理論限界の40倍で急成長！ 初期宇宙のブラックホール『LID-568』【今日の宇宙画像】

【SAPOD】今日の「宇宙画像」です。soraeが過去に紹介した特徴的な画像や、各国の宇宙機関が公開した魅力的な画像、宇宙天文ファンや専門家からお寄せいただいた画像を紹介しています。（文末に元記事へのリンクがあります）

(引用元：sorae 宇宙へのポータルサイト)

こちらは、ブラックホール「LID-568」を描いた想像図です。

ビッグバンから約15億年後の宇宙に存在していたとみられるLID-568は、質量が太陽の約720万倍に達する超大質量（超巨大）ブラックホールです。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器（NIRSpec）による観測から、ブラックホールを取り巻く高温の降着円盤が強い輝きを放ち、その降着率がエディントン限界（重力と放射圧が釣り合う理論上の上限）の40倍以上に達していることが示されました。

この異常な急成長は、巨大なガス雲を短時間でのみ込む「急速降着」が起きた可能性を示しています。X線宇宙望遠鏡チャンドラが検出していたX線源の正体をウェッブが特定し、さらに降着円盤から秒速数千キロメートルで噴出するガス流（アウトフロー）も捉えられました。

初期宇宙には、誕生後わずか10億年ほどで質量が数億～数十億太陽質量に達したブラックホールが存在していたと示唆されています。LID-568は、ブラックホールが理論上の制限を超える速度で成長し得ることを裏づけ、若い宇宙で巨大なブラックホールがどのように形成されたのかを解明する重要な手がかりとなります。

エディントン限界とは？

エディントン限界（Eddington limit）とは、内側向きの重力と外側向きの放射圧が釣り合う最大光度。ブラックホールに落下する物質は高温の降着円盤から放射される電磁波の放射圧を受けるため、ブラックホールの質量降着率（すなわちブラックホールの成長速度）はエディントン限界によって制限されると考えられています。

編集／sorae編集部

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