「中国最大の不動産企業」の破綻を予言した男のあまりに異色な経歴(ダイヤモンド・オンライン)

 ウォール・ストリート・ジャーナルの記者として中国を取材し、その後、海兵隊の情報将校となったマット・ポッティンジャー。民間人に戻った彼は、中国企業の調査に携わるなかで、急成長の裏にある国家資本主義のゆがみを目の当たりにする。恒大集団を「砂上の楼閣」と見抜いた経験は、やがてトランプ政権の対中政策にも大きな影響を与えていく。※本稿は、ジャーナリストのデイヴィッド・J・リンチ著、寺尾時彦訳『グローバリゼーションは失敗だったのか 下』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 経済紙記者と海兵隊情報将校を経て ホワイトハウス入りした変わり種  マット・ポッティンジャーはウォール・ストリート・ジャーナルを辞めたあと、海兵隊で5年間を過ごした。日本の米軍基地からイラクとアフガニスタンに情報将校として3度派遣され、その後民間人に戻った。道端に仕掛けられた爆弾をつくるタリバン部隊を捕まえた功績で青銅星章(編集部注/戦闘において英雄的、かつ名誉ある奉仕を行い、成果を挙げたアメリカ合衆国軍の兵士に授与される勲章)を受章している。  アフガニスタン戦争で、彼は直属の上官にあたるマイケル・フリン中将と再会した。大尉だったポッティンジャーは共同でまとめた報告書で、「米軍および同盟軍が活動する環境や、説得対象となる現地の人々に関する根本的な疑問に答えられていない」と指摘して、戦場における情報活動の抜本的改革を提言した。この批判的な報告書は国防総省内ではほとんど顧みられなかったが、ワシントンのシンクタンクから出版されると高い評価を得た。

 実は、この報告書はポッティンジャーが政府の政策決定に関わる未来を示唆していた。ジャーナリストから軍人へ転身した彼は、やがて型破りな新大統領のホワイトハウスでの顧問として活躍し、国家安全保障と中国問題における実績を武器に、世界第2位の経済大国に対するアメリカのアプローチの改革に大きな影響力を及ぼすことになる。 ● 中国を再訪して見えた 豊かな社会の腐ったシステム  とりわけポッティンジャーの中国政府への幻滅は、中国に対する技術的優位性を維持しようとするトランプ政権の方針を後押しした。この対中強硬路線は、2016年の大統領選後に浮上したグローバリゼーション見直しによるもので、従来型のアプローチの支持者に再考を促すとともに、ポッティンジャーやロリ・ウォラック(編集部注/弁護士。公正な貿易政策とグローバル化の是正を主張し、アメリカ経済自由化プロジェクト“American Economic Liberties Project”で、公正な貿易政策を推進する「Rethink Trade」プログラムのディレクターを務める)のような長年のアメリカの政策批判者たちに新たな可能性を開いた。当初は世界統合プロセスの一時停止でしかないと思われた動きは、過去数十年続いた従来の政策との真の決別へと発展する。  ポッティンジャーは2010年に軍の現役勤務を退き、ニューヨークに移った。その後、中国企業に対する適正評価を行う小さな調査会社、チャイナ・シックスLLCを立ち上げた。「自分の将来に迷っていた。5年間の戦闘任務から解放され、アメリカの生活に再び慣れるための助走期間とでも言おうか。つらい1年だった」と彼は語っている。  中国人ジャーナリストを雇って調査を行わせたほか、ポッティンジャーは自らも中国を何度か再訪した。そこで見た光景は彼を驚かせた。2000年代初頭の行け行けムード、中国全土が躍進期にあったときの熱狂は、国家資本主義体制の根本的欠陥への厳しい現実認識に変質していた。

ダイヤモンド・オンライン
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