コラム:高市氏は「鉄の女」にあらず、自民党右傾化に政局混乱の予感
[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 高市早苗氏は、日本に強硬な保守主義的主張を打ち出す一歩手前まで来た。同氏は4日、自民党の総裁に選出された。約1週間後には日本初の女性首相に国会で選出されることが確実だ。彼女はしばしば自身をサッチャー元英首相になぞらえる。しかし、彼女に「鉄の女」の経済政策を期待する人は、ひどく失望するだろう。
サッチャー氏は高金利を支持する財政規律主義者だった。対照的に、高市氏は5人の党総裁候補の中で唯一、物価高への対応として、政治の師である安倍晋三元首相の超緩和的金融・財政政策への回帰を主張している。日銀の金融政策に関しては昨年、「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言した。ただ党総裁選出後は、経済政策は政府と日銀が足並みを揃え、協力し合ってやっていかなければならないと述べている。
安倍氏のレガシーの純粋な後継者という主張にも疑問が残る。安倍政権は、高齢化に伴う労働力不足に対処するため、実質的な移民受け入れ促進策を打ち出した。一方、高市氏は「全く異なる文化や背景を持つ人々を受け入れる政策」の再考を主張している。
高市氏が直面するのは、 サッチャー氏や安倍氏と異なり与党が多数派でない国会だ。自民党の右傾化は旧友や新たなライバルとの衝突を引き起こし、政局の混乱や政策の不一致を予感させる。連立相手の公明党はすでに、高市氏の移民排斥と受け取られる暴言を重要な関係を危うくするいくつかの問題のひとつだと警告している。高市氏の強権的な政治が立法府の行き詰まりを助長すれば、強力な官僚機構は既存の権限を推し進めることができ、ウェルスマネジメント業界強化の取り組みは比較的影響を受けずにすむだろう。
とはいえ、高市氏は、日本経済の軌道を根本的に変えるのに十分なほど、バラバラな派閥をまとめることに成功するかもしれない。同氏が総裁選前の方針を貫くとすれば、急激な円安や債務増加など、多くの問題を引き起こすだろう。こうした変化が残すレガシーは、彼女独自のものとなる。
●背景となるニュース
(本文3段落目の「日本国債は、日銀の利上げが先送りされるとの見方から下落(利回りは上昇)した」を「日本国債は、日銀の利上げが先送りされるとの見方から上昇(利回りは低下)した」に訂正します)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
Hudson Lockett is the Asia Columnist for Reuters Breakingviews in Hong Kong. Before joining Reuters in 2024, Hudson spent seven years at the Financial Times, most recently serving as the paper’s Asia capital markets correspondent. Prior to this he was editor of China Economic Review in Shanghai. Hudson has degrees in Journalism and Japanese from The University of Texas. He speaks Chinese.