パウエル氏、注目のジャクソンホール舞台へ-利下げ示唆を市場は期待
- 米経済は明確なシグナル欠く-慎重なメッセージ発信続ける可能性も
- 任期満了前最後のジャクソンホール講演-在任期間振り返る機会に
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は22日、連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げ再開に動くかを明快に示唆できる絶好の舞台に上がる。カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで、各国・地域のセントラルバンカーが一堂に会するジャクソンホール会合が21日から始まる。
ワイオミング州ジャクソンホールでのFRB議長による毎年恒例の講演は、政策転換を伝える機会となる可能性がある。パウエル氏は昨年、その目的で講演を利用し、その後9月のFOMC会合では通常より大幅な0.5ポイント利下げが決定された。今年は、利下げを求めるトランプ大統領からの強い圧力にさらされている。
しかし米経済は、今が利下げ再開の時だという等しく明確なシグナルを発しているわけではない。1日発表の7月の雇用統計は弱く、5月と6月の就業者数の伸びが大幅に下向き改定され、利下げでほぼ決着が付いたと思われた。だが7月の米生産者物価指数(PPI)は前月比で約3年ぶりの大幅上昇を示し、米関税政策の影響下でのインフレ懸念が再燃した。
こうした状況が全て重なり、今回のジャクソンホール会合は一層真剣な注目を集めることになりそうだ。
パウエル議長は先月、労働市場は堅調であり、金融政策は適切な位置にあるとの認識を示した。 FOMCの次回会合(9月16、17日開催)での利下げに道を開く小さな変化も逃すまいと、投資家は耳をすますことになるだろう。さらなる経済指標の発表がFOMC前に予定され、パウエル氏は慎重なメッセージ発信を続ける方を選ぶかもしれない。
UBSセキュリティーズのチーフ米国エコノミストのジョナサン・ピングル氏はパウエル議長について、「次回会合での政策金利引き下げを漠然と示唆するとみているが、前提条件としてデータ次第というメッセージを発するだろう。確定させるつもりがあるとは思わない」と分析した。
それでも債券市場は、利下げ再開は既に決まりと考える傾向にある。
トレーダーが 9 月の0.25ポイント利下げを織り込み始める中で、米金融政策に最も敏感な米2年国債利回りは、今月に入り急低下した。予想外に悪い7月の雇用統計が公表され、5月と6月も下向き改定されたことで、市場の利下げ観測は勢いを増し、PPIの想定外の上昇後も若干後退しただけだ。
パウエル氏が市場の見方を追認するのか、それとも次回会合までに届く新たなデータ次第で状況が変わる可能性を想起させ反論するのか、債券投資家は様子をうかがっている。さらに来年にかけての利下げの長期的軌道に関する手掛かりも探ろうとしている。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメントの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「戦略的議論では早期にスタートし、ゆっくりと進めるか、遅めに始めてより積極的に進めるかだ」と指摘する。
市場の関心はそこに集中するだろうが、パウエル氏はジャクソンホールでの講演で、今後の金利の軌道について、ごくわずかしか触れないこともあり得るだろう。
最近の米連邦準備制度の歴史で最も波乱に満ちた時期の一つを経験し、2026年5月に任期満了を迎えるパウエル議長にとって、今回はジャクソンホール会合で行う最後の講演となる。トランプ大統領は、パウエル氏のリーダーシップを厳しく批判し、解任する考えさえほのめかした。多くのFRBウォッチャーは、中央銀行の独立性に対する不吉な攻撃と受け止めた。
全てを考え併せると、今回のスピーチに退任あいさつのような雰囲気が漂うことも考えられる。ピンゲル氏は「過去の議長らはジャクソンホールの最後のスピーチで在任期間を振り返ったが、それには理由がある。自分の歴史を刻む良い機会だ」と説明した。
原題:Powell Has Reason to Hedge Jackson Hole Signal as Data Zigzags(抜粋)