黎氏有罪は「香港だけでなく日本自身の問題」 民主活動家の李伊東氏「釈放働きかけを」

人権外交を超党派で考える議員連盟の総会で香港の民主派裁判について報告する李伊東(アリック・リー)氏(中央)=19日午前、国会内(奥原慎平撮影)

東京を拠点に活動する香港の民主派団体「レイディー・リバティー香港」の李伊東(アリック・リー)代表理事が国会内で講演し、香港国家安全維持法(国安法)違反罪で香港紙・蘋果日報(リンゴ日報=廃刊)創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏に下された有罪判決の不当性について「日本の議員が海外の市民社会のメンバーに会うこと自体、相手に法的リスクを取らせる可能性が出てきた」と述べ、「もはや香港や中国だけの問題ではない。日本自身の問題になっている」と指摘した。

「言論の結果、獄中で生き延びる瀬戸際に」

李氏は「1人の高齢者が言論の結果、獄中で生き延びられるかどうか」と述べ、78歳のジミー・ライ氏の釈放に向けた日本政府の働きかけを求めた。

「人権外交を超党派で考える議員連盟」が19日に開いた総会で語った。

香港高等法院(高裁)は15日の判決で、ジミー・ライ氏に「外国勢力との結託」によって国家安全への危害を共謀した罪(国安法違反)を認定した。国際議員連盟の調べで、判決には山尾志桜里元衆院議員が36回、ルビオ米国務長官が29回、中谷元・前防衛相が5回言及されている。

李氏は「実際、ジミー・ライ氏は日本の国会議員に会ったことも日本に直接のロビー活動を行ったこともない。それでも、(中国が国際公約した2047年までの『一国二制度』の堅持など)政治的立場が一致しただけで『共謀した』と認定された」と述べた。

「極めて異例で危険な前例に」

山尾、中谷両氏は、20年6月の国安法施行を巡り、海外での人権侵害行為に制裁措置を科す「人権侵害制裁法案」の制定を目指し、国会内で周庭(アグネス・チョウ)氏ら香港の民主活動家らとは意見交換した経緯がある。

香港の周庭氏(左)とオンラインを通じて意見交換する自民党の中谷元・前防衛相(右から3人目)や当時無所属の山尾志桜里衆院議員(同2人目)=2020年6月9日、国会内(奥原慎平撮影)

李氏は、判決について「日本の議会活動が外国裁判において『犯罪構成要素』に扱われている。極めて異例で危険な前例」と述べ、日本の議会主権への間接的侵害の恐れを指摘した。

ジミー・ライ氏を巡っては20年8月に逮捕されて以降、計1800日以上拘束され、体重減少や糖尿病、心疾患が報告されている。量刑は来年1月に審理される。

李氏は、非人道的な扱いを受けた被害者救済を定めた「拷問等禁止条約」や基本的人権尊重を定めた「世界人権宣言」を挙げ、「日本が中国と自らを区別した最大の根拠は、国際法秩序へ課したコミットメントにある」と強調した。

「平和は国内向け〝スローガン〟でない」

「正義はルールを静かに守るだけではない。破られたときに守り抜く姿勢を示すことだ。見過ごせばルールは形骸化する」と述べ、日本政府に対し、ジミー・ライ氏を巡る人道的懸念と、香港市民社会と日本の国会議員の対話の正当性の提起を求めた。

その上で、「平和は国内向けのスローガンではない。国境を越え、支え続ける関係だ。日本が考えるべきは中国を刺激するかどうかではない」と述べた。

蘋果日報編集幹部の国安法違反容疑での逮捕を報じる2021年6月18日付の同紙(奥原慎平撮影)。香港市民の爆買いで大増刷され、24日付で同紙は廃刊された

レイディー・リバティー香港は19年8月に香港で創設された。民主派弾圧を受け、海外に逃れた香港人約9000人で構成されている。国安法施行を契機に拠点を東京に移した。(奥原慎平)

山尾氏36回、ルビオ氏29回、中谷氏5回…香港・黎氏有罪判決で登場

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