令和7年度卒業式を挙行しました

皆さん、御卒業おめでとうございます。日本大学の教学部門を代表し、心よりお喜び申し上げます。また、本日御同席いただくことは叶いませんでしたが、オンラインで御視聴いただいております保護者の皆様にもお祝いを申し上げます。

皆さんが本学の門を叩かれたのは、長く続いたコロナ禍という暗いトンネルをようやく抜け出し、社会が少しずつ本来の姿を取り戻しはじめた頃でした。制限が徐々に緩和されていく過渡期において、戸惑いもあったことでしょう。しかし皆さんは、変化し続ける「新たな日常」に柔軟に適応し、手探りながらも自らの手で新しいキャンパスライフを創り上げてこられました。そのたくましさと適応力に対し、まずは心からの敬意を表します。

コロナ禍という未曽有の事態を経て社会のデジタル化は一気に加速し、AIや膨大なデータが社会の基盤となるSociety 5.0へと歩みを進めています。かつてないスピードで技術が進化する中、AIやデータに振り回されずに「人間中心の豊かな社会」をどう創り出すかが問われています。

本学は「自ら学び、自ら考え、自ら道をひらく」という「自主創造」を教育理念として掲げてまいりました。この理念の下、新しい時代を生き抜くために本学が定めた八つの能力の一つに、「リーダーシップ・協働力」があります。AIがどれほど進化しても、人と人とが織りなす「真のリーダーシップと協働」の価値は決して失われません。本日は、皆さんが社会へ出るにあたり、この能力について少しお話ししたいと思います。

「リーダーシップ」と聞くと、集団の先頭に立ち、旗を振って引っ張っていく姿を想像するかもしれません。しかし、複雑化する現代社会において求められるのは、決してトップに立つ形だけではありません。周囲の力を引き出し、他者を輝かせながら組織を支えるリーダーシップは、真の協働を生み出す大きな鍵であり、これは本学卒業生の強みでもあると私は考えます。

この「協働」を考えるうえで、本学の学祖である山田顕義先生の故郷、長州・山口県にまつわる歴史が、私たちに大きな示唆を与えてくれます。長州といえば、毛利元就公の「三本の矢」の教えが有名です。一本の矢では折れやすいが、三本を束ねれば決して折れることはない。これはまさに「協働力」の原点ともいえる教えです。その元就公の曽孫として生まれ、本家ではなく分家の立場から長州藩を支えたのが毛利就隆公です。就隆公は徳山藩を興し、「日向守」とも呼ばれています。現在の港区三田にかつての江戸屋敷があったことから、彼が支えた歴史の足跡は今の東京にも静かに息づいています。

関ヶ原の戦い以降、毛利家が存続の危機にあった困難な時代にあって、就隆公は表舞台に立つ立場ではありませんでした。しかし彼は、兄が治める本家の長州藩を支えるため、自ら徳山の地に独自の領地を開拓しました。分家という立場から、自らを誇示しすぎることなく、また強じんな防波堤となり、毛利家全体を目立たぬところからもしっかりと支え続けたのです。

その後の長い歴史の中で、長州藩と徳山藩の関係が常に平穏だったわけではありません。時には複雑な局面を迎え、関係が冷え込んだ時期もありました。しかし、特筆すべきは幕末です。未曽有の国難であり、まさに本学の学祖・山田顕義先生が奔走した激動の時代において、徳山藩はこれまでの立場の違いを乗り越え、長州藩と見事なまでに一致協力しました。就隆公が築いた「他者を輝かせながら組織を支える」という基盤と、毛利家に脈々と流れる「三本の矢」の精神が、数百年の時を経て、数々の困難を乗り越えた真の「協働」を生み出し、新しい時代を切り開く巨大な推進力となったと私は受け止めています。

皆さんがこれから飛び込む社会においては、異なる価値観を持つ人々と共に働くことも多くあります。時には、議論を重ねる中で立ち止まることもあるでしょう。しかし、真の協働力とは、意見の違いを恐れず、それを乗り越えて、より高い次元の目的のために団結する力です。自らが先頭に立って集団をけん引するだけでなく、他者を主役にし、最高の支援者としてチームの成果を最大化するリーダーシップもまた重要です。日本大学で学んだ皆さんには、あらゆる場面でこのような「リーダーシップ・協働力」を発揮してくださると、私は心から期待しています。

最後になりますが、これから歩む未来はVUCAとも称される予測不能な時代で、決して平坦な道ばかりではないかもしれません。それこそ、時として、崖にぶら下がるようなピンチを経験することもあるでしょう。映画やドラマでは、ピンチの場面のまま物語が終わり、結末を示さないこともよくあります。いわゆる、「クリフハンガー」と呼ばれる手法です。しかし、実社会にいる私たちは、ただ次の展開を見つめる観客ではなく、自らの手でその続きの物語を描くことができるのです。変化の激しい過渡期を柔軟に乗り越え、新しい日常を築き上げてきた皆さんならば、「自主創造」の精神で自ら道を切り拓き、時に誰かを傍らで支え、多様な仲間と協働することで、どんなピンチも必ず乗り越え、素晴らしい物語を紡いでいけると私は確信しています。

日本大学で培った誇りと絆を胸に、それぞれの立場で新しい時代を切り拓いていってください。皆さんの輝かしい未来と大いなる飛躍を心より祈念いたしまして、私の式辞といたします。

本日は、誠におめでとうございます。

令和8年3月25日日本大学学長日本大学短期大学部学長

大貫 進一郎

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