「炭素貯留による温暖化の抑制効果はわずか0.7℃」と科学誌(オルタナ)

科学誌「ネイチャー」は9月3日、地球に安全に炭素を貯留できる最大容量が、これまでの業界推定値の10分の1程度に過ぎないとする研究結果を発表した。新たな研究では、炭素貯留で期待できる温暖化の抑制効果はわずか0.7℃に過ぎないという。研究者らは「炭素貯留は、気候を安全なレベルに戻すための、無制限のソリューションとはみなせない」と論じる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子) 地球温暖化対策として、大気中のCO2を回収し地下に貯留する技術(CCS:二酸化炭素回収・貯留)の開発が世界で進む。 そのような中、科学誌「ネイチャー」は9月3日、地球規模で堆積盆地に炭素を貯留できる容量の限界値は約1460ギガトン(GtCO2)とする研究内容を掲載した。 これまで、地質学的に炭素貯留の技術的なポテンシャルは、もっと膨大で広いと想定されていた。利用可能な貯留容量はこれまで約10,000~40,000ギガトンと推定した科学文献もあり、業界推定値としては約14,000ギガトンとみなされていた。 今回新たな研究内容を発表した国際応用システム分析研究所とインペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者らによると、これまでの推定値は、貯留に適さないと判断されうる主要なリスク要因を考慮していなかったという。 今回の研究では、潜在的に利用可能な貯留場所の推定値を起点に、「浅すぎる」「深すぎる」「地震リスクが高い」地域や、環境保護区域、居住地域の近郊を除外した。その結果、炭素を貯留できる適地が、これまで考えられていたよりも相当に少なくなった。 また、貯留適地の70%が陸域、30%が海底に分布するとした。

研究者らは、この貯留容量をたとえ上限まで、大気から回収した炭素の貯留だけに使用したとしても、地球温暖化の抑制効果はわずか0.7℃に過ぎないとした。過去の他の研究では、6℃の抑制効果があるとされたものもあった。大きな差だ。 また、貯留した炭素が地表に漏出した場合には、地下水中で炭酸を生成する可能性があり、酸性化した環境においては金属含有鉱物が溶解し、人体や環境に有害な重金属が放出される恐れがあることも指摘した。

研究者らは、今も継続して排出されている、回避可能な化石燃料からのCO2を相殺するために、炭素の回収・貯留を浪費すべきではないと断じた。 研究論文の共同著者の一人、インペリアル・カレッジ・ロンドンのグランサム気候変動・環境研究所のヨエリ・ロゲル研究部長は、「炭素貯蔵はもはや、気候を安全な水準に戻すための無制限なソリューションとは見なせない」と述べた。 「地質学的な貯留空間は、人類に安全な気候の未来をもたらすために責任を持って管理すべき希少資源と考える必要がある」(ロゲル研究部長)

関連記事: