障害ではない「境界知能」とは?──“闇バイト”受刑者に迫る 後先考えず「金が一気に欲しかった」 生きづらさも『every.特集』
IQ(知能指数)が平均的な人と知的障害と推定される人の狭間に位置する“境界知能”。先のことを考えるのが苦手、という特性のある人もいます。千葉県内の少年刑務所「市原青年矯正センター」で、闇バイトに加担した境界知能の受刑者たちを取材しました。
千葉県にある少年刑務所「市原青年矯正センター」。特殊詐欺事件に関わり、逮捕された20代の男性に話を聞いた。後先を考えず、闇バイトに応募したという。──なぜ闇バイトだった?受刑者A
「闇バイトしか分からなかったですね。稼げるものと言われても。(お金は)一発で一気に欲しいので」
指示役に言われるがまま、犯行に及んだという。受刑者A「新宿駅・池袋駅だったり、ターミナル駅を待機場所に指定されて(指示役から)『行け』と言われて。あとはまた連絡を待つ、待機ですね。案件が入ったら また連絡が来るんですよ。タクシーに乗って、指定された住所があって、そこに行って●●警察官を名乗って」指示役から、警察官を装うよう携帯電話で指示され、高齢者の自宅へ向かったと話す。「相手は60歳とか80歳とか、そのくらいでしたね。(被害者に)『(カードが)不正に利用されている』みたいなことを言って、(被害者は)『あ、そうですね』みたいな感じで」
「(キャッシュカードを)預かってそのまますぐ退散というか 。1~2分ぐらいで終わっちゃうので。やりとりが」
目先の金しか考えず、犯行に及んだという。だまし取った金は総額900万円。うち1割を報酬として受け取ったと明かす。──お金を手にしたときの心境は?受刑者A「『おお』みたいな。こんなものか、という感じですね」
罪を犯した受刑者Aは、IQが平均よりも低い“境界知能”だという。
知能検査で測定されたIQの割合を示したグラフ(監修=青山学院大学教育人間科学部の古荘純一教授)がある。85~115は平均的な人(約68%)で、70未満は知的障害と推定される人(約2%)。その狭間に位置するのが、境界知能だ。知的ボーダーとも呼ばれ、日本の人口の約14%、7人に1人が該当すると言われている。
闇バイトに加担した、境界知能の受刑者たち。なぜ、犯罪に手を染めていったのか。