『モンハンワイルズ』エンドコンテンツは遊べるようになった?実績コンプ勢が改めてレビュー。改善への期待感、いまだ残る課題
みなさん、『モンスターハンターワイルズ(モンハンワイルズ)』はプレイしていますか?ありきたりな質問ですが、本作に関しては普段とは違った文脈で受け取られるかもしれません。
本作は2025年2月28日の発売から約1カ月でシリーズ過去最大となる全世界1,000万本の販売を達成した一方、一時期は1カ月以内のPC版レビューが「圧倒的不評」を記録していました。その影響か、7月末に公開された決算資料ではリリース1年以内の作品であったにもかかわらずリピート率が過去の既出タイトルと比べて低めなことが確認できます。
筆者は本シリーズの大ファンであり、本作に関してはメディア向けの先行プレイ及びレビューを担当してきただけでなく、本記事執筆時点に至るまで、実績(勲章)をコンプリートした後も遊び続けています。レビューでも高く評価しましたし、タイトルアップデート第2弾の時点では“少し批判の声が大きすぎではないか”と思う一方、“それでもやっぱり批判せざるを得ない”という感情を同時に抱いていました。
本記事ではそんな『モンハンワイルズ』に関して、筆者が寄せたGame*Sparkレビューの発売当初から、各所に調整が入った2025年8月13日のアップデート(8/13アップデート)時点までに感じた不安や不満、そして評価したい点を“エンドコンテンツ”を中心に改めて見ていきます。
なお、筆者は先行プレイ時に発売元であるカプコンからPC版レビュー用コードを提供されていますが、別途Steamで製品版を事前に予約購入済み。フルプライスで購入した顧客としての立場から出来るだけ忖度なくまとめています。
本作の発売当初、海外レビューでは高難度コンテンツの不足が指摘されており、Game*Sparkレビューでも筆者は“最終的な(難度の)上限はそこまで高くはない”と評価しました。
開発側もその点は意識していたのか、発売直前と近年の作品より早めの段階で「チャレンジングなモンスター」の追加を発表し、執筆時点では当初に実装されていた最高難度の1ランク上、星9のモンスターが実装。初期の最高難度モンスター達と比べ、体力・火力ともに高くなっているため、“チャレンジング”の謳い文句に偽りない強さです。
これに対する筆者の所感を一言にまとめると、“楽しめる範囲、でもこれからにも期待”となります。例えば本作初期の環境を見ると、攻撃中の方向転換を容易にする「集中モード」をはじめ、プレイヤーであるハンターが恩恵を受けられるシステムが存在しました。
一方、モンスター側は従来のシリーズ無印作品と比べ、平均的にモーションが少し強くなっているかも?程度。火力に関しては、当時の最高難度である星8が唯一実装されていた「アルシュベルド」がハンターを(大技+αで)二撃必殺するレベルでした。
ハンター側のシステムを活かさず戦う場合、過去作より高難度に感じる可能性はありますが、シリーズ熟練者たちからすれば歯応えが足りなかったのは想像に難くありません。そんな本作に発売後アップデートで追加された高難度モンスターたちですが、確かに強くなったものの、所々に歪さが見られる調整です。
理想値ではないものの、星8の「アルシュベルド」報酬ドロップ量の一例。「アルシュベルド」に対しこちらは限界値と思われるドロップ量。ただし体力量が多い分、狩猟にそれなりの時間がかかります。2025年6月30日に配信された無料タイトルアップデート第2弾の時点を見ると、追加された高難度(星8)モンスターの火力は全体的に前述の「アルシュベルド」と同じく二撃必殺レベルな一方、体力の方は増加傾向にあり、「ゴア・マガラ」に至っては倍近くあります。ただし、“体力の割に「アルシュベルド」と報酬量の差が少ない”という問題があり、報酬目当てで戦うプレイヤーにとっては時間効率の悪さから積極的に戦う理由がなく、少なくとも万人が納得する調整とは言えませんでした。
しかし、ここで話が変わるのが8/13アップデートです。このアップデートで星9難度が追加されましたが、モンスター間の体力バランスが変わっており、プレイヤー側の攻撃チャンスが少ない・耐久力(肉質)が高い(硬い)モンスターは低く、その逆のモンスターは高めに調整(自前の大雑把なタイム計測のほか、有志の調査を参考)。報酬量はモーション含めた攻略難度が高いモンスターほど多めになっているため、報酬目当てでも好みに応じて狩り分けられる自由度が高まりました(イベントクエストでさらなる星9モンスターの登場も予告)。
これで問題は解決……と言いたいものの、8/13アップデートで実装された星9とそれ以前の最高難度である星8には“報酬の種類が違う”という別の問題が存在します。
