「BeReal」──若者特有の同調心理を巧みに刺激する“自己露出型サービス”の功罪
SNSに起因する情報漏えいや炎上事件は枚挙にいとまがないところだが、今年に入ってから顕著になってきたのが、「BeReal(ビーリアル)」からの情報漏えい事件である。
BeRealは2020年にサービスを開始した写真投稿型のSNSで、日本で知られるようになったのはまだコロナ禍の22年頃のことである。最初に存在を知ったのは当時高校1年生だった娘からで、「また妙なものが流行り始めたな」と危惧したことを覚えている。
若い世代には、時折自虐的とも言える自己露出系のサービスが流行する。それ以前に流行ったのは、位置情報共有アプリ「Zenly」だった。奇しくもBeRealと同じフランス発のサービスで、自分の位置情報を公開し、つながっている相手が今いる場所を確認できた。滞在時間や移動速度、スマホの充電残量まで共有される。このサービスは23年に終了している。
BeRealは、写真を共有する自己露出型のサービスだ。その特徴をまとめると、以下のようになる。
1. 写真投稿可能なタイミングは1日1回、全員に突然通知される
2. 写真は前後のカメラで同時に撮影したものに固定される
3. 写真投稿は2分以内に行わなければならない
4. 成功すれば、好きな時に追加で投稿できる
5. 遅れた場合は遅延時間が表示される
6. 撮り直しするとその回数が表示される
7. 写真の加工はできない
8. 公開範囲は友達、もしくは友達の友達
9. 投稿しないと他の人の投稿が見られない
10. 投稿した写真は24時間で消える
25年のサイバーエージェントの調査によれば、BeRealの利用者は、他のサービスに比べてZ世代(17歳~28歳)に大きく偏っており、Z世代22.8%、上世代0.8%で、その差は22.0ptもある。 また23年から過去3年間の調査でも、主要SNSがZ世代の利用率を落とす中、唯一利用が伸びているSNSであるという。
では、なぜ青年層は、BeRealにハマるのだろうか。その特徴を順に分析してみたい。
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8. 公開範囲は友達、もしくは友達の友達
公開範囲は相互に承認した友達、もしくは友達の友達に限定できる。とはいえ友達の友達なんて他人も同然なので、多くの人は友達までに設定しているものと思われる。だが実際にはそれでも写真のスクリーンショットが別のオープン型SNSへ転送され、拡散されている。これまでの炎上事件同様、信頼できるはずの友達から漏れるという構造は変わらない。
一部のSNSはスクリーンショットの通知や抑止策を講じてはいるが、スクショ自体はOSレベルの機能であるため、完全には制御できていない。究極的には、スマホ画面を別のカメラやスマホで撮影することもできてしまう。
ただスクショ制御だけが問題の本質ではない。その情報を外部に拡散するかどうかは、利用者側のモラルの問題であり、そこは切り離して考えるべきだ。
BeRealの本質は、虚飾を捨てて現実(Real)を見せ合おうというコンセプトである。だがその思想は、根本的に情報セキュリティと真っ向からぶつかる。
本来情報セキュリティ的に正しい情報公開とは、
1. 情報を整理する
2. 公開情報と非公開情報を分離する
3. 公開情報から不適切な部分を削除またはマスクする
4. 公開情報の文脈を整えて公開する
という手順を踏む。しかしBeRealはこのステップを行う猶予を与えない、または情報を整理することに対してペナルティを科すため、リアルであればあるほど情報セキュリティの常識に逆行するという宿命を背負っている。
BeRealのユーザーが圧倒的に青少年世代へ偏っているのは、ある意味、学園祭的なノリの延長線上にあるから、というだけでは説明がつかない。そこにはもう少し深い要因があるように思える。
青少年期は、心身ともに発育期にある。身体の成長は、一般的に17歳~18歳頃で一旦完成の域に達する。10代前半からこの頃までの間を思春期と呼ぶが、オーストラリアの研究によれば、現代の若者の発達を踏まえれば、10歳から24歳を思春期と定義する説(BBC NEWS JAPANの記事)も登場している。つまり精神的には、24歳ぐらいまでは成長が続いている状態と考えられる。
この説を採るならば、大卒であれば社会人2年目、短大・専門学校卒なら社会人4年目ぐらいまではまだ思春期ということになる。つまりそれぐらいまでは、何か大人では考えられないことを「やらかす」可能性があるというわけだ。
今回の情報漏えい事件では、やらかした人の年齢までは明らかになっていない。西日本シティ銀行員、仙台市の小学校教諭の漏えい事件を考えると、概ね22~24歳、精神的な幅を見てマックス26歳ぐらいと想定しても差し支えないのではないかと思われる。
思春期には「自分は何者か」を確立しようとするわけだが、これを内面に求めるのはもう少し先のことで、まずは友人関係、クラス内、サークルやクラブ、SNSなどにおける立ち位置に求めがちである。つまり「他者との関係性の中での自分のポジション」が、イコール「何者か」ということになる。
ここにBeRealのような、親しい仲間と一斉に同じことをすることを強要されるという、同調性の強いサービスが登場すると、まるで授業や部活への出席が求められているかのように錯覚する。
反対にこれに抗うには、「排除」を覚悟しなければならない。青少年にとって、自らの意思で「排除」を選択することには、それ相応の意義ある決意と覚悟が必要だ。
それがないなら、なるべく遅れないように、自分のリアルを共有して仲間と同調しようとする。そこには、「社会人じゃない、本当の自分」の存在確認がある。
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