マクロスコープ:意気込む高市氏を悩ませる「内憂外患」、解散時期に注目集まる
[東京 18日 ロイター] - 臨時国会が17日、閉会した。その夜に記者会見を開いた高市早苗首相は「まだまだ取り組まなきゃいけないことがいっぱいある」と、来年1月にも召集する通常国会への意気込みを語った。ただ、自民党内には日本維新の会との連立への不満が渦巻く。外交安保関連の政策や議員定数削減など重要課題も山積し、足元は「内憂外患」の様相だ。解散総選挙のタイミングにも注目が集まっており、高市政権は来年、一つの正念場を迎える。
<通常国会召集は例年より早期か>
「ちょっと遅いわね」。今年度補正予算が成立した16日、「来年の通常国会召集は1月23日までにはお願いしたい」と言う党幹部に高市氏はこう返した。通常国会は例年、1月20日前後の月曜か金曜に召集される。来年1月23日は金曜日だ。今年の召集が24日だったことを考えれば、幹部が提示した日程は理にかなかったものだった。
それを「遅い」と表現した高市氏の心中を、別の党幹部は「重要法案や課題がたくさんあり、首相はやる気満々だ。会期に余裕を持たせるためにも1月19日ごろの召集を考えているのではないか」と推し測る。
実際、取り組むべき課題は多い。自民党総裁選や維新との連立協議が続いたこともあり、臨時国会は補正予算の成立に向けた審議でほぼ日程が埋まった。維新との連立合意に盛り込まれた議員定数削減、高市氏が目指す「スパイ防止法」制定や「国家情報局」創設など、政権のカラーを示す政策の本格的な議論はこれからだ。
加えて、高市氏自身の発言をきっかけに悪化した日中関係への対応や、日本の安全保障政策に新たな道筋をつける安保関連3文書の改定、防衛装備移転3原則の運用指針が定める「5類型」の見直し議論など外交安保の重要課題も続く。通常国会で政権がより難しい舵取りを迫られるのは必至だ。
高市氏はこうした課題をカレンダーにはめ込めるよう、召集日を含めた日程を検討するとみられる。
<注目集める解散のタイミング>
ここに来て改めて永田町で注目されているのは、解散総選挙のタイミングだ。高い支持率を背景に、これまで「解散風」は折に触れて吹いてきた。自民関係者は「高市氏は『今やれば勝てる』という判断だけで解散することはないだろう」と言い、当面は来年度の税制改正や当初予算編成に集中すると見るものの、その後はいつ解散のタイミングが訪れてもおかしくないとの見方が大勢だ。
落選中の自民前衆院議員は「通常国会の冒頭解散はないだろう。春以降の選挙を想定して準備している」と話す。
解散する場合、必要になるのは「大義」だ。永田町では政権発足直後、公明党に代わって維新が連立パートナーとなったことへの賛否を問う形で解散するとの憶測がたびたび広がった。そのタイミングを逸したいま、次の大義と目されているのが議員定数の削減だ。
臨時国会では維新との連立合意に基づき、定数削減法案の提出にまではこぎつけた。一方で、性急な議論には野党のみならず自民内からも反発の声が噴出。維新関係者すら「議員の身分に関わる議論に時間がかかるのは当然だ」と漏らすほどだった。
高市氏と維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は16日に会談し、定数削減について通常国会で実現させるべく引き続き連携することで合意した。通常国会の会期は150日。腰を据えた議論も可能だ。前出の自民幹部は「定数削減で野党と折り合わなければ、高市氏はその賛否を問うという大義を掲げて解散するかもしれない」と読む。
<自民党にくすぶる維新への不満>
ただ、連立合意から2カ月ほどが経ち、自民内には維新への不満が広がり始めている。少数与党である以上、予算案や法案を通すためには他党との連携は欠かせない。一方で、維新は閣僚を出さない「閣外連立」を選び、自公連立に比べて関係は希薄だ。国会議員ではない吉村氏が代表を務めることにも、「意思疎通がうまく取れない。国会議員間で合意したことも大阪の判断で覆ってしまう」(自民幹部)との声が漏れる。
こうした不満が今後、高市氏へ向かう可能性も指摘される。ある自民参院議員は「高市さんは維新の言うことに気を遣いすぎだ。党内から政権に対する不満も出てきている」と懸念。「国民民主党の方がよほどガバナンスがしっかりしている。国民民主と連立を組む方がよかったのではないか」とまで言い切った。
多くの重要課題への対応と連立をめぐる党内外の足場固め。通常国会に向けて高市氏の前に立ちはだかる壁は高く、多い。
こうした現状に、高市氏はどう対応するのか。17日の会見で記者団から自身の政権運営について問われると、「臨時国会は経済対策最優先だったということもあるので、まだまだ取り組まなきゃいけないことがいっぱいある」とした上で、こう答えた。「こっからさらにギアを上げて、自民党総裁選で掲げた政策、維新との連立合意に掲げた政策をどんどん具体化させ、実現していくつもりだ」
(鬼原民幸 編集:橋本浩)
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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。