超大規模絶滅を引き起こした超巨大火山の正体…そして、発生した「膨大な量の火山ガス」が引き起こした「寒冷」と、その後に起きる「真逆の現象」(佐野 貴司)

46億年にわたる地球史において、想像を絶するような超巨大噴火が何度も起こりました。そして、その巨大な火山活動が、時に何十万年もの期間で続く気候変動や海洋の酸素減少などを引き起こし、生物の大量絶滅をもたらしたと考えられています。

生命の歴史40億年間のなかで、とくに大規模な大量絶滅が5回あったとされ「ビッグ・ファイヴ」と呼ばれていますが、そのいずれにも、超巨大噴火が関わっていたと考えられています。

一方、大量絶滅は多くの生物種が姿を消す事象ですが、その後には新たな種があらわれ、結果として生物の進化につながってきたという側面もあります。つまり、地球の大規模な火山活動が、生命の進化を促してきた、という意外な側面があるのです。

生命の進化を、地球の地質活動から検証するという視点が注目を集める『超巨大噴火と生命進化』(講談社・ブルーバックス)から、注目に値するトピックをご紹介していきます。

今回は、前回の記事で解説した「ペルム紀末の大量絶滅」をもたらした環境変動の犯人を探っていきます。じつは、この絶滅でも巨大火山が関わっています。

 

*本記事は、『超巨大噴火と生命進化 地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。 

シベリアLIP

前回の記事で述べた通り、ペルム紀末の大量絶滅は地球史上で最大でした。その根本的な原因は、現在の西シベリア地域に広がる超巨大火山活動、すなわちシベリアLIPであったと推測されています。シベリアLIPは陸上に現存する火山体としては最大規模を誇ります。

シベリアLIPの分布域を図に示しました。このLIPは主にエニセイ川の東岸に広がる噴出岩や貫入岩と西シベリアリフト玄武岩類の2地域に分布しています。

シベリアLIPの分布図(クズミンらが2010年に公表した図を簡略化)

噴出岩とはマグマが地表へ噴火して固化した岩石であり、溶岩や火山砕 物をさします。火山砕物の中には火砕流堆積物、火山灰など、複数の名称でよばれる堆積物が存在します。これらは噴火の種類や侵食にともなう崖崩れなどのさまざまな堆積物の成因によって異なる名称がつけられているからです。総合名称として「テフラ」とよばれています。

一方、貫入岩とは岩脈のように地中でマグマが固化した岩石です。シベリアLIPには岩脈の他にシルとよばれる貫入岩も存在します。シルとは水平方向へ貫入している火山岩であり、垂直方向へ貫入している岩脈とは異なった名前がついています。しかし、どちらもマグマが地中で固化した貫入岩です。

これまでの地質調査により、火山灰などのテフラは噴出岩全体の10%を超えていることがわかっています。侵食を逃れた崖などとして残存している溶岩の体積は34万km³しかありませんが、西シベリアリフト玄武岩類もあわせた火山岩の総量は約400万km³と見積もられています。

さらに、2019年には北極海に近いタイミル地域に分布する火山岩もシベリアLIPの一部であることを示す論文が公表されました(図「シベリアLIPの分布図」)。そのようなわけで、シベリアLIPのサイズはもっと大きかった可能性もあります。

火山ガスの膨大な放出とその影響

火山活動による最大の環境インパクトは、火山ガスの放出です。特に爆発的噴火による火山灰をはじめとするテフラや火山ガスの上空放出は、成層圏にまで到達し、地球規模の環境変動を誘発します。シベリアLIPの噴火では、テフラが全噴出物の10%以上を占めていたことが確認されており、他のLIPと比較しても爆発的な性質を持っていたことがわかります。

噴火により放出した火山灰や火山ガスが極域で9km、赤道付近で16kmを超える高さまで上昇すると、これは世界中へ分散し、地球規模での環境変動を引き起こすと推定されています。シベリアLIPの噴火活動は北緯60°を超える極域で起きているので(図「ペルム紀末の大陸配置図で見るシベリアLIPの位置」)、高さ10km程度の高さまでの放出でも、火山灰や火山ガスが世界中にまき散らされたはずです。

ペルム紀末の大陸配置図で見るシベリアLIPの位置。その噴火活動は北緯60°を超える極域で起きている

さらに、シベリアLIPの噴火により放出された火山ガスの推定量も、ほかの火山噴火に比べて極端に多いことがわかっています。

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