ギャングに囲まれた父の教え アーダーン元首相が強権政治に挑む手段

インタビュー

聞き手・松山尚幹

朝日新聞のインタビューに応じたニュージーランドのアーダーン首相(当時)=2022年4月、東京都渋谷区

 世界各地で戦争やテロが続くなか、強権的なリーダーが台頭しています。一方で、ニュージーランド元首相のジャシンダ・アーダーンさん(46)は、今こそ、思いやりを持って共感を大事にする、優しいリーダーが必要だと訴えます。オンラインでのインタビューで、その思いを聞きました。

「全ての人々に奉仕」「個人攻撃はしない」 権威主義への問題提起

 ――自伝のタイトルにつけた「異なる類いの権力」とは、どのようなものでしょうか。従来のリーダーシップとはどう違いますか?

 私は政治家になった時から考えていたことがあります。それは、「共感」や「思いやり」を大切にしている政治家が、人々の信頼を得ることはできるのだろうか、という点です。「それは可能だ」と示すのが「異なる類いの権力」です。現在、権威主義的で、共感を弱さとみなし、同情は失敗につながると考えるリーダーシップのスタイルが増えています。私はそれらに疑問を投げかけたかったのです。

 ――実際の政治の現場での共感や思いやりとはどういったものでしょうか?

 まずは「私は人々に奉仕するためにいる」という価値観を明確にすることだと思います。自分に投票した人だけでなく、全ての人々に奉仕するために私たちはいます。そのため、単なる政治任期のなかで考えるのではなく、長期的な問題の解決が求められます。そのためには合意形成への努力も欠かせません。

 そして、実際にこれまでとは異なる方法で政治をすることも大事です。私は他者に奉仕するためにいるので、対立相手への個人攻撃はしないと誓いました。それは、私が信じる政治ではないからです。

 ――不確実性や危機を背景に、人々は強いリーダーを求めているようにも感じます。なぜ、いま思いやりと共感なのでしょうか?

 危機の時代には、人々により「近い」リーダーが特に重要だと考えています。私たちはニュージーランドで多くの経験をしました。イスラム教礼拝所でのテロ攻撃、火山噴火、新型コロナ。リーダーはそうした危機に対しても「近さ」がなければ、人々が何を求めているのかを完全に理解することはできません。

 そして共感は行動につながります。思いやりを突き詰めると、人々に対して感情移入するだけでは不十分で、同じことが二度と起こらないようにしたいと考えるためです。

 私たちは礼拝所がテロ攻撃された際、すべての被害者を確実にケアすると同時に、銃規制の強化にも取り組みました。テロリストを過激化させたソーシャルメディアへの対応策も求めました。つまり、人々が二度とこのような恐ろしい経験をしないように、すぐに行動したのです。

 ――強権的なリーダーの台頭をどう見ていますか。なぜ人々を引き付けているのでしょうか?

 現在、多くの強権的な政治家…

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この記事を書いた人

松山尚幹
国際報道部
専門・関心分野
外交・安全保障、政局と政策、財政税制

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