大阪万博:パビリオン予約争奪戦激化、ネットも当日も「どこも無理」…協会サイトは「煩雑で取りにくい」ので : 読売新聞

 大阪・関西万博の国内パビリオンで、観覧予約が取りにくい状況が続いている。インターネットによる先着順の予約には数万人規模で希望者が殺到し、当日予約が申し込める会場内の専用端末にも長蛇の列ができる。来場者が増加傾向にある中、日本国際博覧会協会(万博協会)の予約システムの煩雑さを指摘する声もあり、パビリオン側は独自に対策に乗り出している。(土谷武嗣、小松夕夏)

「当日登録センター」にも長い列

 「待ち時間は30~60分。並んでも予約は取れないかもしれません!」。28日昼前、会場の南側にある「当日登録センター」では、スタッフが列を作る来場者に向けて声を張り上げていた。

連日、長蛇の列ができる万博会場の「当日登録センター」(28日、大阪市此花区で)=渡辺恭晃撮影

 予約枠の大半は事前のネット予約に割り当てられるが、当日用に確保しておくパビリオンもあり、センターには当日予約ができる端末が16台設置されている。

 当日予約はスマートフォンからでも可能だが、予約サイトへのアクセスが集中すると、つながりにくくなる。SNSでは、来場後、最初に登録センターに行くことを勧める投稿が拡散され、大勢が並ぶ。

 妻と訪れた東京都羽村市の男性(70)はこの日、午前11時頃から30分ほど並んだが、予約は取れなかったという。「並びながらスマホでも挑戦したが、どこも無理だった。待ち時間の少ないパビリオンを回ります」と肩を落とした。

早く来場するほど有利

 当日予約は先着順で、早く来た人ほど有利になる。会場に入るには事前に来場日と時間帯を指定しておく必要があるが、午後の来場を選んだ時点で当日予約を取るのは難しくなってしまう。午前中に来場者が集中し、入場ゲートが混雑する要因にもなっている。

 来場前のネット予約も争奪戦の様相を呈している。

 ネット予約は来場日の3か月前から抽選が2回あり、抽選に漏れても、3日前の午前0時から空き枠に先着順で申し込める。

 だが、記者が24日の空き枠を予約するため、20日午後11時半頃にサイトに接続しようとしたところ、6万人以上が待機していると表示され、1時間以上たってつながった時には、空き枠はほぼ残っていなかった。

パビリオン側は独自対策を模索

 パビリオン側もこうした状況を認識しており、対策を模索している。

主なパビリオンの入場方法

 メディアアーティストの落合陽一さんが手がける「null2(ヌルヌル)」は今月中旬、午前中に全ての予約枠が埋まるのを防ぐため、午後の部が予約できる時間帯を「正午」「2時」「5時」の3回に分けた。

 これまでも整理券を配布するなど試行錯誤しており、落合さんは自身のX(旧ツイッター)で「予約の煩雑さによって大変当日予約が取りにくい状況を 鑑(かんが) み、みんなで知恵を絞り、システム変更した」と説明した。

 こうした仕組みは、人気アニメ「機動戦士ガンダム」のパビリオンや「日本館」なども導入している。各館は、予約枠が無駄にならないよう来館が難しくなった場合は早めのキャンセルを呼びかけている。

 予約枠に限りがある以上、来場者が増えれば混雑するのは避けられない。万博協会の石毛博行事務総長は「パビリオンにも努力してもらうことで応えたい」と話し、パビリオン側に予約枠そのものを増やすよう働きかけているという。

 桜美林大の山口有次教授(テーマパーク論)は「どのテーマパークも1日で全ての人気施設を堪能できるようには設計されておらず、例えば建物の外観を中心に見て回るなど、来場者も自ら楽しむ工夫が必要だろう。一方、会期が決まっている中で予約システムを大幅に改善するのは、現実的ではない。運営側は楽しみ方の様々な実例も含め、詳細な情報を発信していくべきだ」と指摘している。

海外「タイプA」予約制少なく…42館のうち12館

 海外パビリオンでは、参加国が自前で建設する「タイプA」全42館のうち、予約制を導入しているのは12館だけだ。万博協会は「並ばない万博」を掲げて導入を促してきたが、多くの参加国が「システムが複雑」などの理由で見送った。

 自由に来館できる反面、混雑するパビリオンも多い。例えば、アメリカ館は入館までに2時間近くかかることもある。

 万博協会は、予約の要不要を色分けしたマップを公式サイトに掲載するほか、会場内でも予約なしで入れるパビリオンを掲示し、来場者の分散を図っている。

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