【細江純子の直前!GⅠパドック講座 スプリンターズS】サトノレーヴ理想は530キロ前後 ルガルは周回のリズムに注目

(スプリンターズステークス、2025年9月28日 15:40、GI、中山11R、芝・右外1200m)

秋のJRA・GⅠシリーズ開幕に合わせ、ホースコラボレーター・細江純子さんが新連載『直前!GⅠパドック講座』をスタート! 有力馬のレース当日のパドックでの注目点、チェックポイントをわかりやすく解説します。初回のターゲットはスプリンターズS(28日、中山、芝1200メートル)。ぜひ馬券検討にお役立てください!

⑦サトノレーヴ 当日馬体重チェックは必須

メンタルの成長が著しいサトノレーヴ。当日最大のチェックポイントは“馬体重”だ(撮影・菅原和彦)

昨年のスプリンターズSは1番人気に支持されるも7着。当時の敗因について、「キーンランドC(1着)を使っての一戦ということで、輸送なども考え、体重を減らさないようにしていました。でも結果的に、少し大きめにつくりすぎた(552キロ)のもあったと思う」と担当の斉藤助手。次走の香港スプリント(3着)では少しカイバ食いが落ちたこともあったようですが、それとは別に意識的に絞ってマイナス15キロの537キロ。今年の高松宮記念(1着、530キロ)や香港・チェアマンズスプリントプライズ(2着、531キロ)を見ても、理想は530キロ前後に思えます。

しかも昨年は隣枠の馬がゲート内で後ろ扉を蹴っており、それに意識を取られてスタートで遅れたもよう。こればかりは他馬との関係もあり、非常に難しいところではありますが、サトノレーヴ自身、海外を経験したことで、「物事に動じない強さが備わってきた」と斉藤助手は感じており、この1年でメンタル面の成長もうかがえます。

モレイラ騎手を背に、昨年のリベンジの可能性は濃厚と思えますので、ぜひとも当日のパドックでは「馬体重チェック」をお忘れなく。

⑮ルガル 気分良さそうに同じリズムで周回

ルガル

昨年は半年の休み明けでの勝利に驚きでした。骨折明けだったことを考えても、明らかに今年の方が調整がしやすいはずですし、何よりも追い切りの動きが昨年以上。状態はいいとみます。

パドックでのポイントは、「気分良さそうに同じリズムで周回しているかどうか?」「520~530キロ台を感じさせない軽やかな歩きができているかどうか?」。あとは、この馬の持ち味が生きるのはスピードの持続性を問われる展開ゆえ、好スタートが切れるかどうか? そこが鍵な気がします。

⑥ナムラクレア 一人引きで落ち着いてテンポよく

ナムラクレア

フォトパドックを見ると、まるで別馬のような変貌ぶり。今までよりもひと回り体を大きく見せ、肩回りとトモの筋肉量が増しています。陣営が今までの1・5倍の調整を課したとコメントしていますが、その歩みが体に表れているように感じますし、年齢的にもGⅠ制覇のラストチャンスとみて調整してきた印象です。

となると当日大事なのはメンタル面。これまで同様、「一人引きで落ち着いてテンポ良く周回ができているかどうか?」「心身のバランスが取れているか?」。スタートにつながるという点も含め、そこがポイントになると思います。

⑪トウシンマカオ 馬体重増えていれば理想的

トウシンマカオ

前走の産経賞セントウルSでは中間から体を細く見せており、レースでも14キロ減でした。今回は追い切りの動きに迫力が戻っており、状態はアップしていると感じます。あとは当日のパドックで馬体重に注目。増えていれば理想的だと思います。

また何よりもこの馬の良さはスタートセンス。今回はゲートに不安のある馬も多い中、この点は武器になると思いますし、昨年は内めの枠でしたが、本質的には真ん中~外めの方がストライド的にもいいように思え、⑪番枠も好条件です。

現時点での本命はルガル ピューロ、ペアも相手候補に

さぁ本命ですが、現時点では⑮ルガルと考え、相手は上記3頭と穴候補が2頭。まずは折り合い次第ではありますが、近走のレースぶりから前半部分の我慢が利けば①ピューロマジック。もう1頭は、絶対的な逃げ馬不在という点から⑧ペアポルックスです。

★状態うんぬん覆した2020年スプリンターズS・グランアレグリア

グランアレグリア

「具合がいいから勝てるというわけでもなければ、逆に本調子ではないと思える状態でも能力の高さで全てをカバーし、勝利を手にすることがある」。それを感じさせたのが、2020年スプリンターズSのグランアレグリアでした。

レースへ向けての帰厩後、全体的に緩さがあり、正直、陣営は厳しいと思って送り出していたのです。パドックでの気配もしかり、休み明けでの距離短縮もあって案の定、スタートしての前半部分は後方2番手から。ファンも、担当の渡部助手も厳しいと思うなか、直線で次元の違う脚を見せ、大外から14頭をごぼう抜きして勝利をつかみ取りました。

そう、まさに状態うんぬんではなく、ポテンシャルの違い。それを見せつけられるとともに、前半部分で焦ることなく、馬のリズムを大切にしたルメール騎手も見事。スプリント戦でのその騎乗ぶりが次走のマイルCS制覇へとつながったようにも感じ、人馬ともに一流だからこその勝利に映りました。

■細江 純子(ほそえ・じゅんこ) 1975(昭和50)年3月12日生まれ。愛知県出身。武豊騎手に憧れ、96年にJRA初の女性騎手としてデビュー。2000年に日本人女性騎手として初の海外勝利(シンガポール)。01年の引退後はホースコラボレーターとしてさまざまなメディアで活躍し、フジテレビ『みんなのKEIBA』、関西テレビ『競馬BEAT』に出演中。Xのフォロワー数は現在22万超。

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