星5~8のモンスターには追加報酬として「アーティア武器」を生産するためのパーツを入手でき、プレイヤー側である程度ベース能力を調整できるほか、ランダムで5段階のステータス・ボーナスが付与される仕様です。“理想の武器”を作る場合、それなりに試行回数を重ねる必要があるため、本システムは発売当初のエンドコンテンツでした。
一方、8/13アップデートで追加された星9モンスターの追加報酬には“お守り”が用意されています。こちらは防具枠に装備する“護石”となっており、アプデ前はスキルが固定のものしか入手できませんでしたが、ドロップ品の“護石”にはスキルや装飾品スロットがランダムで付与されるため、新たなエンドコンテンツが追加された形です。
星9のモンスターからは“「アーティア武器」のパーツに変換できるアイテム”は入手できますが、星8と比べると効率は劣ります。また、星8まで入手できた武器・防具の生産に使う一部の素材アイテムに加え、装備にスキルを追加できる装飾品も星9モンスターからは入手できなくなっているので、これから遊ぶプレイヤーは調整に歪さの見られる星8モンスターと対峙しなければいけません。
星9モンスターが難度と報酬バランスを意識して調整されている点は開発側も明かしているため、筆者としては最終的な調整に満足しつつも、それまでの星8の方も再調整してくれれば嬉しい……と思う次第です。
ここまではモンスター側の話を中心にしましたが、プレイヤー側であるハンターならびにマルチプレイの代替となるシステム「サポートハンター」についても見ていきます。
まずプレイヤー側で武器種に関係なく影響するステータス「防御力」ですが、本作では最大強化しても前述の通り最高難度モンスターの前では二撃必殺までしかダメージを抑えられません。この点はシリーズ通して同じ傾向であるものの、そのせいで同じ問題を抱えています。
ガード性能を強化すれば1発1発は耐えられるものの、連撃にもなると削りダメージが目立つように。わかりやすい例として、本作は武器種によってガードができたり、アクションにハイパーアーマーが付与されていたりしますが、モンスターの火力が高すぎる場合、ダメージを軽減しきれず、そのままダウンしてしまうリスクがあります。そのため、前述のアクションに頼らざるを得ない武器種はモンスター相性差を感じやすくなっているというわけです。
ダメージを一定確率で軽減するスキル「精霊の加護」や素早く回復に移れるスキル「早食い」で対策できなくもありませんが、運次第で機能しなかったり、受けるダメージ自体は減らせなかったりするので、確実な方法とは言えません。
今後のアップデートでさらに強力なモンスターが登場する場合、この傾向はより先鋭化されていくことが予想できます。開発側もこの点を考慮して防具の星9モンスター追加に伴い、ゲーム後半における防具の強化可能レベルを引き上げていますが、アップデート前と比べると誤差の範囲です。
筆者としては、このままモンスターの火力と防御力を同程度のバランスに維持される場合は“まだ楽しめる”ものの、万が一モンスター側の火力の方がインフレが速くなるなら武器種の戦術の幅が狭まっていくのでは、という懸念があります。
新システム「相殺」を活かしやすくなった「ハンマー」。ハイパーアーマー中のモンスターのダメージ量が悩ましい。また、武器種に関しては執筆時点で8/13アップデートから日が浅く、検証しきれていないため全体的な話になってしまいますが、まだまだ調整・修正が必要そうな武器種はありつつも、個人的にそこまで悲観はしていません。
というのも、以前までは「ハンマー」のように大幅に改善された武器種もあれば、「片手剣」をはじめ説明も無く下方調整され、中には立ち回りに大きな影響が出た武器種もありました。
しかし、8/13アップデートに先立って公開された「ディレクターレター」では各武器種の調整意図が明記されたほか、「ユーザーの皆様が楽しまれていた立ち回りを塞いでしまったり、当初の想定よりも火力が低くなってしまう武器種がありました」と下方調整が過度であった旨も書かれています。今後、内容に不満を持つことはあれど、調整の意図は説明されることが期待できるため、少なくとも開発側とのコミュニケーション不足による理不尽感は減るでしょう。
歴戦王「ウズ・トゥナ」での一幕。狩猟完了までに「サポートハンター」は5回ダウンしました。また本作では、プレイヤーが狩りをする際にNPCを同行させられる「サポートハンター」システムが実装されていますが、最高難度においては力不足の場面が目立つ印象です。本システムはオフラインでNPCを3人参加させたり、オンラインで空いたプレイヤーの参加枠を埋めたりしてマルチプレイの代替として使える一方、モンスターにはプレイヤー数に応じて体力が増える補正が存在します。
