コラム:今年実質最終週の金融市場、5つのチャートで展開探る

 2025年末を前に、市場取引がフル稼働する週は今週が最後だ。写真は4月、ニューヨーク証券取引所で撮影(2025年 ロイター/Kylie Cooper)

[オーランド(米フロリダ州) 15日 ロイター] - 2025年末を前に、市場取引がフル稼働する週は今週が最後だ。しかし投資家はまだクリスマス休暇に向けて気を緩めることができない。人工知能(AI)を巡る不安や財政懸念がお祭り気分を台無しにする恐れがあるからだ。

米国株は先週、テック大手のオラクル(ORCL.N), opens new tabやブロードコム(AVGO.O), opens new tabが発表した悲観的な決算内容で痛手を受けた。AIが収益を生み出す能力に関してなお警戒が続く。

さらに米連邦準備理事会(FRB)が先週利下げを実施し、大規模な短期国債の購入プログラムを発表したにもかかわらず、長期国債の利回りは上昇しイールドカーブが米国内外で急速にスティープ化している。

こうした状況は投資家が「サンタラリー」に対する期待をあきらめるべきだと意味しているのだろうか。

以下の5つのチャートは、市場がどのような展開を見せるか示唆している。

(1)30年債利回りの急騰

世界中で長期債の利回りが急上昇している。米国の30年債利回りは先週4.8670%に達し、9月初旬以来の高水準となった。これは25年の平均値の4.77%をかなり上回っている。長期債は今や米ホワイトハウスが緩和的な財政政策で景気を過熱させようとし、FRBがハト派寄りになるという二重の見通しと向き合わなくてはならないのだ。

長期債利回りの上昇は米国だけの現象ではなく、日本、英国、オーストラリアも最近注目を浴びている。ドイツの30年債利回りは先週、11年以来の高水準に跳ね上がった。

chart

(2)イールドカーブの急激なスティープ化

米国の財政懸念とインフレ不安は部分的にトランプ大統領の貿易・税政策とFRBの政治化を反映しているが、全体的にイールドカーブがスティープ化する結果をもたらしている。2年債と30年債の利回り格差(スプレッド)は過去4年間で最も大きな水準に近づいている。

通常ならスティープ化は「正常な」経済・金融環境を示しているとされる。しかし、債券市場の長期ゾーンはFRBがインフレ対策をおろそかにしているという懸念のために打撃を受けていればそうした事情があてはまらない。

chart

(3) 銀の投機的急騰

年末にかけての投機的ブームの証拠が求めるならば、銀相場を見れば十分だ。銀は過去3週間で30%上昇した。それだけでも驚異的だが、スペクトラ・マーケッツのブレント・ドネリー氏のチャートが示す状態にはさらに驚くべきことがある。つまり、銀 1オンスの価格が米国産原油1バレルの価格を上回ったのだ。これは原油先物価格が20年4月一時的にゼロを下回った時を除けば史上初めてだ。

chart

(4)オラクルの不透明な見通し

オラクルの株価は最近、世界有数の大企業というよりも「ミーム株」のように取引されている。株価は9月に1日で36%急騰し、先週は2日間で15%下落した。このような規模の価格変動は新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)時期や08年の金融危機、ドットコム危機の時にしか見られなかった。オラクルは投資家のAIに対する広範なセンチメントを示すバロメーターになりつつあるが、現在のシグナルは芳しくない。

A chart showing year-to-date price return for Oracle stock and the S&P 500 Index

(5)人民元の上昇

米ドルは年後半にかけて堅調に推移し、ドル指数はこの期間約2%上昇した。しかし、中国人民元に対しては着実に下落している。今週に入る時点で、ドルと人民元CNY=>のクロスレートは14カ月ぶりのドル安となり、7.00元の壁が視野に入っている。

中国の貿易黒字が初めて1兆ドルを超えたことから、中国政府には人民元のさらなる大幅上昇を容認するよう圧力が高まっている。

chart

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the US again. His experience and expertise are in global markets, economics, policy, and investment. Jamie's roles across text and TV have included reporter, editor, and columnist, and he has covered key events and policymakers in several cities around the world.

関連記事: