月面電波望遠鏡「LuSEE-Night」がもうすぐ完成へ、高感度電波分光計で宇宙暗黒時代の電波を検出可能
アメリカ・エネルギー省のブルックヘブン国立研究所が、月面に設置する電波望遠鏡「Lunar Surface Electromagnetics Experiment-Night(LuSEE-Night)」の主要機器の調達フェイズが完了したことを発表しました。打ち上げは2026年の予定です。
Scientists and Engineers Craft Radio Telescope Bound for the Moon | BNL Newsroom
https://www.bnl.gov/newsroom/news.php?a=122408Lunar Telescope Will Search for Ancient Radio Waves | BNL Newsroom https://www.bnl.gov/newsroom/news.php?a=119559 LuSEE-Nightは月の裏側に設置される予定の電波望遠鏡です。月の裏側は、14日間連続で完全な暗闇が続いたあと、14日間連続で太陽光が降り注ぐという過酷な環境にあり、気温はおよそマイナス170℃からプラス140℃まで激しく上下。さらに、宇宙放射線からもほとんど守られることがありません。
これまで1日以上機材を運用できたミッションはほとんどないというほどの環境ですが、一方で、太陽や地球からの電波干渉を受けることがなく、科学的な機会が膨大に存在しているとのこと。 特に宇宙学者が検出しようとしているのは、宇宙の奥深くに残っている、ビッグバンから約38万年後に始まった宇宙史初期の暗黒時代に発信された「Dark Ages Signal」と呼ばれる電波です。地球上からだと多くの電波干渉によって観測することが困難ですが、月の裏側からであれば観測できるのではないかと期待されています。この暗黒時代のシグナルを明らかにすることで、暗黒エネルギーの性質や宇宙自体の形成など、宇宙最大の謎についての答えが明らかになる可能性があります。 LuSEE-Nightプロジェクトはカリフォルニア大学バークレー校宇宙研究所(SSL)が主導し、ブルックヘブン国立研究所やローレンスバークレー国立研究所など、複数の機関が参加しています。科学機器の中心となるのは、ブルックヘブン国立研究所が特注で製造した高感度の電波分光計です。LuSEE-Nightのアンテナで捕捉された生の無線信号を分光計でスペクトルに変換して科学分析することで、低周波電波を感知し、月の電波天文学の実現可能性を実証できるようになるとのこと。 他の分光計では、入手可能な情報の約1%しか取得できないところを、LuSEE-Nightに搭載される分光計は、初期宇宙の電波帯域を100%の確率で受信可能なものになっているそうです。 LuSEE-NightはSSLで組み立てが進められており、2025年夏にユタ州立大学の宇宙力学研究所で環境テストが実施される予定です。その後、秋までに運び出されて、最終的には月着陸船ブルー・ゴースト2に統合される予定です。打ち上げは2026年の予定となっています。
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