オクラのネバネバが、水からマイクロプラを効率よく除去する秘密兵器に?

Image: Nungning20 / Shutterstock

環境に悪いものを取り除くために環境に悪いものを使うのって、なんか違う気はします。

こうしている間にも、世界中の海や川に無数のマイクロプラスチックが流れ込んでいます。5mm以下の見えにくいプラスチックごみは、動物や植物に取り込まれ、やがて人間の体内に侵入して健康を脅かす可能性があります。

世界中の企業や政府機関、研究者がマイクロプラスチックをなんとかして環境中から取り除く方法はないものかと試行錯誤を続けています。そんななか、食卓に並ぶ食材でもあるオクラフェヌグリーク(日本ではコロハとも呼ばれる)が、マイクロプラ除去の新しい希望になるかもしれませんよ。

植物から生まれたナチュラルなプラ除去成分

テキサス州のタールトン州立大学に所属するRajani Srinivasan氏が主導する研究チームが、学術誌ACS Omegaに発表した研究結果によると、オクラとフェヌグリークに含まれる粘り気のある天然ポリマーが、合成化学物質以上のマイクロプラ除去効果を見せたとのこと。

研究チームは、スライスしたオクラのさやと、ブレンドしたフェヌグリークの種を別々の容器で水に一晩浸し、抽出された成分を乾燥させて粉末にして分析したところ、粉末には天然のポリマーである多糖が含まれていることがわかりました。

マイクロプラスチックを含む水に、オクラの粉末のみ、フェヌグリークの粉末のみ、両方を1対1の割合で混ぜた粉末を加えると、すべての条件下でプラスチックがポリマーに吸着したといいます。

効率もかなり高く、フェヌグリークのみの場合は93%オクラのみだと67%のプラスチックを1時間で除去しました。また、両方を混合させた粉末は、30分で最大70%のマイクロプラスチックを除去したそうです。

さらに、天然ポリマーは、廃水処理に使用されている市販の合成化学凝集剤であるポリアクリルアミドよりも有意に優れた性能を示したといいます。なお、1リットルの水に対し、オクラとフェヌグリークいずれかの粉末を加えた場合に、もっとも効率よくマイクロプラスチックを捕捉できたとのこと。

リアルな「現場」の水でも効果を発揮

次に、研究チームは実際のマイクロプラスチック汚染水海水・淡水・地下水)を採取し、天然ポリマーの効果を分析しました。リアルな汚染水でのマイクロプラ除去率は、水源によって異なる結果になっています。

オクラは海水に対してもっとも効果的で、80%のマイクロプラスチックを除去しました。フェヌグリークは地下水で80~90%、両方の混合物は淡水で約77%という数値を記録しました。

研究者チームは、水源によって含まれるマイクロプラスチックの種類や形状が異なるため、各天然ポリマーとの相性に差が出たのではないかと考えているそうです。

植物由来のポリマーは人間と環境への影響が小さい

この研究の重要性は、効率が良いかどうかだけではありません。現在の廃水処理で使われているポリアクリルアミドは、副産物として環境に有害な残留物を排出するリスクがあります。

一方、オクラやフェヌグリークの抽出物は生分解性があるうえに無毒なので、合成化学凝集剤よりも環境への負担が小さく、持続可能な代替手段になり得ます。

Srinivasan氏は、今回の研究結果が社会にもたらす効果について、次のように述べています。

「水処理に植物由来の抽出物を利用すれば、処理水に有毒物質を追加投入することなく、マイクロプラスチックや他の汚染物質を除去できます。そうすることによって、人々の長期的な健康リスクを低減できるのです」

この研究はまだ実験室レベルの段階ですが、今後はマイクロプラスチックの種類ごとの除去効率や、各水域での最適な処理条件など、さらに詳細な検証が進められる予定とのこと。

マイクロプラスチックやPFASが水とセットみたいになってきていますが、だれもが安全で清潔な水を安心して飲みたいと思っているはず。こういう環境負担が小さくて持続可能なソリューションは、早く実用化できるレベルになってほしいところです。

Source: American Chemical Society

Reference: Srinivasan et al. 2025 / ACS Omega

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