発売当初のゲーム環境であれば採用の余地があったものの、モンスターの火力・体力ともに強力な執筆時点のエンドコンテンツでは“AIの立ち回りが弱いのかすぐにダウンする”、“モンスターの体力増加量に対して火力が低い”といった問題もあって、“採用すると余計に苦戦する”結果に繋がりがちです。
過去作に実装された同様のシステム「盟勇」はNPCの火力が低い代わりに“モンスターの体力補正がかからない”という仕様があったため、ダメージの足しにはならずとも、アイテム等によるサポートを期待してエンドコンテンツに採用する余地が十分ありました。
この問題については本作タイトルアップデート第3弾で「サポートハンター」の強化予定が告知されているので、どういった方向で改善されるかに期待されます。
フィールド「緋の森」と「油涌き谷」は特に思い印象です。細かな点も挙げると語り足りないくらいですが、最後に本作PC版で話題になりがちな最適化にも触れておきます。
本作PC版に関して、各所ではクラッシュの報告があるものの、筆者個人は運が良かったのか“明確に『モンハンワイルズ』が原因のクラッシュ”には遭遇したことがありませんでした。しかし、常にGPU使用率を含めたパフォーマンスを監視しながらプレイしていると、本作は特に“フレームタイム”(1フレームを描画するのに必要な時間)が不安定で、かつて必要・推奨スペックの高さが話題になった『Alan Wake 2』よりも動作が重い印象です。
筆者が2タイトルを遊んだ動作環境は以下の通り。型落ちのミドルハイクラスとはいえ、フルHDでは大半のゲームで困らないスペックです。
モニター解像度&リフレッシュレート:1080P 120Hz
画質:2タイトルとも推奨プリセットをベースに影などを1段階下に設定。
fps設定: 60fps制限、『モンハンワイルズ』のみフレーム生成ON
CPU: AMD Ryzen 7 5700X
メモリ:32GB
ゲームインストール先:NVMe M.2SSD
GPU: NVIDIA GeForce RTX 4070
このPCスペックは筆者が先行プレイ時より全体的にワンランク上のものであり、当時より快適にはなったものの、他ゲームと比較すると少しでもいいから軽くして欲しい……と思ってしまいます。
『モンスターハンターライズ:サンブレイク』より。PC版では一般的なゲームのように、影を装備毎に描写するオプションが用意されています。素人意見ですが、直近の無印作品『モンスターハンターライズ(モンハンライズ)』ではキャラクターの影を汎用的なものにして処理を軽減させていたり、プレイヤーが視認するまでモンスター同士が争わなかったりと、“極力なくても良い部分は徹底的に削る”調整が見られました。
一方『モンハンワイルズ』はフィールドと拠点がシームレスに繋がり、バックグラウンドでもモンスター達が互いに干渉しあっているほか、モンスターの死体が時間経過で腐敗していく仕様も存在します。世界への没入感はシリーズトップクラスですが、“ゲーム性に寄与しない要素も入れられるだけ入れている”印象があり、まずは動作の快適性重視でもう少し加減して欲しかったところです。
既に実装済みの仕様を変更するのは難しいことが予想されますが、今後のアップデートでのCPU・GPU負荷の軽減対応が告知されているため、どこまで処理が軽くなるのか注目です。
正直なところ、筆者はタイトルアップデート第2弾の時点ではそれなりに不満を抱えていたものの、8/13アップデートやそれに伴うディレクターレターで見直した部分もあります。
同アップデートはゲームをより良くする、というよりはマイナスをゼロに近づけるためのものであった印象は否めませんが、『モンハン』シリーズ自体の面白さもあって“まだ見捨てるには早い”と感じました。
“各フィールドの「アイテムBOX」設置”や“半強制的な水中戦に賛否があった「ラギアクルス」の水中戦無し版の実装”といった細かい不満への対処もしており、本記事で挙げたような改善して欲しい部分はまだありつつも、“タイトルアップデートが一通り配信される頃にはきっと直されているだろう”という期待はできます。
発売初期はエンドコンテンツ不足といったゲーム性の問題に加え、ユーザビリティや様々な仕様で過去作から不便になってしまっていた部分も多く、それらの対処に要したアップデート期間の長さも相まって本作から離れたプレイヤーは少なくないかもしれません。また、PC版に関してはゲーム自体に起因する不具合だけでなく、NVIDIAが配信したグラフィックドライバの不安定さなどの問題も同時に存在していたため、”そもそも遊ぶのに苦労している”人もいることでしょう。
まだまだ改善の余地はありますが、開発側もフィードバックレポートという形でユーザーの要望に耳を傾ける姿勢を見せているため、コンテンツの追加はもちろん、今後の対応も追っていきたいところです。