地球環境にも深刻な影響。落雷による樹木の枯死が想像以上に多かった

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雷に打たれても、木は逃げられない。

記録的な猛暑が続く毎日、地球温暖化の影響を感じます。しかし、気候変動の影響を受けるのは人間だけではありません。二酸化炭素排出を抑え、バイオマスの燃料にもなる木々もまた温暖化による被害を受けているようです。

科学系ニュースサイト ScienceAlertの記事によると、落雷によって毎年3億2000万本の木が枯れているという研究結果が発表されました。

ミュンヘン工科大学の研究チームによると、毎年地表に落ちる雷の件数は2億8600万~3億2800万回。その大部分は暖かい地域、特に熱帯で発生していますが、それが徐々に温帯や涼しい地域にも広がっているのだそう。

枯死によってCO2排出も

彼らのシミュレーションでは、2004年から2023年の間、毎年3億100万~3億4000万本の木が落雷によって枯死しているそうです。

この数字には、落雷によって起きた山火事などの間接的な被害は含まれていません。あくまでも雷の直撃をくらって命を落とした樹木の数なのです。

雷というのは、1本の木に落ちたらそれでおしまいというわけではなく、かなりの伝播性があるもの。木から木へと伝わり、最初に落ちた木から150m離れた木にまで影響を及ぼしてしまいます。そのため、平均すると1回の落雷で3本の木が枯死する計算に。

これは膨大な数で、植物バイオマスの年間損失の最大2.9%を占め、10億9000万トンもの二酸化炭素を排出する計算です。

もちろん樹木を枯らす自然現象は雷だけではなく、大雨や暴風などほかの原因もあります。ただ、ScienceAlertの記事では、直径60cmを超える大木については、雷による死亡率が自然現象全体の6.9%を占めるのだそう。

被害は熱帯だけではない

さらに問題なのは、樹木を枯らす落雷の発生範囲が広がっていること。

落雷による樹木の死亡率は熱帯地方で最も高いですが、徐々に中・高緯度地域で増加しており、今後は温帯や涼しい地域の林でも、雷による枯死が増加する恐れがあると予測されています。雷の頻度が25~50%増加すると、大木の枯死が9~18%増加するのだそう。

大量の樹木が枯れてしまえば、さらに温暖化が進み、雷の発生地域が拡大する…という悪循環が起き兼ねません。正直、雷を食らって命を落とす植物がそこまで多いとは思っていませんでした。

木というのは即死するのではなく、ゆっくりと枯れていくため、実は雷が原因でした…という「隠れ落雷枯死」の木もまだまだいるかもしれません。森林の炭素収支の正確な把握のためには、新たなパラメーターとして組み込む必要があると、研究者たちは指摘しています。

私が生まれてから40余年、昨日が一番暑い日だったと記録が更新されました。この異常気象を止める術があるなら、そろそろ真剣に考えなければなりませんね。

Source: ScienceAlert

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