英首相「対EU関係の新時代」、防衛・漁業・渡航規制などで合意

 5月19日、欧州連合(EU)と英国は、同寿逸に開催されるEU・英首脳会議に先立ち、防衛・安全保障、漁業、若者の移動に関する暫定合意に達した。ロンドンで撮影(2025年 ロイター/Carlos Jasso)

[ロンドン/ブリュッセル 19日 ロイター] - 英国は19日、防衛・安全保障、漁業、食品輸出および渡航規制の緩和に関する合意に達した。英国の欧州連合(EU)離脱後、最も重要な関係再構築となる。

トランプ米大統領が強硬に進める関税措置は、世界各国政府に貿易・防衛・安全保障の関係を再考させる結果となり、スターマー英首相と欧州指導者との距離を縮める形となった。

スターマー首相はロンドンのランカスター・ハウスで、欧州委員会のフォンデアライエン委員長とEUのコスタ欧州理事会議長(大統領)とともに、今回の合意は「われわれの関係における新時代」を刻むものだと表明。

フォンデアライエン委員長は「世界的な不安定さが拡大し、欧州大陸がここ何世代で最大の脅威に直面している今、欧州は団結する」というメッセージを送るものだと強調した。

一方、ブレグジット支持の英右派政党「リフォームUK」を率いるナイジェル・ファラージ氏は、同合意を「屈辱的な降伏であり、漁業の終えんだ」と批判。またスコットランド漁業連盟はEU加盟国の漁業者が想定よりはるかに長期間にわたり英国領海にアクセスできるようになることに懸念を示した。

これに先立ちEUのある外交官は「EU・英首脳会議のさまざまなテキストや並行的な側面について合意がある」と説明。「私の理解では、全ての加盟国は、首脳会議が始まろうとしている今、テーブルの上に置かれた内容に満足しているようだ。現在、全加盟国の正式な合意を得るための文書による手続きが進行中だが、問題はないだろう」と語った。

エコノミストは、英国にとって最大の貿易相手であるEUとの協定見直しが、最近インドや米国と締結した協定よりも国内経済へより大きな影響を及ぼす可能性があると指摘する。一方で、英国がEUの単一市場や関税同盟への再加盟を拒否しているため、経済効果は限られるとの見方もある。

今回の合意の核となるのは防衛・安全保障協定で、英国企業がEUの大型防衛契約へ参画する道が開けた。しかしBAEシステムズ(BAES.L), opens new tab、ロールスロイス(RR.L), opens new tab、バブコック(BAB.L), opens new tabといった英企業が、1500億ユーロ(1670億ドル)規模の欧州再軍備計画に参加するためには、さらなる合意が必要となる。

漁業に関しては、英国とEU双方の船舶が今後12年間、互いの海域で操業することが認められる。英国は強力な交渉材料の一つを失うことになるが、その見返りとして、多くの中小食品生産者にとって欧州への輸出の障壁となっていた煩雑な書類手続きや国境検査が恒久的に削減される。

英国からの旅行者はEU域内の空港で電子ゲートを利用し、より迅速に通過できるようになる。

代わりに英国は一定年齢の若者が相手国で就学・就労・居住できる制度の枠組みに合意し、詳細については今後詰めることになった。また学生交換プログラム「エラスムスプラス」への参加についても協議を進める。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

関連記事: