近くに物資補給ルートを構築した。地元のウクライナ軍は、パイプラインに水を流し込むことでこの作戦に対抗しようとしている。 ウクライナ戦争はいま、地下へと広がり始めている。 最近、ロシア軍が地下パイプラインを這ってハルキウの戦線に侵入を試みているのが発見された。それに対し、キーウの部隊はパイプを浸水させたり補強したりして阻止しようとしている。 ウクライナ消息筋は9月上旬、激しい戦闘が続くハルキウ州の前線の都市クピャンスクでのパイプライン戦術を公式に確認した。 戦争開始以来、ロシア軍がウクライナ側に発見されるのを避けるためにガス管や水道管を這ったり歩いたりしているのが確認されたのは、これで3度目だ。ウクライナにとって、この戦術はますます大きな防衛上の課題となる可能性がある。 頻繁に引用されるウクライナのオープンソース情報分析グループ「ディープステート(DeepState)」は9月12日、ロシア軍がクピャンスク近郊のガス管を利用し、付近のオスキル川を密かに渡り、市街地により近い場所に補給線とドローンパイロット拠点を確立したと報告した。 同グループのアナリストは、森林地帯の穴から荷物を引きずり出している制服姿の兵士を捉えたドローン映像を公開した。この報告はロシアのソーシャルメディア上でも反響を呼び、兵士がパイプを這って進む動画とともに拡散された。Business Insiderは、どちらの映像についても、信憑性や撮影時期を独自に検証することはできなかった。 ウクライナ軍参謀本部は9月12日の声明で、ロシア軍がクピャンスク近郊でパイプラインを使用して部隊を移動させたことを確認したが、同市は依然としてウクライナの支配下にあると述べた。 参謀本部は、パイプラインの出口は市内にはなく、ウクライナ軍がそうした通路のいくつかを浸水させたと記した。 声明は「クピャンスク地域には複数のパイプラインがあることに注意すべきだ」とし、「4本のうち3本はすでに損傷して浸水しており、残る4本目の出口は防衛部隊の管理下にある」と述べている。 9月15日、ウクライナのメディア・エスプレソ(Espreso)は、第429独立無人システム連隊の著名なドローン部隊指揮官、ユーリー・フェドレンコ(Yuriy Fedorenko)に行ったビデオインタビューを公開した。同氏は、彼の部隊が工兵用の爆薬を使用し、以前ロシア軍が使っていたクピャンスクのパイプラインを損傷させたと述べた。 フェドレンコ氏は、ウクライナ軍はパイプラインとオスキル川が合流する地点を標的にし、パイプを浸水させたと語った。 「これは時間が経てば敵がこのパイプを復旧できなくなることを意味するものではないが、我々が厳重に監視している」とフェドレンコ氏は述べた。 さらに、ウクライナの軍事ブロガーは9月14日、キーウ軍が少なくとも1つのパイプライン内に有刺鉄線を設置したと述べ、その内部に罠が仕掛けられた様子を映したとみられる動画を拡散した。当局はこの映像を確認していない。 地下パイプラインを利用した戦術は、2025年3月にロシア軍が行った大胆な作戦を彷彿(ほうふつ)とさせる。クレムリンの特殊部隊がスジャのガスパイプラインを約9マイル(約14.5キロメートル)歩いて進み、クルスクのウクライナ軍後方を攻撃した作戦だ。 ウクライナ当局によると、そのパイプラインは使用されておらず、直径1.4メートルだった。 ロシアはこの攻撃を成功と称賛したが、ウクライナはのちに破壊工作部隊を発見し、そのほとんどを殺害したと述べた。その月、ウクライナ軍の大半はクルスクから撤退した。 2024年初頭、ウクライナのメディアは、ロシア軍がドネツク州アウディーイウカの水道管から水を抜き、そこを使って地下から進軍し、約300フィート(約91メートル)間隔で出口の穴を設置したと報じていた。 ウクライナには主要ガスパイプラインが全土に張り巡らされており、かつてはロシア産ガスをヨーロッパに送る重要な中継国として機能していた。これらの幹線の多くは推定で年間1400億立方メートルのガスを輸送可能だが、ヨーロッパはロシアのエネルギーからの脱却を進めているため、十分に活用されていないか、まったく使われていない。
Matthew Loh