衆院選2026 きょう公示 責任ある政党見極める時

氷点下10度を下回る冷え込みの中、手作業で除雪し、掲示板を設置する作業員=北海道旭川市で2026年1月23日、横田信行撮影

 暮らしの不安が払拭(ふっしょく)されず、将来も見通せない。国際秩序は崩壊の危機にさらされている。そうした中で日本の針路を託す重要な選挙である。

 衆院選がきょう公示される。2月8日の投開票に向けて論戦が本格化する。

 高市早苗首相は通常国会冒頭での衆院解散に踏み切った。内閣支持率が高いうちに与野党が伯仲する現状を打開し、権力基盤を強化するためだ。

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 最優先課題だった2026年度予算案の審議は後回しにされた。発足わずか3カ月の政権には実績も乏しい。

 首相個人への信任に争点を矮小(わいしょう)化し、超短期決戦で「白紙委任」を求める構えだ。国民不在の独善と断じざるを得ない。

「痛み止め」では不十分

討論会に臨む(左から)共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表、中道改革連合の野田佳彦共同代表、自民党総裁の高市早苗首相、日本維新の会の藤田文武共同代表、参政党の神谷宗幣代表、れいわ新選組の大石晃子共同代表=東京都千代田区の日本記者クラブで2026年1月26日(代表撮影)

 経済低迷の長期化で格差が拡大し、物価高が追い打ちをかけた。少子高齢化と人口減少が急速に進み、財政と社会保障制度の持続性が危ぶまれている。

 ところが、与野党の公約は、目先の負担軽減など、その場しのぎの対策が目立つ。政権を担ってきた自民党まで消費税減税にかじを切り、財政規律のたがが外れたかのようだ。

 首相は食料品の消費税を2年間ゼロにすることが悲願だとし、自民公約は「検討を加速する」とした。立憲民主、公明両党による中道改革連合などの野党も、ほとんどが消費税減税を掲げる。アピール合戦の様相だが、当面の家計への「痛み止め」に過ぎない。

 本来求められるのは、経済の体温と呼ばれる物価を「適温」に戻す根本的な手立てである。円安に歯止めをかけるとともに、人材や投資の不足による供給面の制約を解消すべきだ。賃上げが物価高を招かないよう、生産性を向上させることも肝要だ。

 財政健全化も欠かせない。首相の掲げる「責任ある積極財政」が野放図な歳出拡大につながることを、市場は警戒している。

 国債や為替の「日本売り」が本格化すれば、小手先の政府介入では食い止められまい。物価高が加速し、一時的な経済対策の効果をかき消す恐れもある。

 外交・安全保障政策の再構築も急務だ。同盟を組む米国のトランプ大統領は、中露などの大国との取引を優先する一方で、同盟国に防衛力強化などの負担増を要求している。

 台湾有事を巡る首相答弁を機に中国は対日圧力を強めた。トランプ氏は日中の緊張状態から距離を置き、日米基軸路線も盤石とは言いがたい。しかし各党は、新たな状況に対応する戦略を打ち出せていない。

 保守層を意識した右派的な政策も目立つ。外国人規制強化やスパイ防止法制定などは、排外主義や人権侵害を招く懸念が指摘されている。

政治とカネも問われる

自民党70年の歴史と政治とカネを巡る問題

 歯切れの良い言葉で分断をあおり、目の前の利益を示して人気取りに走るポピュリズムと一線を画す。それが責任ある政党のあるべき姿だ。だが現実には、与野党が将来を見据えた構想を明確に提示しているとは言えない。

 直近の衆参両院選挙で自民大敗の原因となった「政治とカネ」を巡る問題も忘れてはならない。国民の信頼回復なくして、政治を前へ進めることはかなわない。

 自民は前回選から対応を一転させ、派閥裏金事件に関与した前議員らを多く公認した。比例代表との重複立候補も認めた。首相を支援する旧安倍派などが復権したためで、「みそぎは済んだ」との声も上がる。

 裏金問題の全容解明が進まない一方で、企業・団体献金の規制は先送りされた。不信を募らせる国民の感覚とはかけ離れており、反省がうかがえない。突然の選挙のどさくさに紛れて、うやむやに終わらせることは許されない。

 政治への期待が高まらず、投票率は低落傾向が続いてきた。しかも今回は厳冬期で、受験シーズンに重なる異例ずくめの選挙戦だ。多党化が進む中、与野党が入り乱れる複雑な構図に戸惑う有権者も多いだろう。

 それでも、選挙結果は今後の日本を大きく左右する。交流サイト(SNS)などのムードに流されず、中長期の視点も踏まえて冷静に見極める必要がある。

 「ベスト」の選択肢が見つからなければ熟慮のうえで「ベター」を選び、1票を投じたい。

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