国連総会、奴隷貿易や奴隷制は「最も重大な人道に対する罪」 決議を採択

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画像説明, 奴隷貿易が続く間、約1200万〜1500万人のアフリカ人が捕らえられた

ウェダエリ・チベルシ、トーマス・ナアディ BBCアフリカ(アクラ)

国連総会は25日、大西洋をまたぐ奴隷貿易が続いた時代にアフリカの多くの住民が奴隷にされたことを、「最も重大な人道に対する罪」と認定する決議案を採択した。国連によるこの動きを支援する人たちは、これがいやしと正義への道を開くことにつながると期待している。

決議案は、ガーナが提出した。採択された決議は、「最も重大な人道に対する罪」という認定を求めるとともに、国連加盟国に対して奴隷貿易についての謝罪を検討し、賠償基金へ拠出するよう呼びかけている。具体的な金額には触れていない。

決議は、賛成123票、反対3票で採択された。反対した国は、アメリカ、イスラエル、アルゼンチン。日本やイギリス、欧州連合(EU)加盟国など52カ国は棄権した。

イギリスなど複数の国は長らく、現代の政府や組織・機関は過去の過ちに対して責任を負えないとして、賠償要求を拒否してきた。国連の安全保障理事会決議と異なり、総会決議に法的拘束力はないものの、国際社会の意思を反映する重みを持つ。

「歴史が呼びかけた時に私たちは、奴隷貿易による屈辱を受けた何百万もの人々、そして今も人種差別に苦しむ人々の記憶のために、正しい行動を取ったと、記録に残そう」。ガーナのジョン・マハマ大統領は採決前、総会で演説した。

「この決議の採択は、忘却に対する防護策となる。また、奴隷制が残した永続的な傷痕に、立ち向かうものでもある」と、大統領は述べた。

これに先立ちガーナのサミュエル・オクゼト・アブラクワ外相はBBC番組に対し、「私たちは補償を求めている」と述べた。「はっきりさせておくが、アフリカ各国の指導者は、自分自身のために金銭を求めているのではない。私たちは被害者のための正義を求めており、教育基金、基金による支援、職業訓練基金を求めている」。

奴隷貿易に対する賠償を求める運動は近年、大いに勢いを増している。アフリカ連合は2025年の公式テーマを、「賠償による正義」にした。英連邦各国の首脳も、この問題についての対話を求めている。

アブラクワ外相は、この決議を通じてガーナが他国の痛みより自国の痛みを優先しているのではなく、歴史的事実を記録しているだけだともBBCに話した。

1500年から1800年にかけて、約1200万〜1500万人がアフリカで捕らえられ、アメリカ大陸へ連行され、奴隷として働かされた。旅の途中で推計200万人以上が命を落としたとされている。

ガーナが提出した決議案は、アフリカ連合とカリブ共同体が支持。奴隷制の結果として「世界中のアフリカ人およびアフリカ系の人々に影響を与える」人種的不平等や低開発が今も続いていると、決議は指摘している。

アブラクワ外相はBBCに対し、「太西洋の奴隷貿易によって何百万人もが大陸から引き離され、貧困に陥った。その結果、何世代にもわたり大勢が、社会で排除され、人種差別に苦しみ続けている」と話した。

総会では採決を前に、各国代表が同様の見解を述べた。

大西洋奴隷貿易に関わる主要国の一つだったイギリスは、何十年にもわたり何百万人もの人々に計り知れない害と苦しみを与えたことを、認識していると述べた。しかし同国のジェイムズ・カリウキ次席国連大使は総会での演説で、今回の決議案には文言や国際法の観点から問題があると指摘した。

「一連の残虐行為のどれか一つが、他よりも深刻だと見なされるべきではない」と、カリウキ氏は述べた。

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画像説明, 大西洋奴隷貿易の拠点のひとつ、エルミナ城。ガーナには奴隷貿易に使われた歴史的建造物が多く残る

アメリカのダン・ネグレア代表も、総会を前に同様の主張を展開し、自国は「当時の国際法で違法ではなかった歴史的過ちに対して、賠償の法的権利」を認めないとした。

ネグレア氏はさらに、アメリカは「歴史上の過ちを利用して、歴史上の被害者に遠いつながりのある人々や国家に、現代の資源を再分配しようとする、冷笑的な手法」に反対すると述べた。

ガーナは、大西洋奴隷貿易の主要な起点の一つとして、長年にわたり賠償を強力に支持してきた。アフリカで捕らえられて奴隷にされた何万人もが、非人間的な環境で拘束された砦(とりで)は、今も西アフリカの沿岸に残っている。

アメリカの代表は、賠償をめぐる「法的な問題」を挙げた上で、この決議が「誰が『賠償による正義』の受益者になるのか」が不明確だと指摘した。

ネグレア氏は、マハマ大統領がドナルド・トランプ米政権について「黒人の歴史抹消を正常化している」と批判したことにも反論した。

トランプ氏は大統領に復帰して以来、「反米的イデオロギー」と自ら呼ぶものについて、アメリカの文化・歴史関連機関がそれを推進していると攻撃してきた。トランプ氏の指示により、南北戦争を戦った南部連合の著名人の像復元や、フィラデルフィアの奴隷制展示の撤去などが進められている。

「こうした政策は他国政府や一部の民間機関にとって、施策のテンプレートになりつつある」と、マハマ大統領は24日に発言した。

しかしネグレア氏は、トランプ大統領について、「他のどの大統領よりも、黒人のアメリカ人のために尽くしてきた」と主張。「(トランプ氏は)彼らのために昼夜を問わず働き、我が国をかつてないほど偉大にしようとしている」と述べた。

総会決議はまた、植民地時代に盗まれた文化財を原産国へ返還することも求めている。

アブラクワ外相はこれについて、「私たちの伝統、私たちの文化、私たちの精神性を象徴する、略奪されたすべての文化財の返還を、私たちは求める」と強調した。

「何世紀にもわたり、植民地時代にかけて持ち去られたすべての文化財は、返還されるべきだ」

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