がん患者悲痛…年15万円以上の負担増も OTC類似薬への保険適用除外 9割超「反対」

手足のケアや排泄管理のため、女性患者に処方された薬(女性提供)

市販薬と成分や効能が似た「OTC類似薬」への保険適用見直しの動きを巡り、医師や歯科医師らでつくる「全国保険医団体連合会」などは29日、患者らに行った調査結果(中間報告)を発表した。回答者の9割超が保険外しに反対し、約8割が薬代が高くなることを不安視した。

「薬代が高くなる」と懸念

調査は9~10月、がんや難病などの疾患を抱えた患者らに実施。5687人の有効回答を得た。

9割超がOTC類似薬を処方された経験があり、このうち約4割は現在も処方を受けていた。保険適用が外れることは「反対」が94・9%▽「分からない」が3・3%▽「賛成」が1・8%だった。

保険適用除外となった場合の懸念(複数回答)として、最多となったのは、「薬代が高くなる」(83・6%)。次いで、「薬が必要量用意できず症状が悪化する」(61・0%)-が続いた。

自由記述欄には患者らの切実な声が並んだ。アトピー性皮膚炎の子供を持ち、自身も治療を受ける患者は「保険を外されたら、症状を抑える自信がない」。乳がんの患者は「痛み止めの服用が必須。治療代も高額になる中、保険適用でない薬で治療を続けると子供を育てることができず、私も死にます」とつづった。

厚生労働省の社会保障審議会部会は今月、OTC類似薬への保険適用見直しに向けた議論を開始。同省は年内に方向性を取りまとめる意向だ。

この日、同省内で記者会見した難病の息子を持つ大藤朋子さんは「保険適用がなくなれば、困る方がたくさんいる。当事者の声をしっかりと聞いて、どうしていくかを決めてほしい」と訴えた。

維新が保険適用見直し掲げ

OTC類似薬への保険適用見直しは、医療費削減を掲げる日本維新の会が訴えてきた。今年6月、自民、公明、維新の3党は、早期実現を目指す方針で合意した。

一方、日常的にOTC類似薬を使う患者らは不安のまなざしを向ける。大腸がんの手術を受けた石川県の女性患者(57)もその一人だ。

女性は現在、通院で治療を続けているが、抗がん剤の副作用で手足の腫れやひび割れによる出血に悩む。歩くたび、痛みが伴うこともある。

こうした症状を和らげるため、皮膚の炎症を抑えるリンデロンVG軟膏(なんこう)(10グラム)を月4~5本、保湿効果の高いヘパリン類似物質油性クリーム(25グラム)を月3~4本使っている。排泄(はいせつ)の助けになる酸化マグネシウムの服用も必要だ。

いずれの薬も保険が適用されるため、薬代は年3万5千円ほどで済んでいる。だが、市販薬での購入になれば、負担額は年約20万円に跳ね上がる恐れがあるという。

自己判断での購入リスクも

女性は現在、抗がん剤治療費や検査費なども含め、年約20万円の医療費を支払っている。仕事をしながら病と向き合っているが、OTC類似薬が保険適用除外となり、年15万円以上の負担増に見舞われれば、「生活は苦しくなる」と話す。

心配の種は費用面ばかりではない。女性は、自己判断で薬を購入するリスクも懸念。「たくさんの薬の中から自身が抱える症状に対応できる薬を選ぶことができるのか、副作用は出ないかなどを見極めていけるのか」と不安視し、「安心して治療が続けられる環境であってほしい」と話した。(三宅陽子)

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