「ママあいたい」「何にもしてないのに」 兵庫県警が逮捕した16歳少女が衰弱死 ノートにつづられた「違法捜査」と無実の訴え
「娘はなんのことだかまったくわからずに警察に連れていかれました。不当な勾留をされ、身に覚えのない取り調べを受け、さぞ怖かっただろうと思うと涙が止まりません」
【写真】少女が勾留中にノートに記した文字は、涙でにじんでいた
兵庫県内の障害者福祉施設に勤めていた少女(当時16歳)が昨年12月に極度にやせ細り、低栄養状態となって死亡したのは、兵庫県警や神戸地検の違法な捜査や勾留、取り調べが原因だったとして、少女の母親が6月17日、県や国に国家賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。母親は冒頭のように言い、少女が勾留中に取り調べの様子を記録していた「被疑者ノート」を見せてくれた。その記述からは、警察や検察の不当な勾留や取り調べの一端が見えてくる。
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少女の母親は兵庫県内で障害者福祉施設を運営している。母親の話や訴状によると、少女は障害者支援に力を注ぐ母親の背中を見て育ち、障害者福祉施設のスタッフとして働くようになった。必要な資格も取得し、利用者にも信頼を得て、施設にかけがえのない存在になっていた。その人生が暗転するきっかけとなったのは、昨年2月15日に開催された施設のバレンタインイベントだった。
イベントには施設利用者やスタッフ35人が参加した。その一人が在宅で生活介護などの支援を受けていた施設利用者のXさんだった。母親が振り返る。
「Xさんは在宅で介護のお世話をしていた利用者でしたが、人がたくさんいる場所は苦手で、イベントでも手足をばたつかせ、男性スタッフがとめようとしたが、イライラしたままだった。そのうちXさんは自分の指をかむ、近くの人にかみつこうとするなど、より不機嫌になっていった。娘はそれに気づき、Xさんの横に入ってなだめようとしたが、おさまらず、腕をつねられたりして大変だった。娘が『あかんよ』と言いながら、お菓子などをあげるとようやく落ち着いた」
母親はXさんにつねられて青あざになった少女の腕の写真も見せてくれた。
Xさんに強くつねられ、少女の腕には青あざができたという(遺族提供)4カ月後にいきなりやってきた警察官
その後、イベントは大きなトラブルもなく無事に終了して、Xさんも自宅に帰ったという。
ところが、4カ月もたった昨年6月17日朝7時ごろ、突然、兵庫県警明石署の警察官が多数、少女が勤める障害者施設にやってきた。2月のバレンタインイベントでXさんに対応した少女と、もう一人の男性スタッフに、Xさんに対する暴行の疑いがあり、任意同行するという話だった。
少女の母親は別の施設にいたが、連絡をもらって現場にいた署員に電話で「30分ほどで着くのでそれまで待ってほしい」と求め、署員は「わかりました」と言ったという。だが、母親の到着を待たず、少女とスタッフは明石署に連行され、そこで暴行容疑で逮捕された。
「娘がなぜ逮捕されたのか、まったく理解できませんでした。16歳で、警察に調べられたり、かかわったりすることはまったくこれまでなかった」(母親)
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なぜ逮捕されたのか。母親の代理人である向井義博弁護士の説明によると、こうだ。
「バレンタインイベントでXさんが暴れそうになったとき、少女と男性スタッフが止めようとしてあごのあたりに触れた。それを見ていた参加者のYさんが後日、ある市役所の障がい福祉課の職員に、少女やスタッフによるXさんへの対応は虐待なのではないかと話した。それがXさんの親に連絡され、Xさんの親が明石署に被害申告をした。明石署は少女の母親や施設に事情聴取もせず、他の参加者にも十分に話を聞かず、周辺捜査もしないまま、Yさんの話だけで逮捕したのです」
ちなみに暴行を受けたとされたXさんにけがはなく、医師の診断も受けていないという。
虐待ではないかと証言したYさんは施設の利用者だった。向井弁護士によると、少女が死亡した後に少女の母親と面談した際、Yさんは、少女らがXさんのあごを押さえたと市職員や警察に言ってしまったが、実際はあごに手を添えていたのであり、「オーバーに言ってしまってすいませんでした」と謝罪したという。
だが、そのYさんの証言をもとに少女は逮捕され、執拗に“自白”を迫られることになった。接見が禁じられ、弁護士以外は面会できない状態になり、女性用の留置施設がある県警小野署に移送された。弁護士が差し入れた被疑者ノートに少女が記したメモによると、少女は午前中と、昼休憩から午後3時ごろまで、休憩後から夕食まで、夕食後と、1日4度、計5時間以上の取り調べを受けた。
「施設をつぶしたいわけじゃないねん」
ノートに記された記述を見ると、警察の取調官は、次のように脅迫めいた言葉で“自白”を迫っている。
〈すなおに言え、しょうじきに言ってくれ〉 〈少年(院)に行きたいんか、いつまでがんばれるん?〉
〈別にしせつをつぶしたいわけじゃないねん。お母さんこまらすな〉