セレブブランド全盛期 歌手 シャキーラ のヘアブランドが「科学の力」で快進撃

記事のポイント
  • 歌手シャキーラが立ち上げたヘアケアブランド「イシマ」は、科学と多様性を軸にアルタビューティと独占提携し急成長している。
  • CEOシド・カタリ氏と元ロレアル幹部ポティン氏が率いる専門チームが、多様な髪質に対応する高機能製品を開発した。
  • イシマは40カ国に展開し、複数の美容賞を受賞するなど国際的評価を獲得、計画的な拡大を進めている。

セレブリティの美容ブランドが次々とローンチしては消えていくこの業界で、イシマ(Isima)は異彩を放っている。

「セレブブランドに対する疲れが広がっているなか、当社としては、消費者を第一に考える姿勢から出発することが重要だった」と、イシマのCEOであるシド・カタリ氏はGlossyに語った。「重要なのは製品を売ることではなく、消費者のニーズに応えること。消費者に寄り添い、彼らが求めている効果や価値を的確に届けるものを生み出せば、ブランドの成功は自然とついてくる」。

コロンビアのポップス界のスーパースター、シャキーラ・メバラク氏による待望のヘアケアブランド、イシマは、7月にアルタビューティ(Ulta Beauty)との独占提携でローンチした。全店舗でフルラインを展開する。カタリ氏がGlossyに述べたところによれば、6月に発表された1200万ドル(約18億5000万円)のシリーズA資金調達、オリベ(Oribe)やロレアル(L’Oréal)出身の有力幹部を抱え、現在アルタビューティメキシコで売上をリードするなど、資金は豊富である。

「ローンチ以来、[アルタビューティ メキシコにおいて]ヘアケア部門で第1位、総合ブランドで第3位を維持しており、これは我々にとって非常に喜ばしいことだ。また、当社がさまざまな市場の消費者にどれだけの価値を提供できるのかを示している」と、カタリ氏は言う。

40カ国に展開するグローバルヘアケアブランド

イシマはD2Cサイトでも販売しており、米国以外のターゲットオーディエンスとなるラテンアメリカ全域を含む、40カ国以上に発送している

カタリ氏はイシマのチームに加わる前に、オリベに10年間勤務した。5年間はCFOとして花王グループによる買収を監督し、買収後はさらに5年間、ゼネラルマネージャーを務めた。業界筋によると、売却額は4億ドル(約616億6000万円)から4億4100万ドル(約679億8000万円)と推定されている。カタリ氏の経歴には、スキンケアブランドのジュリーク(Jurlique)、皮革製品会社のコーチ(Coach)、サーカジュエルズ(Circa Jewels)での幹部職も含まれている。

イシマはあらゆる髪のテクスチャーやタイプに合わせて設計されているが、シャキーラの髪のテクスチャーに似たウェーブやカールに適した処方とルーティンに重点を置く。「ラテン地域やラテン系移民のコミュニティには多様な髪質が存在しているが、それは世界的な消費者層の縮図でもある」とカタリ氏は語る。「イシマは多くのグローバル市場に非常に適合している」。

イシマの最高科学責任者であるアンソニー・ポティン氏は、ロレアルグループに20年間勤務した後、2022年にイシマの創業チームに加わった。「我々は、この広大なコミュニティが抱える特定の多様なニーズに対応すべく、何年にもわたって徹底的な研究と臨床試験に心血を注いできた」と同氏は述べている。

専門チームが支える高機能ヘアケアライン

ポティン氏のロレアルでの最後の役職は、ヘアケア部門バイスプレジデントおよび責任者で、レッドケン(Redken)、マトリックス(Matrix)、ピュアロジー(Pureology)、ロレアルパリ、ガルニエ(Garnier)、キャロルズドーター(Carol’s Daughter)などのブランドを担当していた。

イシマでのポティン氏のNPD(新製品開発)チームには、著名なヘアスタイリストのミルナ・ホセ氏、認定毛髪学者のヨハンナ・アマランテ氏やイアン・サリス氏、そして皮膚科医のアニー・ゴンザレス博士など、毛髪学者やスタイリスト、処方開発者が参加している。

これまでのところ、イシマの主力製品には、ペプチド配合のヘアマスク、カールクリーム、クレンジングシャンプー、保湿シャンプー、コンディショナーなどがある。ローンチ時には8種類の製品がラインナップされた。

そのラインはアルタビューティからのフィードバックも反映して開発されており、6月以降には、アリュール ベスト オブ ビューティ賞(Allure Best of Beauty Award)、ハーパーズバザー アイコン賞(Harper’s Bazaar Icon Award)、オプラビューティオーワード(Oprah Beauty O-ward)、ニュービューティ100(New Beauty 100)という4つのメディア賞を受賞している。

製品の価格は32ドル(約4900円)から42ドル(約6480円)で、すべての製品でリーピングバニー(Leaping Bunny)やビーガン協会(The Vegan Society)、ハラールの認証を取得している

製品ラインのマーケティングでは臨床試験と成分配合を強調している。マーケティングを統括するのはアンドレア・ディアコネスク氏だ。同氏はコティ(Coty)、LVMH、オリベ、エスティローダー(Estée Lauder)の元幹部として20年以上の経験がある。

イシマの1200万ドル(約18億5000万円)のシリーズA資金調達には、ステラックキャピタルパートナーズLLC(Stelac Capital Partners LLC)、LMDVキャピタル(LMDV Capital)、ノーススターVC(Northstar VC)、タレントエージェンシーのWMEが参加した。

「我々には非常に堅実な拡大戦略がある」とカタリ氏はGlossyに語った。「しかし、このブランドを消費者に適切な形で届け、その価値を実感してもらうためにも、非常に慎重かつ計画的に進めていきたいと考えている」。

[原文:How Oribe’s former GM is quietly growing a powerhouse brand with Isima]

LEXY LEBSACK(翻訳:Maya Kishida、編集:坂本凪沙)

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