「かじったらほぼ生肉」スーパーのチキン…もし食中毒になったら店側に賠償求めるには「レシート等」だけでは足りない? “揃えるべき証拠”とは【弁護士解説】

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「フライドチキン買(こ)うたら生肉やったんやけど」--。先日、兵庫県内のスーパーで購入したチキンの加熱が不十分だったとする投稿がXで拡散され、話題となった。

投稿者によると、一口食べたところ、衣は揚がっているものの、中の肉には十分に火が通っていないように見えたという。投稿には、チキンの断面を写した写真も添えられていた。

報道によると、スーパーの運営会社が調査した結果、マニュアル通りの加熱手順が守られていなかったことが判明。保健所も客からの通報を受けて立ち入り検査を行い、火の通りが不十分な商品があったと明らかにしている。ただし、実際に商品を食べて体調不良になった客は確認されなかった。

元の投稿に対し、X上ではカンピロバクター食中毒のリスクを指摘するコメントが多く寄せられていた。

カンピロバクターは、下痢や腹痛、発熱などを引き起こす細菌で、食後1~7日程度の潜伏期間を経て症状が現れることもある。食べた直後に異常がなくても、数日後に発症するおそれがあるため注意が必要だ。

では、加熱が不十分な食品を販売し、それを飲食した客が食中毒を発症した場合、店側にはどのような法的責任が生じるのか。また、客側が治療費や慰謝料などを請求するためには、どのような証拠が必要なのか。自身も飲食店を経営した経験を持つ石﨑冬貴弁護士(法律事務所フードロイヤーズ)に聞いた。

店側は「業務上過失致傷罪」などに問われる可能性

食品の衛生管理や加熱処理について必要な注意を怠り、客に食中毒による健康被害を与えた場合、店側が刑事責任を問われる可能性がある。

具体的には、食中毒による健康被害は「傷害」とみなされるため、業務上過失致傷罪(刑法211条)が成立する可能性がある。同罪の法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金だ。

また、食品衛生法は「病原微生物に汚染されている、またはその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがある食品などの販売や調理」を禁止している(6条3号)。

加熱不十分な鶏肉を提供し、食中毒を発生させた場合、食品衛生法違反が成立して、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科される可能性がある(81条1項1号)。法人についても、両罰規定(※)により、1億円以下の罰金が科される場合がある(88条1号)。

※従業員などが業務に関して一定の違法行為をした場合、行為者本人だけでなく、事業主である法人などにも罰金刑を科す規定。

ただし、加熱不足があったという事実だけで、直ちに犯罪が成立するわけではない。具体的な食品の状態や調理状況、健康被害の有無などを踏まえ、それぞれの犯罪の成立要件を満たすかどうかが判断される。

さらに刑事責任の追及とは別に、都道府県知事などから営業許可の取消しや、営業の全部もしくは一部の禁止・停止処分などの行政処分が行われる可能性もある(食品衛生法60条)。

損害賠償の請求には「発症」と「購入・飲食」の証拠が重要

加熱不十分な料理を食べて食中毒になった場合、民法上の債務不履行(415条)や不法行為(709条)に基づいて、店側に損害賠償を請求することができる。

具体的には、以下のような損害が賠償の対象となり得る。

・治療費、初診料、検査費用、薬剤費、入院費用 ・病院への通院交通費 ・休業損害(食中毒による体調不良や入院・通院で仕事を休んだことによる減収など) ・慰謝料(入通院に伴う精神的苦痛に対する賠償) など

ただし、請求の対象となるのは、食中毒によって被った損害のうち、原因となった行為との間に相当因果関係が認められるものに限られる。

そのため、損害賠償を請求するには、食中毒を発症したことに加え、問題となった料理をその店で購入・飲食したことや、その料理が発症の原因となったことを裏付ける証拠が重要となる。具体的には、以下のような証拠が求められる。

・医師の診断書・検査結果(食中毒の診断や、便からカンピロバクターなどの病原菌が検出された事実を示す資料) ・店舗の利用・購入証明(レシート、領収書、クレジットカード・電子マネーの決済履歴など) ・保健所の調査結果や、店舗への行政指導・営業停止処分などに関する資料 ・商品の現物や写真・動画(加熱不十分な状態を撮影した写真や動画、残存物の検査結果など)

「たとえば、加熱が不十分な鶏肉を食べてカンピロバクターに感染し、食中毒を発症したことについて店側に損害賠償を請求する場合には、『カンピロバクターに感染して食中毒を発症した』ことを示す診断書や検査結果と、『その店でその料理を食べた』ことを示すレシートや写真などの証拠が必要になります」(石﨑弁護士)

発症した後に取るべき手続きは

前述した通り、カンピロバクターは通常1~7日程度の潜伏期間があり、食後すぐに症状が現れるとは限らない。食中毒は原因となった食品の特定が難しい場合もあるため、発症後は速やかに医療機関を受診するとともに、関連する記録や証拠を確保することが大切だ。

医療機関では、医師に飲食した日時や食品の種類、症状が出た時期などを具体的に説明する必要がある。便の培養検査などを受け、診断書や検査結果を取得すれば、原因菌の特定や感染状況の確認に役立つ。

また、発症前の1~7日間に食べたものについて、「いつ、誰と、何を食べたか」を整理しておこう。同じ食品を食べた人の体調や、同居家族の健康状態も確認すれば、原因となった食品を特定するうえで参考になる。

食品を購入した際のレシートや領収書、ポイントカードの履歴、クレジットカードや電子マネーの利用明細などは、購入先や日時を示す資料となる。

また、食品の現物が残っていなくても、状態を撮影した写真や動画、日時などが確認できるSNSへの投稿履歴があれば、購入・飲食の経緯を裏付ける手がかりとなる。

店側に連絡した場合は、日時や担当者の氏名、説明された内容を記録しておく。メールなどのやりとりは保存し、電話で話す際は録音しておくと、後から内容を確認できる。

また、店側への連絡と並行して、保健所にも通報・相談する。保健所の調査によって食中毒の原因や店舗の衛生管理上の問題が明らかになれば、損害賠償を請求する際の資料となる可能性がある。

なお、店側が生産物賠償責任保険(PL保険)に加入している場合、交渉の相手は保険会社の担当者となるケースもある。

店側との話し合いで解決しない場合には、裁判などの法的手続きも視野に入れ、法律の専門家である弁護士に相談しよう。損害賠償を請求できるか、どのような手続きが必要かなど、具体的な助言を受けられる。

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