ゲオの「PS5レンタル」絶好調 物価高の時代に“昔のビデオレンタル屋さんスキーム”が光明に?
ゲオが2月28日に始めたPlayStation 5(以下、PS5)のレンタルサービスが好調だ。店舗によって機材の稼働率には多少の差があるものの、サービス開始1カ月時点で「およそ半数の店舗でほぼ100%稼働」しているという。全体でも約80%だそうだ。 【画像6枚あり】「ゲオあれこれレンタル」のPS5のページ。貸し出しは2プラン 「想定以上に好評です」と話すのは、ゲオのレンタル商材全般を担当するゲオ商品1課の坂井祐介マネージャー(株式会社ゲオ、ゲオ事業本部 ゲオ商品部 ゲオ商品1課)。坂井さんの部署はレンタルCDやレンタルDVDを手がけているが、動画や音楽のサブスクサービスの普及によって事業としては下火になりつつあるのは否めない。そんな状況で企画したのが、PS5本体のレンタルだった。 企画を立ち上げたのは2024年の夏ごろ。PS5の供給がようやく増えてきた一方で、値上げの話が出てきたタイミングだった。当時、PS5の標準モデルは6万6980円だったが、24年9月には7万9980円に価格改定され、消費者にとっては購入の心理的なハードルがぐんと上がった時期といえる。 「今あるレンタルの仕組みを使ってPS5の本体レンタルができないか? と検討を始めました」と坂井さん。全国には約1000店舗のゲオがあり、ゲームソフトやゲーム機本体も扱っている。そして「ゲオはPS5の買取も行っているため、メンテナンスなどのノウハウがあります。PS5レンタルを始めるにあたり、新たに人件費や教育費はかかりません。業界最安値で提供できます」。こう話すのは、坂井さんと同じ部署の塚本佑紀さんだ。 条件はそろっていた。
サービスを発表したのは2月27日。「7泊8日で980円」という料金を打ち出し、市場にもそれなりのインパクトをもって受け止められた。SNSでは「神サービス」といった言葉も見受けられるなどゲームユーザーは概ね好意的だった。 「レンタルは、もともと高価なものを安価に、自宅で楽しんで頂くためのもの。PS5レンタルも、その理念の延長線上にあります」と坂井さん。ゲオの祖業であるレンタルビデオの考え方が多分に影響しているという。 ゲオの歴史は、1986年に創業者の遠藤結城さんが愛知県豊田市にオープンした「ビデオロードショー美里店」まで遡る。80年代といえば、一般家庭にもビデオデッキが普及し始めた頃。ベータマックスとVHSが覇権を争っていた時代だ。 もちろんインターネットなど存在しないので(前身のARPAnetが大学や研究機関をつなぎ始めていた)、動画配信のサブスクなんてない。電話は固定式で、一家に一台が基本。ビデオゲームでは任天堂の「ファミリーコンピュータ」(83年発売)が一大ブームを巻き起こし、PCでは「MS-DOS」が走り始めた頃だ(81年にVer.1.0出荷開始)。 そんな時代だったから、映画は基本的に公開中に劇場で見るか、「〇〇ロードショー」といったテレビ番組で放送される時に録画するしか見る手段がなかった。ビデオテープやレーザーディスク(LD)、VHD(LDの競合規格)の映画ソフトも販売はされていたものの、高価過ぎてほぼマニア向けの商品だった。 「当時のビデオソフトは、映画1本で1万5000円とか、2万円近くするものでした。それを安価に、自宅で楽しめるようにしたのがレンタルビデオです」と坂井さん。店舗へ行けば、大量の映画ソフトの中から好きなものを選び、1泊2日や2泊3日で劇場より安い千円程度(後に数百円)で借りられた。いかに画期的なサービスだったか分かるだろう。 「時代が流れ、今また“需要はあるのに高額なもの”、つまりPS5があります」と坂井さん。多くの人が遊んでみたいと思っても高価でなかなか手が出せない。そんなゲーム機にレンタル需要を見い出した。