海王星とシンクロ。ちょっと変わった動きをする天体「2020 VN40」

Image: NASA/JPL

宇宙天体オタクの皆さんにとって、2025年7月は盛りだくさんの月だったのではないでしょうか。

冥王星の彼方にある準惑星の可能性を持つ“アンモナイト”や、ベテルギウスの周囲を回る小さな相棒のような星の存在が確認されましたが、またしても珍しい遠方天体が発見されました。

海王星が10周する間に、1周だけする小さな天体

7月初め『Planetary Science Journal(惑星科学ジャーナル)』に掲載された論文にて、「LiDO(Large inclination Distant Objects)」調査チームの天文学者たちは、「2020 VN40」と名付けられた小さな遠方天体の発見を報告しました。

2020 VN40は、海王星が太陽の周りを10回公転する間に、1回だけ太陽を周回します。この小さな天体は、傾いた特異な軌道を持っており、海王星との間で軌道共鳴関係にあります。

要するにこの小さな天体は、とても遠くにあって、太陽の周りを1周するのに1,650年もかかる一方で、海王星は太陽の周りを165年で1周するということです。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの主任研究者、ローズマリー・パイク氏は…

「これは太陽系外縁部の理解における大きな一歩です。

例え非常に遠い領域であっても、海王星の影響下にある場所に天体が存在する可能性があることを示しており、太陽系がどのように進化してきたのかについての新たな手がかりを与えてくれます」

とコメントしています。

2020 VN40は変わり者

太陽系外縁起源調査によって発見されたすべての天体の軌道を示す画像。Rosemary Pike, CfA

また2020 VN40は、現在の仮説を支持する実例の1つになることから注目されています。

その仮説とは、海王星の重力が、太陽系の外側にある遠くの天体を太陽に近づくような軌道に変えてしまうことがあるというものです。太陽系の外側にある天体は「太陽系外縁天体(Trans-Neptunian Object)」と呼ばれます。海王星よりも外側の軌道を持つ小天体や準惑星のことで、2020 VN40もこれに分類されました。

海王星とシンクロしている2020 VN40の存在は、海王星の重力が遠方の天体を太陽系の内側へ引き込むという説を裏づけています。なお、この現象は他の遠方天体でも確認されています。

さらに2020 VN40の軌道はなぜか傾いており、海王星に最も近づくときに太陽にも近づきます。逆にほかの同じような天体は海王星に近づくときは、太陽から離れているのが普通です。2020 VN40、めちゃくちゃ変なやつっぽい。

「この新たな動きは、知っていると思っていた曲の中に隠されたリズムを見つけたようなものです。遠方の天体がどのように運動するのかという私たちの考え方を変えるかもしれません」

と本研究の共著者であるカリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者、ラス・ミュレイ-クレイ氏はコメントしています。

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