不確実性非常に高く、政策金利「当面維持が適当」=日銀6月会合主な意見

日銀が6月16─17日に開いた金融政策決定会合では、先行きの不確実性が非常に高く、経済情勢等を見極める必要があることから、政策金利は「当面現状維持が適当だ」との意見が出ていたことが明らかになった。都内で2024年3月撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 25日 ロイター] - 日銀が16─17日に開いた金融政策決定会合では、先行きの不確実性が非常に高く、経済情勢等を見極める必要があることから、政策金利は「当面現状維持が適当だ」との意見が出ていたことが明らかになった。物価について慎重な発言もあった。日銀が25日、決定会合で出された「主な意見」を公表した。

日銀は同会合で政策金利を0.5%で据え置くことを全員一致で決めた もっと見る

主な意見には、経済・物価の見通しが実現していくとすれば「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」として、日銀の現在の基本方針に沿った意見が見られた。インフレが想定に対して上振れて推移する中で「たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面もあり得る」と利上げに前向きな意見もあった。

もっとも、政策金利の据え置きを支持する意見も複数掲載された。ある委員は、メインシナリオに沿ったとしても、成長ペースが鈍化し、基調的な物価上昇率の改善がいったんは足踏みする姿を想定していることに加え、通商政策を巡って大きな不透明性やダウンサイドリスクがあるとして「今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきだ」と主張した。

「物価がやや上振れているとは言え、米国関税政策や中東情勢に伴う景気の下方リスクを勘案し、金融政策運営は現状維持が適当」との意見も見られた。

物価動向については「通商政策を巡る不確実性は引き続き極めて大きいが、国内面では賃金情勢は堅調であり、消費者物価は若干上振れ気味で推移している」との発言が見られた一方で、慎重な意見が複数出ていた。

ある委員は消費者物価の基調的な上昇率について「成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むとみられ、下振れリスクも大きい」と述べた。また「物価は上振れているが、賃金からサービス価格への波及には頭打ち感がみられる」との意見もあった。

<国債買い入れ減額計画>

日銀は決定会合で2026年4月以降の国債買い入れについて、減額ペースの縮小を賛成多数で決めた。委員からは、日本経済の弱い回復力や先行きの不透明感の高まり、市中の国債保有余力を踏まえると「リスクマネジメントの観点から26年4月以降は減額幅を2000億円に引き下げ、同年6月に中間評価することが適当だ」との意見が出ていた。「よりスムーズな政策運営の観点」から減額幅の縮小を支持する委員もあった。この意見を述べた委員は「金融政策運営スタンスの変化を意味するわけではない」と付け加えた。

日銀の国債保有比率をできるだけ速やかに引き下げることが望ましいが「2019年に米国が量的引き締め(QT)を停止せざるを得なくなったように、急ぎすぎてもかえって調整に時間を要することになりかねない」との意見が出された。この委員は、購入額をいったん大きく減らしてそれをまた増やす形では「途中で市場の混乱を招く可能性を不必要に高めかねない」と警戒感を示した。

委員からは、減額ペースを落とすことについて「金利形成を基本的に市場に委ねつつ、急激な金利変動によって経済・物価に悪影響を及ぼすことを避けるための措置だ」として、「財政への配慮ということでは全くない」との指摘も出ていた。

一方で、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきで「可能な限り早く、日本銀行の国債保有残高の水準を正常化するべき」との意見も出ていた。

来年6月の中間評価では、月間買い入れ額や保有国債の規模の最終的な着地点が議論される見通し。決定会合では「今後、例えば月間の国債買い入れ額が1兆円程度にまで減少すれば、日本銀行の動きが市場で話題になることもなくなるのではないか」として「買い入れ額をゼロにすることに強くこだわることは不要」との意見が出された。

超長期金利を巡っては「超長期ゾーンのボラティリティ上昇がイールドカーブ全体に波及し、意図せざる引き締め効果が市場全体に及ぶ可能性もある」とし、「当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要がある」との意見もあった。

国債買い入れについて、財務省の出席者は「債券市場の安定等に十分に配慮し、必要があれば状況に応じた柔軟な対応をすることを含め、適切に行われることを期待する」と発言した。

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