ママ友誘って闇バイト「楽に稼げて、夢膨らんだ」…懲役2年の実刑判決にしばらくぼう然

 子どもが通う保育園の「ママ友」を闇バイトに誘い、電子決済サービスを不正使用し商品をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた女(33)(栃木県佐野市)に対し、名古屋地裁(蛯原意裁判官)は12日、懲役2年(求刑・懲役3年6月)の判決を言い渡した。事件は、子育て中の主婦らが容易に犯罪に手を染めてしまう闇バイトの危険性を、改めて浮き彫りにした。(大場暁登)

金欲しさに

名古屋地裁

 「『上の人間』から安心だと言われ、信じてしまった」

 女は被告人質問で、闇バイトに関わるようになった経緯を、そう説明した。

 判決によると、女は2024年8月、ママ友の女(31)らと共謀し、名古屋市や大阪市の家電量販店で、不正に入手した他人名義の決済バーコード画面をスマートフォンで表示して、店から計約140万円相当のスマホやタブレット端末などをだまし取った。

 きっかけは同年5月。X(旧ツイッター)を通じて知り合った人物から、口座売買の勧誘の“仕事”を持ちかけられた。「人付き合いが苦手で仕事が続かず、自由に使える金がなかった」と、金欲しさに応じたのが始まりだったという。

エスカレート

 当初は、SNSに「口座を買い取る」と投稿し、申し出があった人とやり取りして、「上の人間」に紹介することで報酬を得ていた。

 しかし、次第に内容はエスカレート。他人の決済用バーコード画面を不正に入手してタブレット端末などの高額商品をだまし取り、売却して利益を指定の口座に振り込む仕事をするようになった。

 ママ友を口座売買の勧誘役として誘い、自身はその上位者として指示役になった。報酬の分配も行うようになり、自身の報酬は売却額の5%、1件当たり2万円程度だったという。

判決にぼうぜん

 ママ友には3月、有罪判決が言い渡された。事件当時、4人の子を育てるシングルマザーで、4人のうち2人には障害があった。被告人質問では「子どもの世話で働きに出ることが難しく、女に相談したら、闇バイトを紹介された」と話した。

 一方、女は被告人質問で「楽に稼げるので、夢が膨らんでしまった」と述べ、「一度、実行役と連絡が途切れた時に、上の人物に『お前が代わりに金を払え』と言われ、怖くなって抜けられなくなった」とも明かした。

 この日の判決で、蛯原裁判官は「実行役に指示を与え、報酬の分配をする上位者の立場だった」と指摘。「犯行態様の悪質さや役割から、実刑は免れない」と述べると、黒いスーツ姿の女はしばらくぼうぜんとし、うつむきながら法廷を後にした。

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