【高校野球】大阪桐蔭、履正社の「2強」を脅かすはずが...大阪学院大高の異色の指揮官が語る「うまいけど強くない」の真意(webスポルティーバ)
近くて遠い甲子園〜大阪学院大高の苦悩(前編) 大阪桐蔭と履正社の「2強」時代に終止符を打つのではないか──。
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大阪学院大高は、大阪の高校野球界に風穴を開ける存在と目されていた。 2024年春に履正社、大阪桐蔭を破って大阪制覇を成し遂げ、同年秋には近畿大会ベスト8に進出。翌春の選抜大会の選考から惜しくも漏れたものの、着実にステップを踏んでいた。 有望選手も集まるようになり、前途は洋々と思われた。だが、そこから大阪学院大高の足踏みが続いている。【勝負どころで勝てない弱さ】 2023年春に就任した辻盛英一監督は、淡々とした口調でチームの現状を語った。「今年の3年生は、私が監督になってからの1期生になります。一生懸命に練習して、野球がうまくなってくれました。でも、うまくはあっても、強くはなかった。力はあっても、ケンカは弱いという感じがありました」 うまくても、強くない。 辻盛監督は「うまさと強さは別です」と語る。高校野球の世界は、技量の高い選手を集めたチームが必ず勝つわけではない。たとえ技量は乏しくとも、勝負の際(きわ)で実力を発揮するチームが勝ち上がる。とくに野球どころの関西圏に「強いチーム」が多い印象がある。「天敵」との対戦が、大阪学院大高の弱点を浮き彫りにした。辻盛監督はため息を漏らしながら、こうつぶやく。「近大附さんと当たると、ウチはいつもイモを引いてしまうんです」 近大附はこれまで何度も大阪学院大高の行く手を阻んできた。 辻盛監督の就任以降に絞っても2023年夏、2024年秋、2025年夏、2025年秋、2026年夏と5回も対戦。2024年秋(大阪大会3位決定戦)に10対8で辛勝した以外は、すべて大阪学院大高が敗戦。今夏の大阪大会は4回戦で対戦するも、0対7の7回コールド負けを喫した。 辻盛監督は近大附に対して、「間違いなく、強いチームです」と語る。「いざという時に力を発揮できる強さがなければ、チームは勝てません。近大附さんは強いチームで、ウチはそういうチームに弱い。この夏までは『うまい野球』でしたが、この秋は『強い野球』をしようと選手に伝えています」
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【常識を覆す異色の野球哲学】 辻盛監督は以前から「大阪桐蔭や履正社を倒すのが目標ではなく、日本一が目標」と公言してきた。それだけに、甲子園に届かない現状にもどかしさが募る。一方で、全国から有望選手を集めるチームづくりには、批判的な声が向けられることもある。 今夏は練習試合を多く組み、ほとんど負けなかった。 2年前に侍ジャパンU−15代表のエース格だった林将輝が最上級生になり、投打に絶大な存在感を発揮している。北海道から進学した林をはじめ、越境入学する選手も多い。大阪学院大高に限らず、全国から選手をリクルートする手法は批判を受けやすいが、辻盛監督は「教育的価値が高い」と強調する。「いろいろと批判はあるでしょうが、東大や京大を目指す中学生が越境して進学校に行くのと同じだと思っています。わざわざ大阪学院を選んで、覚悟を決めて野球に打ち込んでいるのですから。私はええことやと思います。もちろん、地元の選手だけで甲子園を目指すチームもすばらしいですし、どちらがいい、悪いというものではない。いろんなカラーを持った高校野球チームがあっていいのかなと思うんです」 来春にはアメリカで生まれ育ったハーフの選手が入学予定だという。辻盛監督は「英語しか話せないらしいので、いい文化交流になります」と笑う。 すでに広く知れ渡っているが、辻盛監督は大手保険会社に勤務した時代、13年連続ナンバーワンの営業成績を達成した"伝説の営業マン"でもある。ベストセラーのビジネス書を刊行し、今も会社経営者として活躍している。 一流ビジネスマンとしての顔を持つ辻盛監督は、野球に対しても独自の視点を持っている。選手たちには「期待値の高い野球をやろう」と説いているという。
「私は0点、0点、5点、0点、0点......と、どこかでビッグイニングがつくれればいいと考えています。9イニングを通して、何点取れるかを考える。1点を取ることにこだわりすぎると、向こうに1点取られたら負ける野球になってしまいます」
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【甲子園を遠ざけた見えない重圧】 今秋の大阪大会は組み合わせ抽選で天敵の近大附と別ブロックに入り(近大附は3回戦で箕面学園に2対5で敗退)、大阪学院大高は初戦から盤石の戦いぶりを見せた。 ところが、思わぬ落とし穴が待っていた。10月3日の準々決勝で関西創価に0対1で敗戦。この敗戦で近畿大会への道が閉ざされ、来春の選抜出場も絶望的となった。 自信を深めつつあっただけに、落胆は大きかった。辻盛監督は「ガックリきています」と本音を明かす。「『強いチームになる』という課題は、クリアしていたと思うんです。とくに4回戦で対戦した太成学院大高は、すごく強いチームでした。警戒すべき相手にコールド(8対0)で勝てたし、打線も守備も今大会は調子がよかったんです」 ところが、関西創価戦では、序盤からチームの雰囲気が重かった。守備のうまい内野手が、普段ならありえないような送球エラーを犯した。辻盛監督が「どうした?」と尋ねると、その選手はこう答えたという。「送球は高めに浮かしてはいけないとチームで決めていたので、低く投げないといけないと思って......」 辻盛監督は「『強いチームにならないといけない』という思いが大きすぎたのかもしれない」と感じたという。打線は関西創価の先発投手・山本秀明の前に凡打を繰り返す。辻盛監督は、こんな誤算を明かしている。「関西創価さんの勝ち上がりを見ると失点数が多くて、みんな『投手力がよくないチーム』と思ってしまっていました。いざ試合をすると立ち上がりの2、3イニングで点が取れなくて、焦っていました」 強敵と警戒した太成学院大高戦では実力を発揮できたが、「打てるだろう」と構えた関西創価には後手に回ってしまった。 頼みの林も、本来の伸びやかなスイングが見られなかった。この試合は登板せず、1番・右翼で出場していたが、3回裏、一死二塁の好機ではカウント3ボールから難しいコースの球を打って一飛に倒れた。辻盛監督は「珍しく焦っていましたね」と振り返る。
4回以降も関西創価の術中にハマり、2安打完封負け。大阪学院大高は近畿大会に出場することすらかなわず、長い冬を迎えることになった。