衆院定数削減 憲政の常道に反する暴論だ

 一方的に期限を設定して、その間に与野党で改革案をまとめられなければ、問答無用で衆院の定数を削減するという。

 こんな乱暴な法案を、政権を担っている与党が提出するとは。見識を疑いたくなる。

 自民党と日本維新の会が、衆院の議員定数削減の段取りを定めたプログラム法案を提出した。

 それによると、現行定数465の「1割を目標」として、最低でも45議席を削減する。与野党各党が参加する協議会で選挙制度の見直しを含めて議論し、1年以内に結論を出せない場合には、自動的に定数を削減するという。

 具体的な削減数として、現行の小選挙区比例代表並立制を前提に、小選挙区は「25議席」、比例選は「20議席」とも明記した。

 選挙制度のあり方は民主主義の土俵である。定数も含め、与野党の幅広い合意を得て決めるべきものだ。そうした手続きを軽んじれば、立法府の権威を 貶 ( おとし ) めることになりかねない。

 自動的に定数を削減する条項は、「身を切る改革」を掲げる維新の要求で盛り込まれた。与党入りしたからといって、自分たちの思い通りに物事を進められると思ったら、大きな誤りだ。

 法案について、自民内からは「乱暴すぎる」といった反対意見が出ていた。それでも法案提出に踏み切ったのは、維新の連立離脱を避ける狙いからだろう。

 法案の内容に問題があることを分かっていながら、連立維持を優先するとは自民もふがいない。

 多党化時代を迎え、比較第1党の自民が、小政党の要求をのまなければならない場面は今後も出てくるはずだ。

 だが、多数の民意を反映しているとは言えない小政党が極端な主張を唱え、大政党を振り回し、民主主義の根幹にかかわるような重要課題の行方を左右するのは、憲政の常道に反する。

 自民と維新の危うい関係を見ていると、長年続いた自民、公明両党の連立の協力関係が政局や国会の運営にいかに注意を払っていたのかが、改めて分かる。

 そもそも衆院の定数は、人口が7000万人余だった終戦直後の466と同水準だ。人口比で見ると、他の主要国より少ない。定数を削減して国民の代表を減らすことがなぜ、改革と言えるのか。

 また国会では、現状でも多くの議員が複数の委員会を掛け持ちしている。これ以上の定数削減は、法律の制定や行政の監視といった機能に支障をきたしかねない。

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