G7サミット、トランプ氏をなだめることが主目的に-中東情勢も課題
カナダのアルバータ州で15-17日に開催される主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、各国首脳がトランプ米大統領をなだめることが主目的となる見通しだ。中東で激化する衝突もG7の結束力を試す新たな課題となっている。
トランプ氏は2期目初の重要な国際サミットに参加するため、15日夜にアルバータ州カナナスキスに向けて出発した。他のG7首脳はトランプ氏との新たな亀裂を恐れ、ウクライナ問題や気候変動といった問題で結束を示す声明を出すことすら試みない構えだ。
先週末に始まったイスラエルによるイラン核施設への攻撃を契機とするイスラエル・イラン間の衝突についても、首脳らが一致した姿勢を示せるかどうかは不透明だ。攻撃は週末も続き、中東地域での戦争に発展する懸念が高まっている。
トランプ氏は停戦を呼びかける一方で、イスラエルの自衛を支援している。これに対し、フランスのマクロン大統領はさらなるエスカレーションを避けるよう双方に訴えている。
トランプ氏はイスラエル情勢について同盟国と対話する代わりに、G7の主要な対立国であるロシアのプーチン大統領と電話で14日に協議した。プーチン氏はウクライナとの戦争を巡ってトランプ氏をいら立たせている存在でもある。
マクロン氏は15日の記者会見で、国際的なルールを無視するプーチン氏は「いかなる形でも仲介者にはなり得ない」と述べ、中東情勢における同氏の役割を否定した。
今回の会合に参加する十数人の世界各国首脳らは、早ければ7月にも発動される可能性がある新たな米関税を回避するため、トランプ氏と会談し、貿易協定の締結を目指す予定だ。
会場が人里離れた場所にあることで、抗議活動は制限され、トランプ氏と中立の立場で対話が可能となる。ホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏の側近やメディアに囲まれずに済むという利点もある。
シンクタンク、大西洋評議会の国際経済部門トップ、ジョシュ・リプスキー氏は「このサミットで最も望ましシナリオは目立った混乱が起きないことだ」と述べる。
トランプ氏はこうしたサミットを長らく退屈なものだと捉え、しばしば各国首脳と衝突してきた。
トランプ氏が初参加したイタリアでの2017年のG7サミットでは、6人の首脳が並んで歩く中、トランプ氏だけがゴルフカートに乗って移動する姿が象徴的だった。
18年にカナダで開かれたG7では、トランプ氏が腕を組んで座り、ドイツのメルケル首相(当時)らが詰め寄る写真が話題となった。さらに、共同声明への署名を突然取り下げ、カナダのトルドー首相(当時)による関税批判に対して怒りのツイートで反撃した。
この時の写真や発言が、今回のG7にも「長い影」を落としていると、米戦略国際問題研究所(CSIS)のプログラムディレクター、ケイトリン・ウェルシュ氏は語る。「G7やG20(20カ国・地域)、他の国際会議でも、合意形成はもはや当然ではないことが示された」という。
過去の会議とは異なり、現在の首脳らはトランプ氏の機嫌を損ねず、対立を避ける方針を採っている。英国のスターマー首相、イタリアのメローニ首相、メルツ独首相、マクロン氏、カナダのカーニー首相らはいずれも、これまで無難にトランプ氏と対応してきた。G7諸国には、この姿勢を維持する意向が広がっている。
今回は、気候変動や人工知能(AI)、女性の権利推進などを巡る意見の隔たりが大きいため、共同声明は発表されず、代わりに6件程度の個別声明が出される予定だ。ウクライナ問題はその中には含まれていない。
ホワイトハウス当局者によると、米国は貿易、エネルギー輸出の拡大、AI開発をテーマに議論を進める構えだ。またドイツ当局者によると、重要鉱物における中国依存からの脱却も議題となる見通しだ。
トランプ氏は、約60カ国・地域に対し上乗せ関税として10%を課しており、7月9日までに合意に達しなければ、さらに引き上げる方針を示している。これは各国首脳にとって大きな懸念材料となっている。
日本の石破茂首相はこれまでの進展を評価しつつも、拙速な合意には慎重な姿勢を示している。日本は関税撤廃を求めており、特に自動車関税の交渉は、トランプ氏の柔軟性を測る試金石ともなっている。
原題:Trump Returns to G-7 He Loathes as Iran Crisis Intensifies (1)(抜粋)