イスラム系住民による児童見守りに「誹謗中傷」やまず 「『お前たちには関係ない』は悲しい」 地域社会は「外国人差別」にどう立ち向かうのか

写真はイメージ/gettyimages(AERA DIGITAL)

 千葉県市川市のイスラム系住民でつくる自主防犯団体が小学校周辺の見守り活動を始めた。初回から1カ月足らずで、市役所には全国から誹謗中傷や一方的な抗議が相次いだという。何が起こっているのか。

【写真】多国籍の子どもたちが遊ぶ公園。地元では日常の風景なのに

*   *   *■「宗教など捨てるべき」 千葉県市川市の行徳地区。10月18日、自主防犯団体「ヒラー・マスジド会」リーダーを務める宮澤アブドッラさん(56)のスマホが鳴った。 相手は何事かをまくしたてている。宮澤さんを「お前」と呼び、差別的な発言を繰り返した。「日本で暮らすなら宗教を捨てるべきだ」「イスラム教徒に見守り活動などさせられない」 宮澤さんは辛抱強く、暴言に論拠がないことを伝え、否定していく。 熊本県在住だという相手との通話は、約20分に及んだ。「お前たちはテロリストにしか見えない」という相手の決めつけに、宮澤さんはこう言った。「それはヘイトですよ」■電話やメールが1日に十数件 いま、宮澤さんのもとには、電話やメールが1日に十数件届くという。その多くは誹謗中傷や一方的な苦言だ。 きっかけは、「ヒラー・マスジド会」がはじめた小学校周辺の見守り活動だ。「長年、この町のみなさんにお世話になってきました。見守りをする人が高齢になり、若い人も少ない。私たちにも責任があると思ったのです」 そんな思いから、見守り活動を始めたのは9月18日のことだ。モスクに通う人たちが行徳警察署員とともに、小学校周辺を歩いた。 この見守り活動を10月11日に地元紙が報じると、Xが荒れたのだ。〈小学校周辺をウロウロして「地域貢献」って……子供は怖いだろ〉〈外国人犯罪者(原文ママ)の下見させて、子供達を危険に晒してどうする〉〈こんなのやられたら子供達の顔、名前、移動ルート、全部把握されてしまう〉■極力電話に出る理由 

 SNS上のみならず、宮澤さんのスマホにも、知らない人から着信が相次ぐようになった。はたで聞いていて控えめに言っても、ひどい内容だ。宮澤さんは平日は働いているが、勤務中にも容赦なく着信音は鳴るという。宮澤さんは電話には極力出るという。「対応しておかないと、いつまでもかけてくる」からだ。


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■「お前たちには関係ない」は悲しい それでも、毎日のように悪意や根拠のない誹謗中傷と向き合わなければならない状況が、ストレスにならないわけがない。心配になって尋ねると、宮澤さんはしっかりした口調でこう言った。「大丈夫です。モスクで長年、子どもたちに教えてきたので、ストレスの扱い方は心得ています」 モスクを訪れ、「応援しています。頑張ってください」と声をかける人もいるという。 宮澤さんはパキスタン出身だが、日本に暮らして35年、日本人の配偶者を得て、子どもも孫も日本で生まれた。日本語も流暢に話す。「見回り活動をしているメンバーの子どもや孫は地元の小学校に通っているんですよ。それなのに『お前たちには関係ない』と言われるのは悲しい」(宮澤さん)■「度を超えている」と市の担当者 誹謗中傷は、会にだけでなく、見守り活動に同行した行徳警察署や活動団体として登録した市にまで向けられていた。警察署長の顔写真と実名を載せ非難する投稿も、「認可した」市が悪いとする投稿もあった。「度を超えていると思います」(市の担当者) 市は、自治会など自主的に防犯活動を行う5人以上の団体が届け出ると、決定通知を出し、防犯ベストなど物品の支援をする。宮澤さんのヒラー・マスジド会は4月20日に届け出て、7月下旬に通知を受け、8月中旬、防犯ベストとたすきを受け取った。 市の担当者は「規定にのっとり、物品を渡した」と説明する。 だが、市役所には、全国から電話やメールが相次いだ。10月14日夕方の時点で、意見箱のメールが297件、電話は91件あった。■「外国人差別」という意見も 10月15日、市は宮澤さんと面会し、状況を伝えた。宮澤さんが翌16日の見守り活動を予定していると話すと、市はこの状況で活動を行えば不測の事態が起きかねないという懸念から「できれば延期を」と求めた。宮澤さんは受け入れた。 抗議はその後もメールや電話は増え続け、19日時点でメールが650件弱、電話は200件あまりに。メールの記載によると差出人の居住地は市内4割と市外が6割で、市外は北海道から沖縄まで全国に及ぶという。「パトロールをやめさせろ」「外国人が担うのは心配」といった内容が中心で、職員が暴言を受け、どなられることもあった。

「私自身、暴言とわかっていても、精神的にこたえた。率直に、外国人差別だと思う意見も多数ありました」(市の担当者)


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■地元自治会長「非難する理由はない」 行徳モスクは、1997年にできた。宮澤さんによると、周辺にはイスラム教徒が350~400人暮らし、モスクに通うのは100~150人。出身はインドネシア、マレーシア、ウズベキスタンなど約18カ国にわたる。市川市の外国人住民は2万5087人(2026年3月末)。同時期の行徳管内の外国人住民は1万1932人で、同管内総人口の7.0%と、市全体の5.0%を上回る。 モスクがある地域の自治会は、どう見ているのか。 10月18日、モスク前の公園では、日本人と外国人とみられる子どもが一緒に遊び、日本語で話していた。行徳駅前3丁目自治会会長の黒須和美さん(68)はこう話す。「見回り活動で文句を言われるのですか? 『ご苦労さまです』とねぎらうことはあっても、非難する理由はないでしょう。地域住民からのクレームは、私のところにはまったくありません」(黒須さん) ネットの「炎上」も、市からの電話で知った。「行徳にモスクができて、約30年。モスクに通うイスラム文化圏の人々が公園のベンチでおしゃべりしたりする様子は、今では日常の風景になっています」(黒須さん) 過去には確かにごみ、路上駐車、騒音などをめぐってトラブルもあり、そのたびに問題解消に向け、モスク側も地道な努力を重ねてきた。騒音にならないよう、モスクの窓を閉めたり、夜間の集会を避けたりもした。礼拝後にもコンビニの前で大声で話さないようになどと呼びかけている。2年前からは、毎週末にモスク周辺のごみ拾いも行っている。■見守り活動の再開は 登下校の見守りは、大人たちが子どもを守るためにできることのひとつで、地域の大切な活動だ。 見守り活動は、いつ再開できるのか。 市は今後、宮澤さんや警察を交えて、話し合う方針だという。「一部の過度な要求に左右されることなく、公平で公正な姿勢で対応していきます」(市の担当者)

(AERA編集部・米倉昭仁)

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