【米国市況】株・国債上昇、30年債入札が好調-ドル一時143円台前半
12日の米金融市場では、注目されていた30年債入札が堅調な需要を集め、財政赤字の拡大で超長期国債が敬遠されるとの懸念が和らいだ。軟調なインフレ指標を受けて、米利下げ観測が強まったことも追い風となり、米国債利回りは低下。ドルが下落する一方、株式は値上がりした。
米国債
30年債入札(発行額220億ドル)後に30年債利回りは4.8%に近づいた。最高落札利回りは4.844%と、入札締め切り午後1時現在の入札前取引の利回り4.895%を下回り、需要が堅調だったことを示した。
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国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.85% -7.1 -1.44% 米10年債利回り 4.37% -5.5 -1.25% 米2年債利回り 3.91% -4.2 -1.06% 米東部時間 16時54分TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「30年債の堅調な入札結果は、外国人投資家の需要や財政赤字拡大に対する懸念はなお残るものの、高水準の利回りでは需要が依然として強いことを示している」と述べた。
米生産者物価指数(PPI)は5月も抑制されたインフレを示し、関税による消費者や企業への影響がまだ本格的に表れていないことを示唆した。PPIは前月比0.1%上昇と、エコノミスト予想の中央値0.2%上昇を下回った。
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ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「2日連続でインフレ指標が予想を下回り、連邦公開市場委員会(FOMC)には様子見の姿勢を維持する余地が生まれた」と指摘。「インフレ率が上昇しない限り、あるいはさらに良いことに低下している場合、FOMCは物価安定という責務に対し、新たな関税措置と通商交渉が年内にどれほど影響するか、さらに多くの情報を忍耐強く待つことができる」と述べた。
トランプ米大統領はインフレ鈍化の兆候がさらに示される中で米当局の利下げペースは十分ではないと、従来の主張を繰り返した。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長については、解任する意図はないとあらためて表明した。数日前にはトランプ氏は議長後任を「近く」指名すると述べていた。
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ベッセント財務長官は、共和党が主導する減税法案の赤字への影響についてはさまざまな評価があるとし、自身は10年間で借り入れが減少すると予想していると述べた。
米国株
米株式相場は反発。S&P500種株価指数は2月20日以来の高値で終えた。オラクルは過去最高値を更新した。クラウドインフラ事業について強気な見通しを示したことが好感された。イスラエルが近日中にイランに対し軍事行動を取ることを検討していると、ABCニュースが報じたため、地政学的な懸念が株式相場を圧迫する場面もあった。
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株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6045.26 23.02 0.38% ダウ工業株30種平均 42967.62 101.85 0.24% ナスダック総合指数 19662.48 46.60 0.24%トランプ大統領は国内自動車産業の保護を目的に自動車関税を引き上げる可能性を示唆した。貿易相手国・地域との摩擦を一段と高める恐れがある。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター、ステランティスの株価はいずれも下落した。
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RGAインベストメンツのリック・ガードナー氏は「株式相場は回復基調を強め、2月に記録した過去最高水準に近づいているが、株価をその水準以上に押し上げる要因は何なのかと投資家は間もなく自問するようになるかもしれない」と述べた。「次の原動力となり得る要因は、中国との通商合意や2017年の減税措置の延長、そしてインフレが引き続き緩和される中での利下げの可能性だ」と語った。
外為
外国為替市場ではドル指数が3年ぶりの水準に低下。PPIの下振れに加え、失業保険継続受給者数が2021年終盤以来の高水準に達したことで年内の利下げ観測が強まり、ドル売りが膨らんだ。関税を巡るトランプ大統領の発言で、米経済見通しに対する懸念が再燃したこともドル売り材料となった。
対ドルでの円相場は上昇。朝方の米経済指標発表後に1ドル=143円19銭まで上げた。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1200.02 -7.46 -0.62% ドル/円 ¥143.51 -¥1.05 -0.73% ユーロ/ドル $1.1587 $0.0100 0.87% 米東部時間 16時54分ドルは主要通貨に対して全面安の展開。ユーロは対ドルで2021年以来の高値を更新する一方、英ポンドは3年ぶりの高値を付けた。
ラボバンクのマクロストラテジスト、モリー・シュワルツ氏は「前日、CPIが予想を下回り、投資家センチメントの転換点となった」と指摘。「この日朝方に発表されたPPIが予想を下回ったことで、前日のCPIが示唆したインフレ鈍化シナリオが後押しされ、利回りのさらなる低下につながった」と話した。「これがドルの安値更新に必要な最後の一押しになった」と続けた。
ノムラ・インターナショナルのドミニク・バニング氏は「ドルの弱さは成長・リターン見通しの反転が原因だというのが当社の基本的な見解だ」と述べた。「労働市場の軟化や失業保険申請件数の高止まり、予想を下回ったCPIとPPIなど最近の統計は全て、この景気循環の反転の継続を示している」と語った。
さらに「投資家は米資産を大幅にオーバーウエートしてきた。特に過去2年は、米国への運用資金流入が急増した」と指摘。「この資金フローの減速、または緩やかな巻き戻しは引き続きドルを圧迫する要因となり得る」とし、「この資産配分シフトの最大の受益者はユーロと円だ」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は小反落。トランプ米政権が前日に表明した新たな関税方針や中東情勢の緊迫化を受け、様子を見極めたいとのムードが広がった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一日の値動きが2.50ドル程度だった。イスラエルの軍事行動を巡るABCニュースの報道を受け、プラス圏に浮上する場面もあった。
ヘリマ・クロフト氏らRBCキャピタル・マーケッツのアナリストは、「米国がバグダッドの大使館から不要不急の職員を全て退避させ、バーレーンとクウェートからもそうした職員の出国を認めたことは、地域における脅威の高まりを示唆している」とリポートで指摘した。
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トランプ大統領は11日夜、一方的に関税率を設定し、「今後おおよそ1週間半か2週間以内」に各国・地域に書簡を送ると述べた。これがリスク資産への投資意欲を減じさせた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比11セント(0.2%)安い1バレル=68.04ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は41セント(0.6%)下落し、69.36ドルで引けた。
金
金スポット相場は続伸。予想を下回った米PPI統計を受け、年内の利下げ観測が一段と強まったことが上げ材料となった。
この日に別途発表された米失業保険統計では、継続受給者数が2021年終盤以来の高水準に達し、失業者が新たな就職先を見つけるのに時間がかかっていることをあらためて示した。
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これらの指標発表後に米国債利回りが低下し、ドルが下落したことで、金スポット価格は一時1.3%上昇した。利息の付かない金は通常、低金利環境下で投資妙味が増す。
金は統計発表の前から、イランを巡る緊張激化に伴う逃避需要で買われていた。イスラエルはイランに対する作戦を開始する準備を整えていると、CBSニュースが11日に報じた。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比31.55ドル(0.9%)上昇し、1オンス=3386.67ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は58.70ドル(1.8%)高の3402.40ドルで引けた。
原題:Bond Rally Gains Steam on Strong $22 Billion Sale: Markets Wrap(抜粋)
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