宇都宮でパキスタンの朝ごはん にぎやかな一軒家でいただく研究者夫婦の故郷・パンジャーブの味

インド、ネパール、バングラデシュ……、日本で出会うことが多いインド亜大陸出身の人たち。日本では普段、どんな食事をし、どんな暮らしをしているのでしょうか。インド食器・調理器具の輸入販売業を営む小林真樹さんが身近にある知られざる世界の食文化を紹介します。

ここ最近、「クマ出没」のニュースが世間をさわがせている。とりわけ今年(2026年)の夏は、連日のように報じられていたことが記憶に新しい。

「昨日から、子供たちが通う学校が休校になっています」

宇都宮市在住のパキスタン人・イクバルさんに、お宅訪問の日程確認のための電話をした時もそんな答えが返ってきた。人通りの多い商店街にまでクマが出没したのである。東京に住んでいると、まったくの他人事(ひとごと)のようにしか見ていなかったクマ出没のニュースが、にわかに身近なものとして感じられてくる。

イクバルさんと知り合ったのは、パキスタンに詳しい日本人の知人を介して参加した、とあるパキスタン人の誕生日を祝うパーティーだった。常日頃インド人やネパール人との接点が多い私だが、パキスタン人、それもお宅訪問するまでの関係性を構築出来ている人は少ない。そんな折、パキスタン人が集まりそうなイベントの報(しら)せを聞いて一も二もなく参加した。そこで出会ったのが、今回訪問するイクバルさんだった。ご家庭の台所や食生活の様子を見せてほしいというこちらのお願いを、流暢(りゅうちょう)な日本語で快諾してくれたイクバルさんと訪問日程の相談の中で出てきたのが、この「クマ出没」のニュースだったのである。

東北自動車道を北上し、静かな住宅街にある一戸建てのイクバル邸の前までたどり着くと、玄関で出迎えてくれたのはクマならぬ鶏だった。

「以前、隣に住んでいた方がたくさん飼っていたんです。その時にいただきました。必ずしも卵を毎日産むわけではないようですが(笑)」

鶏というと、卵カレーとかバターチキンカレーなどを連想してしまう私の嗜好(しこう)を見透かしたように、イクバルさんは先回りして説明してくれた。

パキスタン・パンジャーブ州ムルターン出身のイクバルさんが留学生として来日したのは2010年。留学先は東京工業大学(現・東京科学大学)で、電子化学を専攻し博士課程を修了した。一方、妻のサナさんもほぼ時を同じくして留学生として来日。留学先は東大医学部で、システム生物学・医学の博士号を取得。現在サナさんは宇都宮大学で皮膚の研究を続けていて、一方イクバルさんもまた国内の商用車メーカーでHVバッテリー(ハイブリッド車のバッテリー)の開発に携わっている。二人の難しそうな研究内容についてはさっぱりわからないが、別世界の住人であることだけは確かだ。

「二人とも同じガバメントカレッジ大学ラホール校(Government College University Lahore)の出身です」

どこで知り合いましたか?という私の質問に、イクバルさんはそう答えた。学生時代に知り合ったということは、さては恋愛結婚かと早合点したが、

「同じ大学ではあったのですが、学生時代はほとんど互いのことを知らなくて。結婚したのは卒業後、親族が開いてくれたお見合いを通じてなんです」

ラホールの風景

にぎやかな市場(アナールカリー・バザール)

お宅訪問したこの日、大学時代の同級生で、現在はカナダのトロント在住というシェヘワールさん一家もイクバルさん宅を訪問していた。せっかくの東京見物の日程を割いて、22年ぶりに再会するためイクバルさん宅にやってきた彼らと同じタイミングになってしまって恐縮したが、こうした時に決して嫌な顔ひとつせず平等に温かくもてなしてくれるのが彼らパキスタン人の美点である。

友人のシェヘワールさん一家も交えて

まずは1杯のジュースでもてなしてくれる

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