PayPay、ついに海外利用に対応 9月下旬から韓国で「いつものPayPay」
PayPayは、9月下旬以降から「海外支払いモード」を追加し、まずは韓国からスタートする。Alipay+加盟店で、PayPayの決済ができるほか、個人間送金や残高チャージなどPayPayの主要機能を海外でも利用可能になる。
海外支払いモードは、日本人出国者数ランキング1位の韓国から開始。海外で決済した場合も日本国内と同様にPayPayポイントが付与される。
決済方法は店舗側がPayPayのコードを読み取る「ストアスキャン方式」(バーコード/QR)と、ユーザーが店舗のQRを読み取る「ユーザースキャン方式」の両方に対応。海外での支払いは日本円と現地通貨での残高を表示する。決済履歴や支払い方法の切り替え、利用可能額の設定などに対応する。
為替レートもPayPayアプリで確認できる。為替手数料は3.5%(税抜)で、「国内で両替するよりは安いが、海外で両替するより少し高いぐらい」(PayPay 執行役員 金融事業統括本部 金融戦略本部長 柳瀬 将良氏)としている。
本人確認済みのPayPayユーザーが、韓国に到着すると自動的に「韓国モード」に切り替わり、Alipay+のネットワークの店舗でPayPayの支払いが可能となる。支払い店舗は、コンビニや百貨店、交通、飲食、美容など、200万店舗以上が対応する。今後、レジ脇のAlipay+のQRコードにPayPayのロゴ(アクセプタンスマーク)も追加し、日本からの観光客が「PayPayが使える」とわかるようにしていく。
海外モードでは、残高払いのほか、PayPayカード払いにも対応。海外においても銀行からの残高チャージが行なえ、あといくら現地通貨で残っているかもひと目でわかるようになっている。
支払い画面では、「Alipay+で支払います」を韓国語で翻訳したメッセージも表示可能で、韓国語がわからなくても、店舗にAlipay+(PayPay)で支払うことを伝えられる。なお、店舗での支払時には日本と同様に「ペイペイ!」の音がなる。使い慣れたPayPayアプリで、残高や利用金額がすぐにわかる点も海外支払いモードの特徴で、「国内での利用体験そのまま」に、韓国で使えるようにした。
韓国から対応開始したのは、日本からの渡航者が最も多い国であり、ニーズが高いこと。また、韓国のキャッシュレス比率は94%と非常に高いこともあり、PayPayの利便性を発揮できるとした。さらに明洞屋台など、カードが使えない観光地でもAlipay+のネットワークでPayPayが利用できることから、「韓国にはPayPayとPayPayカードをもって出かけてほしい」と説明した。
なお、海外利用できるのは「本人確認済み(eKYC済み)」のユーザーのみ。本人確認済みのPayPayユーザーは、25年6月末時点で3,600万人。また、ECなどのオンラインには対応せずに、実店舗決済のみの対応となる。
PayPay 執行役員 金融事業統括本部の柳瀬 将良 金融戦略本部長は、訪日客向けに成功したPayPayの取り組みを日本の利用者にも提供したいと、「海外支払いモード」の取り組みについて説明。インバウンド向けで培ったノウハウを、海外支払い(アウトバウンド)向けに多く活用できたという。
2024年度の訪日客は3,700万人を超え、コロナ禍以前を超える水準に達しており、PayPayのインバウンド消費も過去最高となっている。2024年度は19年度の3倍以上に成長しており、対応サービスは25年度時点で26まで拡大した。この取り組みは、Alipay+とHIVEXとの提携により実現されている。
この成功の裏には、観光客が「自国の決済サービス」で、PayPay加盟店での決済ができるため、新たにアプリを入れたりせずに、自分の国とほぼ同じ決済体験ができることにあるという。
例えば台湾の「玉山Wallet」は、アプリ画面のトップからPayPayを誘導しているほか、ビックカメラなどの店舗と連携したキャンペーンを実施している。また、台湾のPX Pay Plusのようにアプリ内にPayPayを組み込み、日本に到着したら「日本モード」に切り替わるサービスもある。26の海外決済サービスがPayPayに対応しているが、成功しているのは「ユーザー目線に最適化されたサービス」(柳瀬氏)だという。
海外ユーザーに利便性を提供できてきたPayPayだが、一方で、PayPayを持って海外に向かう「アウトバウンド」はこれまで実現できていなかった。規制等の課題だけでなく、インバウンドの経験から「単に対応しただけでは使われないとわかっていた」という。そのため、今回の韓国対応ではAlipay+や現地のパートナーと協力し、韓国に到着すると自動的に「韓国モード」に切り替わるようにするなど、韓国で使いやすくするための多くの機能を新たに開発している。
これにより、現地通貨(ウォン)でもシームレスにPayPayを扱えるほか、個人間の送金なども可能にするなど「いつもと変わらないPayPay体験」を実現できるようにした。なお、韓国モードではオフラインモード(通信電波が弱いときにオフラインで決済を実行)には対応しない。また、決済上限などについては開始時に案内予定としている。
加盟店やアクワイアラーなどのパートナーにも配慮。支払画面は、韓国語で加盟店向けのメッセージを表示する形とした。
また、日本のクレジットカード事業では、インバウンドの利用増加により、カード決済処理を行なうアクワイアラが、カード発行会社(イシュア)に支払う手数料が増加。「インバウンドが拡大するとアクワイアラが赤字」になるといった問題が指摘されている。PayPayでは、加盟店やネットワーク、イシュアへの支払いを抑えており、アクワイアラが赤字にならない事業構造になっているため、アクワイアラが積極的に店舗開拓できるようにした。こうした準備をしたうえではじめて、海外でのPayPay利用を拡大できると柳瀬氏は説明する。
また、9月には韓国観光公社と、訪韓日本人観光客のPayPay消費拡大に向けた基本合意書を締結。今後マーケティングキャンペーンなどでも協力していく。
今後は韓国だけでなく、海外展開を強化していくが、国や地域の数を追うのではなく、PayPayを「使える環境」を整備しながら展開を進めていく方針。そのため、日本人観光客が多い、台湾、ハワイ、中国などは候補にはなっているが、いつまでに何カ国といった目標は掲げていない。