マムダニ旋風は勝利の方程式か偶然か、民主党に迫る難題－NY市長選

4日投開票のニューヨーク市長選を控え、民主党候補のゾーラン・マムダニ氏が支持率でトップを走り続けている。共和党のみならず、民主党内の主流派やウォール街の有力者からの抵抗を受けながらも失速する気配は見えない。

　　マムダニ氏が実際に勝利すれば、民主党は再びおなじみの問いに直面することになりそうだ。マムダニ氏がニューヨークで当選できるなら、同氏のような候補が果たして他の地域でも選挙に勝てるのか。

　　パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルへの批判、警察予算の削減を主張した過去、揺るがない「民主社会主義者」としての政治的立場といった致命的とみられていた要素も、結局は大きな悪影響を招く結果にはならなかった。マムダニ氏の当選阻止を狙って富裕層が巨額の資金をつぎ込んでいるが、有権者の支持は揺らいでいない。

　　マムダニ氏（34）は有権者の最大の懸念である生活苦を重視しつつ、SNSを活用した親しみやすい発信や鋭い批判で注目を集めている。こうした中、その選挙手法は今後、民主党候補者の選挙活動において新たなモデルになり得るとの指摘も上がっている。

　　マムダニ氏の選挙運動は同氏自身に関してではなく、生活費高騰に苦しむ平均的なニューヨーカーの負担軽減に焦点を当てていると、進歩派の民主候補を支援する非営利団体「ラン・フォー・サムシング」の共同創設者、アマンダ・リットマン氏は指摘する。「マムダニ氏は有権者がなぜ自分に勝ってほしいのかとの問いに極めて明確に答えているのだ」と言う。

　　マムダニ氏が掲げる富裕層への増税や家賃値上げ凍結などを通じた労働者階級や中間層の生活費軽減策を巡っては、民主党内の政治家や関係者の間で警戒感が強まっている。ニューヨーク市の有権者に響く政策が、来年の中間選挙や2028年の大統領選で民主党を勝利に導くとは限らないとみているからだ。

　　コンサルティング会社クロスカット・ストラテジーズのケネス・ベアー最高経営責任者（CEO）は「マムダニ氏が勝利したとして、その結果を過大評価するのは民主党にとって致命傷となりかねない」と話す。こうした手法が大統領選や上院の多数派奪還へと道を開くと考えるのは危険だと言う。

　　世論調査では一貫して、マムダニ氏が前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏に対して優位を保っている。ただ、直近のキニピアック大学の調査では、マムダニ氏が10ポイントのリードを維持した一方で、世代間の分断も明らかになった。50歳未満の有権者は大差でマムダニ氏を支持する一方、50歳以上ではクオモ氏への支持が上回っている。

　　マムダニ氏は当初、ガザを巡りイスラエルを繰り返し批判してきたが、最近では発言を修正するなどトーンダウンしている。ニューヨーク市にはユダヤ系住民が多いことが念頭にあるとみられる。それでもキニピアック大の調査では、ユダヤ系有権者の過半数がクオモ氏を支持し、マムダニ氏の支持率は16%にとどまっている。

　　全米に目を向けると、4日に行われる選挙結果は民主党に複雑なメッセージを突きつけるかもしれない。ニューヨーク市長選ではマムダニ氏の進歩的な公約が有権者の心つかむ一方、ニュージャージー州とバージニア州の州知事選では、いずれも民主党中道派のマイキー・シャリル下院議員とアビゲイル・スパンバーガー前下院議員がリードしている。

アダムズ現市長（左）はクオモ氏（右）への支持を表明した