NTTドコモとWOWOWがタッグ、共同でコンテンツを調達・制作 過去の「NOTTV撤退経験」生かせるか注目

 提携の柱の1つは音楽ライブの強化だ。WOWOWは長年、国内外のアーティストと連携して高品質なライブ映像を制作してきた実績を持ち、ドコモはアイドル分野の音楽配信で強みを持つ。両社はこの経験を生かし、2026年1月以降、DREAMS COME TRUE、藤井フミヤ、MISIA、ATEEZ、BE:FIRSTといった人気アーティストのライブを順次放送・配信する。視聴はLeminoおよびWOWOWオンデマンドで可能となる。さらに、ドコモの料金プラン「ドコモMAX」または「ドコモポイ活MAX」でLeminoを選択した利用者を対象に、ライブチケットの先行販売や限定イベント、グッズの抽選プレゼントといった特典も用意される予定だ。

 両社はドラマ制作でも連携を強化する。WOWOWが制作した「連続ドラマW ゴールデンカムイ」に続く大型作品として、織田裕二主演の「北方謙三 水滸伝」を共同で制作し、2026年2月15日から放送・配信を開始する。LeminoとWOWOWオンデマンドの両方で視聴できる予定で、ドコモの利用者も高品質なオリジナルドラマを楽しめるようになる。また、WOWOWが手掛ける人気シリーズ「ドラマW」の話題作も、Leminoで順次配信される。

 スポーツコンテンツの分野でも両社は協力を進める。世界最高峰のプロバスケットボールリーグであるNBAや、欧州ナンバーワンのサッカークラブを決めるUEFAチャンピオンズリーグについて、両社が保有する権利の一部を相互に提供し、LeminoおよびWOWOWオンデマンドで放送・配信している。これらの取り組みにより、スポーツファンに向けた視聴体験の幅がさらに広がる見通しだ。


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 ドコモの前田義晃社長は「WOWOWとの提携によって、これまで提供できなかった音楽ライブや独創的なドラマをお届けできる。両社の強みを生かし、感動と喜びを生み出す第一歩となる」とコメントした。さらに、Leminoやdアニメストアを含むエンターテインメントの拡充を通じて、リアルとデジタルの両面で顧客体験を高めていく考えを示した。  一方、WOWOWの山本均社長は「今回の提携は、両社の映像事業の成長を加速させ、共同制作や音楽ラインアップの拡充など新たなエンターテインメント体験を生み出すもの」と述べた。通信と放送という異なるフィールドの融合により、国内の映像文化の発展を後押ししていく姿勢を強調している。

 ドコモが展開しているLeminoは月額990円で、ドコモMAXの特典として選択すれば追加料金なしで利用できる。今回の提携により、Lemino上では音楽・ドラマ・スポーツといった幅広いジャンルの作品が一層充実する見込みだ。両社は今後も新たなコンテンツ制作を共同で進め、映像配信を通じて利用者の満足度を高めることを目指す。  通信事業と放送事業、それぞれの強みを持つ2社が手を組むことで、映像配信市場の競争は一段と活発化することになりそうだ。

 昨今、携帯電話キャリアの市場では、通信サービスと動画視聴サービスを組み合わせる、いわゆる「セット売り(エンタメバンドル)」が主流となっている。顧客の「スマホで動画を見たい」というニーズに応えるため、各社は魅力的な提携プランを打ち出している。  KDDIは、動画視聴ニーズにいち早く着目し、競争で優位性を築いてきた。「auマネ活プラン+ 5G/4G ドラマ・バラエティパック」などのセットプランを提供している。auまたはUQ mobileのユーザーが世界大手のNetflixに加入した場合、毎月最大20%分のPontaポイントを還元するなど、強力なインセンティブを提供している。  楽天モバイルもこの流れに追随し、2024年10月から新料金プラン「Rakuten最強U-NEXT」の提供を開始した。これは、無制限のデータ通信と動画配信大手U-NEXTのエンタメサービス(動画見放題・電子書籍サブスクリプション)をセットにしたプランだ。月額料金は家族割引適用前が3278円、適用後が4268円となる。  このように、携帯電話市場では「通信+エンタメ」のバンドル競争が激化している。ドコモがWOWOWという独自性と定評のあるコンテンツ力を持つパートナーと連携することは、過去にドコモが有料放送事業「NOTTV」から撤退した経験を踏まえ、ニーズを捉えて事業を成長させられるのだろうか――。

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